【漫画】机の落書きに見知らぬ誰かから返事が……青春の一コマ描いた漫画『だれかの卒業』が話題に
ーー大人になると味わうことのむずかしい、高校特有の空気を感じた作品でした。創作のきっかけを教えてください。
みりこ:「卒業」がテーマの漫画コンテストに応募するため、本作を描きました。本作は実体験がもととなっており、高校生のころ机に絵を描いたら返事が返ってきた出来事を思い出しながらつくりました。
創作にあたり自分が卒業した当時を振り返ってみると、特別な感情を抱くことがなかったんです。当時はすでに携帯電話が普及していたため卒業後でも連絡が取りやすく、会いたい人には会えることが影響しているのだと思います。
ただ、本作で描いた“会いたくても会えない”人のことは記憶に残っていたのです。コンテストの応募を機に、高校2年生の記憶を漫画としてかたちにしました。
ーーどのくらいの期間、やり取りをしていたのですか。
みりこ:高校2年生の私が12月に三択ロースの絵を机に描いてから、およそ1か月の出来事でした。その後に3年生は自由登校期間となってしまうので……。本当に短い期間の出来事だったと思います。
ーーやり取りをしていた当時の心境を教えてください。
みりこ:まさか自分の描いた絵に返事がくるとは思っていなかったので、すごくびっくりしました。お相手の絵が上手で、どんな人なのかなと思いつつ、やり取りを楽しみに授業を受けていましたね。
最後の絵が描かれたときには、まさか先輩とは思っていませんでした。もっと長く続くかと思っていたやり取りが終わってしまうのだなと思い、少し寂しかったです。
ーーみりこさんが机に向かう後ろ姿が描かれたページから、やり取りに夢中になる様子を感じました。本作を描くなかで意識した点を教えてください。
みりこ:窓の外から教室が見える最初のコマで描いたのですが、パリッとした寒空の下、古い暖房の匂いのする教室、そんな冬の学校特有のノスタルジックさを表現できればと思っていました。
また読者のみなさんがそれぞれ高校での記憶を思い出すことができればと思い、ラストシーンでは自分の心情をあえてカットして描きました。
ー-みりこさんが創作活動を始められたきっかけを教えてください。
みりこ:小さいころからアニメや漫画が好きで、イラストを描くことも好きでした。2019年に好きだった少女漫画の先生が活動を再開し、その先生が描いた漫画を読み返すなかで自分も漫画家になりたかったことを思い出したのです。
2020年にSNSのアカウントをつくり、最初は日常を題材とした4コマ漫画を投稿していました。様々なWebサイトで開催されるコンテストに作品への応募しようと思い、コミックエッセイや創作漫画を描き始めました。今は漫画とは異なる仕事をしながら、創作活動をしています。
ーーお仕事と創作活動の両立は大変なことかと思います。
みりこ:漫画を描くことができるデジタルツールの存在は、本業のある私が漫画を描くことができたきっかけのひとつだと思います。描いたものをワンクリックで削除したり、移動させたりすることができるので、いい意味で創作時間の短縮につながっています。
小さかったころには原稿用紙やつけペンなどの画材をそろえようとしたこともありました。当時はお金がなくスクリーントーンを1枚買うことがやっとでしたね。今は多くの人にとって創作活動を始めやすい時代になったと感じています。
ーー創作活動を続ける秘訣を教えてください。
みりこ:本業があるなか、漫画は描けるときに描いています。創作をできるとき、できないときの波はありますが、波に身を任せ頑張っています。
またSNSを通じて知り合った創作をする友達や家族の支えがあり、これまで漫画を描き続けられたのだと思います。
ーー今後の目標を教えてください。
みりこ:大きな夢ではありますが、自分の作品を紙の本として出版してみたいです。以前、自費出版で本をつくった際に友人やSNSのフォロワーさん、さらにそのパートナーやご家族の方が読んでくださるという連鎖がありました。紙の本になることで多くの人が自分の作品を手にとるきっかけになったことがうれしくて……。
これからも手元に置いておきたくなるような、誰かの心に残る作品を描いていきたいなと思います。