朝井リョウ、宇垣美里、麻布競馬場が推薦 小川哲最新作『君が手にするはずだった黄金について』

 2015年『ユートロニカのこちら側』でハヤカワSFコンテスト大賞を受賞し、作家デビュー。以来刊行した単行本全てが文学賞を受賞している小川哲の最新作『君が手にするはずだった黄金について』が10月18日に新潮社より刊行される。

 収録作はすべて「僕=小川哲」が主人公。「プロローグ」では、大学院生の僕が、出版社を受けようと就活を始める。恋人の美梨と会話を重ねていくにつれ、「自分は一体なにをやりたいのだろう」「そもそもなぜ自分は本が好きなんだろう」と自問するようになり、やがて僕は自分自身を主人公にした小説を書きはじめる――。

 なぜこのような主人公を設定したのか、小川は次のように語る。

僕は小説を書くとき、どんな主人公やテーマであっても、常に「小説を書くということはどういうことなのか」を考えながら書いています。今作は「小説家を主人公に据えて、小説とは何か」を書くことにしたので、ならばいっそ、自分に似たような小説家ではなくて、小川哲を主人公に据えればいいと思ったのです。

 「僕」はやがて兼業小説家になり、仕事をする傍ら、さまざまな人に出会う。オーラが見えるという青山の占い師、これ見よがしに(本物かどうか怪しい)ロレックスのデイトナを巻く漫画家、80億円を運用し、羽振りの良い生活をインスタにアップする高校の同窓生……。彼らはみな、自分が何かの能力に秀でていることを証明するために、明らかに無理をしていく。

「人に認められたい」、「何者かになりたい」、という欲求は、誰しも自然に持ち合わせているものだと思います。でもその手段として、SNSやネットで誇示することが容易になったぶん、「何者かになった」ように見せることが簡単になり、本当の意味で「何者かになる」ことは難しくなったのかもしれません。小説家にとっては面白い時代だと思います。でも僕自身は、「承認欲求」というものが、じつはよくわからない。わからないからこそ興味を惹かれ、小説で描くことで、他人が持っている感覚を知りたいと思うのです。

 そんな本作の収録作「プロローグ」を全文掲載した無料お試し特別版の配信を各電子書籍書店にて開始。新潮社HP特設サイトにも全文が無料公開中だ。

・【電子書籍】「プロローグ」収録・無料お試し特別版
URL:https://ebook.shinchosha.co.jp/book/E057911/
Kindle版URL:https://www.amazon.co.jp/dp/B0CGT5K53B/

・【新潮社HP】「プロローグ」無料公開・試し読み
https://www.shinchosha.co.jp/special/ogon/

■推薦コメント
「自分から最も遠い存在、禁忌のように感じていた相手とのわずかな交点。そこを始まりとして拡がる宇宙。大好物の小説です。」――朝井リョウ

「読めば読むほど足場がぐらつく。ところでわたしは何者ですか?」――宇垣美里

「クセの強すぎる、しかしどうしようもなく愛らしい人たちが会話と思考で激しく殴り合う。 脳と感情が揺らされっぱなしで知的興奮が一秒も止まらない。」――麻布競馬場

■著者紹介
1986年、千葉県生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程退学。2015年、「ユートロニカのこちら側」で第3回ハヤカワSFコンテスト大賞を受賞しデビュー。『ゲームの王国』で第31回山本周五郎賞、第38回日本SF大賞を受賞。2023年、『地図と拳』で第168回直木三十五賞を受賞。『君のクイズ』で第76回日本推理作家協会賞長編および連作短編集部門を受賞。

■書籍概要
タイトル 君が手にするはずだった黄金について
著者名 小川哲
判型 四六判ソフトカバー(256頁)
定価 1,760円(税込)
発売日 2023年10月18日 
ISBN 978-4-10-355311-3
特設サイト https://www.shinchosha.co.jp/special/ogon/

関連記事