絶滅した鳥“ドードー”をめぐる大活劇が面白い 著者の熱量に圧倒される『ドードーをめぐる堂々めぐり』

 ドードーという鳥がいる。ルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』に登場し、挿絵にも描かれていることから、世界的に有名な鳥だ。藤子不二雄の漫画『ドラえもん』にも登場したことがあるので、そちらで知ったという人もいることだろう。

 ただし、そうした作品で興味を覚えても、実物を見ることはできない。なぜなら数百年前に絶滅したからだ(国際自然保護連盟のレッドリストでは、絶滅年を1662年としている)。私たちは、残された絵や文章、あるいはドードーの標本などを通じて、ありし日の姿を想像するしかないのである。

 ちなみにドードーは、ハト目だが、飛ぶことはできない。ずんぐりした体と、くちばしが特徴。昔は25キロ程度の体重といわれていたが、その後の研究により、現在では10キロ程度とされている。生息地は、マダガスカル沖のモーリシャス島。1598年に発見されるが、人間の乱獲と、持ち込まれたモーリシャス島にいなかった動物が、ドードーの雛や卵を捕食したことにより絶滅した。人間により絶滅した動物は少なからずいるが、その代表といっていい。

 だが、失われた存在だからだろうか。過去から現在を通じて、ドードーに魅了された人は多い。『ドードーをめぐる堂々めぐり』(岩波書店)の著者である川端裕人も、そのひとりだ。

 17世紀の日本に、ドードーが来ていたことを知った著者は、その行方を探求するうちに、どんどんドードーの深みにはまり、四国や九州を経て、チェコ、イギリス、オランダなどを巡り、ついにはドードーが生息していたモーリシャス島での発掘調査にまで参加するのである。その過程で見えてくる、日本と西洋の歴史。ドードーを調査した研究者たちの肖像。博物学と生物学を往還しながら、明らかになっていくドードーの実像と、読みどころが満載だ。いやはや実に刺激的で、面白い1冊なのである。

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