『キングダム』秦2度目の趙攻略戦、注目は昌平君との情報共有? “伝達手段”にも注目したい、激戦の行方

※本稿は漫画『キングダム』のネタバレを含みます。未読の方はご注意ください。

 中国の春秋戦国時代を舞台に、中華統一の軌跡を描いたマンガ『キングダム』。電子書籍版と合わせた累計発行部数は、集英社の青年誌初となる1億冊を突破し、さらに勢いを増している。

 そんなキングダムは、史実に基づいた大規模な合戦が魅力。直接剣を交えるシーンが注目されがちだが、中華統一を成し遂げるために智略・謀略を張り巡らせる文官たちの動きにも面白みが詰まっている。戦場に出ない文官たちは戦況について、伝令によってしか情報が得られないため、盤上を囲みながら続報を待っている様は、読み手にまで焦れる感情が伝わってくるほどだ。

 趙攻略戦では、邯鄲の喉元まで手が届いたものの、李牧の策略により桓騎軍が落ち、結果的に作戦失敗という形で幕を閉じた。この戦いの敗因のひとつとして、軍部中枢かつ総司令の昌平君との伝達に大きな時間差があり、全て現場対応となったことが考えられる。現場に優れた人材は多いが、李牧に並ぶ知将と言える昌平君が戦況をつぶさに把握できていたとしたら、状況は一変していたのではないか……と思えるような描写が見られたのだ。

 というのも、これまで秦国首都、咸陽に送られてきた伝令は主に早馬によるもので、ひとつの伝令が届くまでに、最長で10日ほどの時間が経過していた。邯鄲から咸陽までの距離は、直線距離で700kmほど。馬が1日に移動できる距離が50〜60kmであり、その間に選局は大きく変わっている。

 他方で、774話で2度目の趙攻略戦「番吾の戦い」が開戦した際に、咸陽が情報を得た手段は「鳥」だった。これまでも鳥による情報伝達がなかったわけではないが、前回描かれた時は、趙国首都の邯鄲から飛ばされていた。そのため、趙に潜んでいる諜報員が趙から情報を盗んで咸陽に流したと推察できる。

 伝書鳩は1日に最長1000kmの飛行も可能であるとされ、「馬」でなく「鳥」であれば、その日のうちに情報が共有されることも考えられる。史実はどうあれ、今回の趙攻略戦に際して、伝令の方法が鳥に切り替わって描かれるのであれば、より臨機応変に立ち回る昌平君の活躍に期待できるかもしれない。

 今描かれている番吾の戦いでは、史実に基づくと秦国に甚大な被害が出るとされており、それは作中でも明記されている。いくら王翦将軍といえど、無事には済まないのだろう。そのなかで、咸陽で戦う昌平君たちはどんな動きを見せるのか。戦場だけでなく、城内での熱い戦いにも注目したい。

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