関ジャニ∞ 安田章大が届けた命のメッセージとは? 写真集『LIFE IS』で表現したリアルを振り返る

2人のタッグが生んだ類を見ない「タレント写真集」

 こうした一連のアプローチは、写真家として岡田が根本に貫いているスタイルとも言えそうだ。岡田は2016年、北海道文化放送の番組『乃木坂46 橋本奈々未の恋する文学』にて、当時メンバーだった橋本と対談し、彼女を撮影した。同番組は、北海道が舞台になっている小説のゆかりの地で、北海道出身の橋本が朗読をするという内容だった。その中で、ベストセラー作家・村上春樹の『羊をめぐる冒険』が取り上げられた際、同じく北海道出身でそのゆかりの地「美深」を撮影していた岡田に声がかかった。

 岡田は番組内で「ふだん女優・アイドルとしてキレイに撮られたり可愛く撮られることが多いと思うし、それを求められていると思う。だがせっかく美深まで来て撮るならば、ちょっと違う写真を撮りたいと思っていた」と語っている。撮影された写真からは、どれも「アイドル・橋本奈々未」ではなく、1人の女性の「素顔」を感じられた。こうした岡田の作家性、また「生」や「美」への強い意識が、『LIFE IS』においても「アイドル・安田章大」という「偶像」から等身大の青年の「素顔」を引き出したのだ。

 なお『LIFE IS』には、安田の姿がない、あるいは小さく風景に同化しているページが約3割にのぼる。岡田ならではの圧倒的な風景や、それを主体とした中に「素」の安田がさまざまな表情とサイズ感で佇んでいる構成も、いわゆる「タレント写真集」との大きな差異ではないだろうか。

 『LIFE IS』のように、人気アイドルである被写体と写真家がタッグを組んでその共通意図により「タレント写真集」の枠を超えて芸術的で強いメッセージ性を付加した写真集は、類を見ない。出版時、岡田自身が「間違いなく安田さんとでなければ作ることのできなかった写真集」と話していることからもそれが伺える。

 新型コロナに関連し、北海道知事は2020年2月末に独自の緊急事態宣言を出した(全国規模は4月)。もし1カ月、企画の進行が後ろ倒しになっていたならば、『LIFE IS』のロケは中止となり、この世に存在しなかったかも知れない。奇しくも新型コロナ禍で語られることになった安田の「命」や「生」のメッセージは、このような特殊な環境だからこそ、一層、普遍性あるものとして結実したと言えるだろう。

■岡田敦
北海道生まれ。大阪芸術大学芸術学部写真学科卒業、東京工芸大学大学院芸術学研究科博士後期課程にて博士取得(芸術学)。”写真界の芥川賞”といわれる木村伊兵衛写真賞の他、北海道文化奨励賞、東川賞特別作家賞、富士フォトサロン新人賞などを受賞。
オフィシャルウェブサイト https://okadaatsushi.com/

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