不条理文学の至宝『ペスト』が漫画化 作品に込められた普遍性
カミュの代表作『ペスト』が漫画家・車戸亮太によりコミカライズされ、新潮社より10月9日に発売された。
『ペスト』は、『異邦人』に次ぐカミュの2作目の小説で、194X年アルジェリアのオラン市(当時フランス領)を舞台に、突如として蔓延した「ペスト」という災厄を前に、人々がどのように行動するのかを描いた、不条理文学の至宝ともいえる傑作。
目に見えない「ペスト」という敵に、絶望するもの、享楽にふけるもの、戦うものなどさまざまな人間性が垣間見えるのと、医療崩壊、パンデミック、ロックダウンなど、今まさに世界が直面している問題をなぞったかのような展開が話題を呼んでいる。
コミカライズにおいては、難解といわれる原作の面白さとテーマを最大限伝えられるよう、重厚な世界観を生かしながらも、より分かりやすく、より身近にをテーマに描いており、原作未読・既読にかかわらず、楽しめる作品となっている。
■車戸亮太コメント
お陰様で1巻を出すことが出来ました。ペストを描いていると、まるで今の世界の有様を描いているような錯覚に陥ります。これは、単に原作が疫病ものであるからではなく、作品に込められた普遍性がそうさせるのだと思います。
不条理な災難に見舞われた人間の反応というものは、時代や地域が違っても、変わらないものなのでしょう。それを表現し、書き上げたカミュに対し、畏敬の念が深まるばかりです。
この先も、その普遍性を損なうことなく、最後まで描ききれるように精一杯努力する所存ですので、是非ペスト第1巻、お手に取って頂ければ幸いです。
■原作:カミュ プロフィール
アルジェリア生れ。フランス人入植者の父が幼時に戦死、不自由な子供時代を送る。高等中学(リセ)の師の影響で文学に目覚める。アルジェ大学卒業後、新聞記者となり、第2次大戦時は反戦記事を書き活躍。またアマチュア劇団の活動に情熱を注ぐ。1942年『異邦人』が絶賛され、『ペスト』『カリギュラ』等で地位を固めるが、1951年『反抗的人間』を巡りサルトルと論争し、次第に孤立。以後、持病の肺病と闘いつつ、『転落』等を発表。1957年ノーベル文学賞受賞。1960年1月パリ近郊において交通事故で死亡。
■漫画:車戸亮太 プロフィール
滋賀県出身在住。「月刊モーニング・ツー」にて『フロイデ』(全1巻)で初連載。2019年3月Bバンチにて『嫁はBL漫画家』(全2巻)を連載開始。本作『ペスト』が3作目となる。
■翻訳:宮崎嶺雄 プロフィール
東京生れ。東京帝大心理学科中退。岸田国士に師事、バルザック、サンド、メリメ、カミュ等、多くの仏文学を翻訳紹介。1941年、フランス文学賞受賞。戦後創元社編集長を務めた
■書籍情報
『ペスト』第1巻
出版社:新潮社
発売日:10月9日
定価:620円(税別)
『ペスト』作品ページ:https://www.comicbunch.com/manga/bbunch/peste/
<あらすじ>
194X年4月、アルジェリア北西部の港町オラン。短い春を謳歌していた町は、前触れなく閉ざされた。恐ろしい流行病によって――。鼠の氾濫、謎のリンパ疾患、錯綜する情報、そして……。