【出版再編】『昭和40年男』などを発行する「クレタパブリッシング」が「ヘリテージ」に事業譲受 原点回帰への戦略か?
ヘリテージが事業譲渡を受ける
2023年1月13日、趣味の雑誌『Lightning』『2nd』『趣味の文具箱』『PREPPY』などを手掛ける出版社のヘリテージは、クレタ及びクレタパブリッシングから『昭和40年男』『昭和50年男』『タンデムスタイル』『Lady's Bike』などの定期雑誌を含む、出版事業、広告代理事業、イベント事業、クリエイティブ事業を譲り受ける契約を締結したと発表した。
ヘリテージは今回の締結に当たり、「今後の新時代は、永く愛されるモノ、それを生み出すヒトとその技術などの文化に対する敬意と経済としての需要、それらを通して人間としてのQOLを求める動きはこれまで以上に大きくなっていく」と、事業譲渡を受けた意義を述べている。
バイク雑誌の獲得はヘリテージの原点回帰か
今回譲渡を受ける雑誌の中でも、特にバイクに関するメディア『タンデムスタイル』『Lady's Bike』は、かつてヘリテージが事業を譲り受けた枻出版社が得意としてきた分野である。
枻出版社の創業のきっかけとなったバイク雑誌『RIDERS CLUB』は、現在、実業之日本社が発行元となっている。ヘリテージは枻出版社から引き継いだ雑誌を数多く刊行しているが、今回は念願ともいえるバイク雑誌を手にすることになる。いわば枻出版社の時代への原点回帰と見ることもでき、今後どのような編集方針で雑誌が刊行されていくのは、注目に値する。
さて、枻出版社はコロナ禍のまっただ中である2021年2月、民事再生法の適用を申請した。同社は趣味をテーマにした雑誌を数多く刊行し、一部に熱狂的なファンを抱えていたこともあり、その雑誌の多くは数社に事業譲渡される結果になった。固定ファンを抱えていたにも関わらず経営状況が急速に悪化した要因のひとつが、事業の多角化であった。
枻出版社は、一時はレストランやパン屋などの飲食店事業のほか、自動車事業、ゴルフ事業、建築設計事業まで抱えていたこともある。多岐にわたる事業に進出しすぎたことが、経営を圧迫する要因となったとも言われている。また、一時は雑誌やムックの出版点数を増やしすぎたこともあり、編集者の業務量の肥大化を招いていた点も問題視された。評価される雑誌が多かっただけに、民事再生法適用の申請直後は、Twitterで突然の倒産を嘆く声が寄せられていた。
ヘリテージの今後に期待
ヘリテージは今回の譲受により、枻出版社の事業を受け継いだ出版社の中でも、とりわけ多くの雑誌を抱えることになる。繰り返すようだが、枻出版社のDNAを受け継ぐ雑誌は依然としてファンが多く、他ではなかなか読めない情報も少なくないのである。
ヘリテージは、「これからも『偏愛』をテーマにした国内外のカルチャー・ライフスタイルのメディアIPを活用し、雑誌・デジタルはもちろん、コマース体験、リアルとオンラインでのイベント、会員コミュニティなど、個人も組織も年齢も性別も問わず、みなさまとともにこれまで以上にその魅力と熱量を共有しあい愉しみながら、事業として大きく成長させてまいります」と述べている。今後も丁寧な編集で、魅力的な雑誌を刊行していってほしいと切に願っている。