90年代の広末涼子はすさまじかった  写真集の発行部数から見る社会現象としての”ヒロスエ”

 広末涼子の不倫騒動が連日芸能ニュースを騒がせており、収束する気配が見えない。相手への恋の手紙まで晒されてしまったのはさすがに気の毒であり、ネット上では同情の声が上がっている。一方で衝撃を受けた人も多いようで、改めて広末の人気と影響力の大きさを実感させられる出来事だった。

 しかし、Z世代の後輩に話をしたところ「広末ってそんなに凄いんですか?」と言われてしまった。記者は現在40歳近いのだが、世代によって広末に抱く印象は大きく異なる。おそらく記者と同世代の男子は、小学生~中学生頃に広末にハマりまくった人が多いのではないだろうか。

 当時を記憶している人はわかると思うが、90年代の広末ブームはとにかく凄かったのだ。広 末が有名になったCMのひとつに、1996年に出演したNTTドコモのポケベルのCMがあった。ポケベルはもはや平成レトロの象徴的存在になってしまい、Z世代以下だと「なにそれ?」という人も多いかもしれないが、当時の女子高生の憧れのアイテムだったのだ。広末は既にCMに多数出演していたが、ポケベルの流行もあって、一気にメジャーな存在になったといわれる。

 そして、この年に広末は2冊の写真集を出しているのだが、その売り上げが凄まじい。初写真集となった『H』『R』は2冊同時発売されたが、合計で約46万8000部を売る大ベストセラーとなった。なお、参考までに、近年話題になった乃木坂46の写真集で白石麻衣の『パスポート』は約50万部、2019年にとてつもない売れ行きをみせた生田絵梨花の『インターミッション』は約33万部である。

 近年では写真集は3~5万部売れればヒット、10万部売れれば大ヒットといわれるほどだから、広末の写真集の人気の大きさがよくわかるだろう。発売当時、広末は高知県から上京したばかりの高校生であり、その初々しさに多くの男性がくぎ付けになった。記者の先輩に話を聞くと、中学校に写真集を持ち込み、教師から没収された人もいるそうで、クラスに必ず何人かは広末のファンがいるような状態だった。

 広末の人気は、1997年に『MajiでKoiする5秒前』で歌手デビューしたことで頂点に達する。このCDは約60万枚のヒットを記録した。当時はミリオンセラーが出まくっていた時代なので、過小評価された印象は否めないが、とにかく60万部という数字はとてつもない数字である。

 この勢いは止まらず、1998年に出たセカンド写真集『No Make』もまた、約26万部を売るベストセラーになった。そして、この年は広末が早稲田大学に自己推薦で入学した年であり、受験風景、そして翌年は大学生の姿を写真に収めるために新聞、雑誌、テレビがキャンパスに殺到した。週刊誌では広末の話題で持ちきりになった。1人の大学受験がこれほど騒がれた事例は前代未聞であり、その後はこのレベルの騒ぎは起こっていないものと思われる。

 そして、1999年には高倉健主演で映画化された『鉄道員』にも広末は出演し、こちらも見事な演技で大ヒットとなった。『鉄道員』は浅田次郎のベストセラー小説が原作だが、映画も原作に忠実な作りで評価が高く、日本アカデミー賞をほぼ総なめした。この映画で、広末は女優としても確固たる地位を築いたと言っていいだろう。

 90年代は歴史的なアーティストや記録的なヒットが連発していたため、写真集や、音楽などで、広末の業績があまりクローズアップされることは少ない。しかし、間違いなく広末は当時の若者のアイドルであり、憧れの女性の一人だったのである。

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