【漫画】ギャルが古典を読み、読書感想文を書こうとしたら……自由な女子高生書店員が愛らしいSNS漫画

「昔は好きだったけど、今の時代に読むとやばいな」

――今回『ギャルと読書感想文』を制作しようと思った経緯は?

野中:もともと『ギャルと書店員』シリーズの漫画を年4回開催される同人イベント「コミティア」に合わせて執筆しており、本作は9月冒頭開催の『コミティア145』に向けて制作しました。

――なぜ夏が舞台で、読書感想文を軸にしようと思ったのですか?

野中:イベントの開催が9月頭で、新学期のシーズンだったため、「夏休みに関するネタにしよう」というのがありました。

――出展の時期と合わせた舞台を選んだのですね。

野中:また、作中で令華に紹介した本を紙屋が手にした時、時代錯誤感に動揺していますが、あれは私も実際に古い作品を読んだ時に感じた感想です。「昔は好きだったけど、今の時代に読むとやばいな」「もう共感できないな」というのは“本あるある”だと思います。

――確かに今読むとぶっ飛んだ内容の古い本は多いような。

野中:加えて、若い世代の間では純喫茶やシティポップなど、数世代前の流行がトレンドになっています。30~40代の世代からすれば“懐かしい”ですが、それを経験していない10~20代にとっては“新鮮”に映ります。本あるあるや若い人の感覚などの要素を描きたいと考えた結果、“読書感想文”というテーマにたどり着きました。

――ギャル(女子高生)はアンテナが高く、ファッションや言葉遣いなどトレンドがコロコロ変わります。令華の言動やファッションなどを描く際にはどのような意識を持っていますか?

野中:作中で令華は常に制服姿なのでファッションに関しては実はあまり細かいトレンドを取り入れていません。そもそも、“リアルなギャルの生態を描くこと”が目的ではなく、“書店という空間にギャップのある記号として成立すること”を最優先にしています。ですので、よく見るといかにもではあるけど今時のリアルさはありません。

――令華はいい意味で馴染んでいて、浮いている印象だったのはそういった意識があったからなのですね。

野中:ただ、記号的にしても「令華だったらどう選ぶか」ということは意識しています。今回は夏が舞台だったので、夏休みに遊び惚けていたために色黒になっています。令華のキャラクターも掘り下げられて良かった物語になったと思っています。

“正しい言葉遣い”を意識しすぎない

――令華が古い流行語を使ってしまうと、急にギャルらしさが失われてしまいます。令華のセリフ選びは細心の注意を払う必要性を感じますが、どのように決めているのですか?

野中:トレンドを作品に取り込むことは「数年後読み返した時に古く見える」などの賛否両論があります。しかし、発表した時点のリアルタイムの瞬発力、爆発力を優先したいので、入れる時は堂々と入れるようにしています。作中に「なぁぜなぁぜ」という流行語を使っていますが、まさにギャグページとしての爆発力と瞬発力のために取り入れました。

――勢いを大切にしているから令華の言葉に強さを感じるかもしれません。

野中:また、特定のキーワードというより、“正しい言葉遣い”を意識しすぎないようにしています。あくまで口語で、勢いで飛び出たようなしゃべり方にしています。例えば、接客ですと「なります」は厳禁ですが、令華には喋られています。その一方で紙屋なには使わせません。

――ちなみに、ギャルの最新トレンドなどをチェックする必要があるかと思いますが、どのように調べているのですか?

野中: XやInstagram、YouTubなど、SNSが多いです。リプ欄やコメント欄も参考になります。また、最近の若い人は繊細でエモイと言いますか、詩的なセンスを持った人が多い印象です。大人と違って物事を俯瞰で達観するよりは、主観で真っ向から受け止めて発信しているからかもしれません。大人が他人を語るのに対して、ギャルは自分を伝えている感じでしょうか。

――今回5話を掲載しましたが、今後『ギャルと書店員』シリーズは続いていくのでしょうか?

野中:今後も同じぐらいのペースで続けられたらと思っています。基本は年4回、『コミティア』の開催のタイミングです。次回は2月下旬なので、その時に新作を出す予定です。WEBにアップすることも想定していますが、会場で購入してくれた人のために専用の書き下ろしも入れるかもしれません。基本は同人誌即売会優先です。いつまで描くかはわかりませんが、「装丁していたエピソードを消化し切るまでは描けたらいいな」と思っています。

――また、野中さん自身の目標などあれば教えてください。

野中:春ごろに商業誌で新連載ができるように鋭意製作中です、また、個人の作品というけではないのですが、Webtooonで制作に携わっている作品も公開予定です。それと同時に、商業では描きにくい自由な漫画を同人誌即売会で発表しつつ、それもWEBでも公開していきたいと思っています。他にも、『ギャルと書店員』以外の短編も描きたいので、時間があればそういったものも少しずつ描いていきたいです。

関連記事