直島翔『転がる検事に苔むさず』第3回警察小説大賞に 相場英雄や長岡弘樹らの選評も
小学館が主催する第3回警察小説大賞に、 直島翔の『転がる検事に苔むさず』が決定したことが、4月20日に明かされた。
第3回警察小説大賞では、数多の応募作の中から二度の選考を経て4点の最終候補作を選出。 最終選考会で相場英雄、 長岡弘樹、「STORY BOX」編集長・幾野克哉によって受賞作が選ばれた。
■受賞の言葉
稚気の抜けなかった二十代、三十代の頃、警察や検察、ときには弁護士の方にずいぶんご迷惑をかけました。事件の話をしながら人生を説かれたこともあります。といっても捕まったわけではありません。新聞社に勤めてはや四半世紀が過ぎ、フィクションであっても書いていると、過ぎし日々からお世話になった人たちの顔がトンボのように飛んできて、文字を連ねていくのを助けてくれたように思います。警察と検察の間のことを書こうというのが当初のもくろみでした。
警官や検事が組んずほぐれつ、どんな顔で、どんな思いで二つの捜査機関の間を行き来しているか──という意識のもとに始めながら、検察にずいぶん傾いてしまった拙著です。警察小説大賞という看板を仰ぎ見つつ、「およびでない!」という昭和のギャグを何度も思い浮かべました。審査委員の方々の寛容に感謝申しあげる次第です。
■プロフィール
直島 翔(なおしま・しょう)
1964年生まれ。新聞社勤務。社会部時代、東京地検など司法を担当した。
■選評(※抜粋)
・相場英雄
最終候補作中、もっともキャラクター造形が巧みな作品だった。主人公や準キャラたちへの負荷のかけ方、影の造り込みがうまく、一番感情移入できる作品となった。一方、ストーリーの回し方がスピード感に欠ける場面も。キャラクターの造り込みがうまかった分だけ、物語の展開のピッチを上げる工夫が必要。単行本化に際して、さらなるレベルアップを目指してほしい。
・長岡弘樹
検察官の視点から警察を描くというのは、手法として意表をついており、なかなか刺激的な試みだ。とはいえ、途中でいったん若手巡査が退場する形になるため〝警察〟というよりは〝検察〟小説の方へ傾き、本賞の趣旨からやや外れた作品になってしまったように思われる。筆致は丁寧で、どのシーンもじっくりと作り上げられていた。
・幾野克哉(「STORY BOX」編集長)
取材経験と知識に裏打ちされた検察、警察に関連するディテールだけでも、ぐいぐい読ませる上手さがある。主人公の窓際検事・久我はもちろんのこと、同僚の倉沢、警察官の有村、ヤメ検弁護士の常磐、ヒール役の検事・小橋まで、キャラクターの立ち方も申し分ない。登場人物に躍動感があるから、物語に臨場感がある。検察・警察小説としての完成度としては充分に及第点で、中嶋博行氏の江戸川乱歩賞受賞作『検察捜査』を初読した際の興奮を呼び覚ましてくれた。
■最終候補作
『警察孤児』天野行隆
『ドリフト』竹中篤通
『転がる検事に苔むさず』直島 翔
『黄金の土地』水原 徹