『HUNTER×HUNTER』再登場に期待したい「ズシ」 正統派に見えて異質すぎる“兄弟子”の魅力
「週刊少年ジャンプ」での週刊連載を終え、現在は新しい掲載ペースを模索しながら制作が続けられている人気漫画『HUNTER×HUNTER』(冨樫義博)。緻密に張り巡らされた伏線も楽しい作品だけに、再登場を期待したくなるキャラクターが多い。そのうちのひとりが、主要キャラクターであるゴンやキルアの“兄弟子”といえる「ズシ」だ。
ゴンとキルアに「念」の存在を教えた心源流拳法師範代・ウイング師匠の愛弟子として、天空闘技場編で印象的な姿を見せたズシ。作中でも圧倒的なポテンシャルを持つゴンと、暗殺者一家のエリートであるキルアに圧倒されるばかりだったが、自身も高い素質を持っており、同年代の彼らよりひと足先に念能力の修行を始めていた。ゴンやキルアは「1000万人のひとり」の飛び抜けた才能だが、ズシも「10万人にひとり」の才能だとされ、本編ではその後が詳細にはフォローされていないものの、2013年公開の『劇場版HUNTER×HUNTER-The LAST MISSION-』では天空闘技場のフロアマスターになるほどの成長を遂げている。
道着姿と「押忍!」という気持ちのいい返事に象徴されるように、体育会系で愚直に努力を続けるタイプのズシ。正統派の主人公タイプと言えるが、善悪に頓着がなく、底知れない恐ろしさも感じるゴンが主人公の『HUNTER×HUNTER』においては、極めて異質なキャラクターだ。本作では個人の精神性や自身に課す制約が能力の強さに直結することを考えると、師匠に「死ぬまでやれ」と言われれば本当にやり切ってしまいそうな愚直さと、作品が違えば主人公にしても成立し得る極端なパーソナリティはそのまま「素質」と言えそうで、ゴンやキルアと比較すれば晩成でも、作中屈指の強キャラになるポテンシャルがありそうな気がしてくる。
そもそもゴンやキルアは「努力型」とは言い難く、自発的な修行と言えるものも当然行なっているが、それ以上に環境とポテンシャルがその能力に大きな影響を与えている。ズシはあくまで修行/努力によって能力を獲得するタイプに見え、例えば、少年漫画史に残る修行エピソードである、ハンター協会前会長・ネテロの「感謝の正拳突き」のような狂気的な取り組みにより、才能を凌駕する可能性を秘めているように思える。だからこそ、早期の再登場というより、ある程度の時間経過があるのが好ましく、満を持しての活躍が期待されるところだ。
そもそも主人公のゴンすら長年活躍の機会がないなかで、再登場が望まれるキャラクターたちが次に描かれるのがいつになるのか、想像がつかない。ただ、作中に限らず現実にも長い時間が経過するなかで、再登場のカタルシスはより大きくなるだろう。連載が止まっているいま、過去のエピソードにお気に入りのキャラクターを見つけておくのもいいかもしれない。