ライターが選ぶ「2021年コミックBEST10」立花もも編 このマンガを読んでこなかった自分が恥ずかしい!

『空挺ドラゴンズ』桑原太矩

 6位は『空挺ドラゴンズ』。私がノベライズを執筆していることもあり、身内贔屓になるだろうかと悩んだが、おもしろいものはおもしろい。上空を泳ぐ龍を捕って、食べて、生きる龍捕りと呼ばれる人々を描いた群像劇。だんだんとキャラクターの過去にも踏み込みはじめるなか、待望のヴァナベル編は胸アツでしかなかった。

 7位『世にも奇妙なスーパーマーケット』は、心にモヤモヤを抱えた人だけが訪れることのできる店が舞台。一粒食べただけでひらめきが舞い降りるお菓子や、囁くだけで恋愛感情が結晶化して手放すことができる瓶など、モヤモヤを解消する不思議なアイテムを店長がセレクトしてくれる。一話完結型で大きな躍動はないが、じわじわと染み入り、癖になる。

 8位は、血の繋がらない娘を育てる父親の苦悩を描きだす『たーたん』。恋愛経験ゼロなのに、殺人犯となったかつての同級生から赤ん坊を預かった主人公。母親のことを知りたがる年頃の娘を前に、いつ真実を話すか葛藤し続けているのだが、実の父親が出所して二人の周辺をうろつきはじめ、波乱に次ぐ波乱の展開に、一緒にはらはらさせられる。互いを誰より想い合う、ゆえにすれ違う、たーたん(お父さん)と娘の幸せを願わずにいられない。

 9位『北北西に曇と往け』の主人公は、アイスランドで探偵業を営む17歳の少年・慧。愛車と会話することが出来たり、ふしぎな力をもつ彼は、持ち込まれた厄介事を解決しつつ、行方不明の弟を探している。弟は果たして、本当に殺人犯なのか? 謎の行方も気になりつつ、アイスランドの壮大な情景描写に見惚れ、旅をしているような気分も味わえる。

 10位『ジーンブライド』。『私の少年』の高野ひと深が、現代社会における女性の生きづらさを描きだすフェミニズムマンガ……と思いきや、1巻のラストで怒涛のSF展開を見せつける、今もっとも先が読めない作品のひとつ。共感と圧倒。その二つを軸に物語はどんな飛躍を見せるのか。感想を言うにはあまりに情報が少なすぎるので、めちゃくちゃおもしろいけど、10位に。

 ちなみに番外編として推したいのが『魔法使いの娘』。2019年に完結した作品だが、LINEマンガでの連載をきっかけに知り、全巻一気買いしてしまった。陰陽師の父をもつ初音という少女が、怪異にまつわる事件を通じて、己の出生の秘密を知っていく本作。オカルティックなエピソードも抜群におもしろいのだが、個人的に、最強のラブコメを読んでしまったと見悶えている。こちらもあわせて、読んでみてほしい。

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