YouTuberヒカル、成功の理由は漫画にあり? 『キングダム』桓騎の名台詞を冠した著作から考える
ネットニュースで見ない日はないと言っても過言ではない、人気YouTuberヒカルが9月30日、初の著書となる『心配すんな。全部上手くいく。』(徳間書店)を刊行する。予約好調を受け5万部の発売前重版が決定しており、その内容にも注目が集まっている。
本書はヒカルの“勝ちの哲学”を網羅した一冊だが、本稿で注目したいのは、目次に「マンガを読め」との見出しがあることだ。ファンには知られたことだが、私生活ではブランド服にも、高級レストランやお酒にも興味を示さないヒカルが、時間とお金を投じているのが漫画であり、動画内のトークでも随所に話題が出てくる。地元姫路の“古本屋のおっちゃん”は動画にたびたび登場する名物キャラクターで、以前は「棚一列の漫画を全て買ったらいくら必要か」という“金持ちYouTuber”らしい企画も。そもそも、本書のタイトル『心配すんな。全部上手くいく。』からして、愛読している『キングダム』の桓騎将軍が発したセリフから来たものだ。
過去の名作から新作まで、多くの漫画を読んできたヒカルは、自身の「成功」にその体験をどう位置づけているのか。詳しくは書籍を読んでいただくとして、これまで動画で語ってきたことも含めて簡単にまとめれば、漫画は、何事にも重要な「経験」を、バリエーション豊かな物語や登場人物を通じて追体験できる最強のツールだ、というのがヒカルの考えだと思われる。小説では読むのに時間がかかりすぎ、映画は見返したいシーンにたどり着くのが面倒だ、とヒカルは言う。
本書には、大炎上でチャンネル登録者数が激減した、いわゆる「VALU騒動」に際して、『ベルセルク』の主要キャラクター・グリフィスの“復活劇”を思い起こし、それを乗り越えたとするエピソードが書かれている。主人公がピンチを迎えない漫画は極めて少なく、さまざまな場面で「あのキャラクターならこう考える」「このキャラクターならこう動く」と、自分にとって理想的な選択肢が浮かぶというのは、多くの作品に触れていればこそのメリットかもしれない。
ちなみに、ヒカルのキャラクターの好みはハッキリしている。先述の『キングダム』なら桓騎、『ONE PIECE』ならドンキホーテ・ドフラミンゴ。いずれもダークヒーロー的な要素が強く、奔放に見えながら、実は“勝ち”へのロジックを持つ知性派だということが共通していると言えるだろう。ときに露悪的で、物議を醸しながらも影響力を高めていく、というヒカルのブランディングは、こうしたキャラクターたちの影響もあるのかもしれない。
■書誌情報
『心配すんな。全部上手くいく。』
著者名:ヒカル
出版社名:徳間書店