M!LK、記録とともに進化続けるラブソングのあり方 相思相愛、全力愛……「ザッツ!超常」がたどり着いた“愛”の形

 M!LKは、ずっと“愛”を歌ってきたグループだ。2014年の結成から12年、彼らの楽曲には数えきれないほどの「好き」が詰め込まれてきた。けれど、その愛のかたちは、決してひとつではない。誰かと想いを通わせたいと願う愛。ただひたすら、自分の「好き」を叫ぶ愛。そして今、彼らが新曲「ザッツ!超常」で歌うのは、そのどちらとも少し違う、新しい愛の形だ。

 まず、M!LKのラブソングの土台にあるのは、好きな人と心を通わせることを目指す、いわば“相思相愛”を目指す愛だ。

 その原点とも言えるのが、2015年リリースのCDデビュー曲「コーヒーが飲めません」だろう。歌詞の主人公は、デート中、相手に少しでも大人っぽい姿を見せたくて、苦手なコーヒーに挑戦する少年。背伸びと本音のあいだで揺れるコミカルかつ愛おしい姿には、「好きな人に好かれたい」「振り向いてほしい」という、恋のいちばん最初の衝動が詰まっている。

M!LK「コーヒーが飲めません」MV Full size

 2016年リリースの「「好きだ!」って言えない」では、片想いの相手に気持ちを伝えられない主人公の姿が描かれる。この描き方は、2022年にリリースされた「テレパシー」にも通じるものだ。「テレパシー」では、心のなかで好きな相手に語りかけ続ける様子がいじらしい。同じ授業やカフェで、相手を意識し続けてきた日々、偶然の再会をきっかけに想いを伝えようと駆け出していく……届かない“心の声”がようやく“本当の声”になろうとする瞬間の切実さに、胸がぎゅっと締めつけられる。

「好きだ!」って言えない
テレパシー (from M!LK CONCERT TOUR 2023「CHECKMATE」)

 2024年リリースの「Kiss Plan」で、その恋の描き方はもう一歩先へ進んだ。出会った瞬間に特別な相手だと感じ、仕草や返事の一つひとつに“脈あり”を探しながら、ふたりだけの秘密を持ちたいと距離を縮めていく。大人の色気をまとったM!LKの新たな一面を印象づけた楽曲である。さらに「チラチLOVE」(2025年)では、ポップチューンに乗せて、相手の好意を見抜いてからかいながら、ついに想いが通じ合った関係性を歌い、「Love Drive」(2025年)では、恋人と過ごす時間のときめきのなかにふとした不安が滲ませながら、一途な愛情を歌にした。

M!LK – Kiss Plan (Official Music Video)
チラチLOVE (from M!LK ARENA TOUR 2025-2026 "SMILE POP!")

 これらの楽曲に共通しているのは、愛のゴールが“両想い”にあるということだった。自分の気持ちと相手の気持ちが重なり合うこと。それを願い、焦がれ、時に不安になりながら、一歩ずつ近づいていく。その甘酸っぱさこそが、M!LKのラブソングの原風景だった。

 そんなM!LKの愛が、大きく姿を変えたのが“愛”をテーマにした3部作だ。ここで歌われるのは、相手からの答えを待つ愛ではない。「とにかく僕は君が好きなんだ」――その気持ちを、全身全霊で叫ぶ“全力愛”である。

 その前触れとなっていたのが、「Amore~僕は君に愛を叫ぶ~」(2020年)だったのかもしれない。たとえまわりが敵になっても、僕はただ君を想い続ける。タイトルどおり“愛を叫ぶ”、その情熱はのちの全力愛に通じるひたむきさを宿していたのだと思えてならない。

Amore~僕は君に愛を叫ぶ~

 そして2025年10月、「好きすぎて滅!」が生まれた。「好きすぎて苦しい」「好きすぎてツラい」「好きすぎてヤバい」と、言語化もままならなくなるような感情を抱くことは、誰にだってあるだろう。その場面に、M!LKは「滅」という言葉を選んだ。頭のなかを相手に占領され、自分の意思では恋をコントロールできない。〈キミは神秘〉、〈理性持たない 心臓持たない〉、〈花も鳥も風も月も/キミの名を呼んでいる〉……オーバーすぎるほどに〈キミ〉を愛しているのは明白だ(だが、それが〈僕〉にとっては当たり前の表現なのだろう)。その先に、「滅」は崩壊ではなく、極限の愛を意味する言葉へと姿を変えていく。しかし、その極限の愛=「好きすぎて滅!」という言葉は、〈ただ健やかに 生きていてね/それだけで幸せ〉という至極シンプルな想いに帰結していく。

 「爆裂愛してる」では、全力愛がひとりの〈キミ〉から、もっと多くの世界へと開かれていく。愛のかたちは人それぞれでいい、どんな愛も正解なのだと、宇宙に届くほどの声量で肯定する。そして、3部作の完結編「時空超えてユニバース」で、愛の対象はついに「好きなものがある」という気持ちそのものにまで広がる。買い置きのアイス、お気に入りの作品の次回予告……そんな日常の小さな楽しみも、すべてが明日を迎える理由になる。その最後には、愛こそが原動力なのだという結論へとたどり着くのだ。

M!LK - 好きすぎて滅!(Official Music Video)
M!LK - 時空超えてユニバース (Official Music Video)

 ひとりへの愛から、生きることそのものを支える愛へ。“愛3部作”で、M!LKは全力で叫ぶことで愛のスケールを宇宙の果てまで押し広げてみせた。

 では、新曲「ザッツ!超常」は、どんな愛を歌っているのか。

 10月26日に配信リリースされた同曲は、TVアニメ『超巡!超条先輩』(テレビ東京系)のオープニングテーマ。作詞作曲は山崎あおい、編曲は炭竈智弘が手がけた。「オリコン週間ストリーミングランキング」で4位に初登場し、初登場でのTOP5入りは自身5作目で、初登場週の順位としてはグループの自己最高位を更新した(オリコン調べ/※1)。

M!LK - ザッツ!超常 (Dance Performance Movie)

 更新したのは、記録だけではない。「ザッツ!超常」で、M!LKの“愛”はまた新たなステージへと踏み出している。

 相思相愛を目指す愛は、相手の気持ちを求めていた。全力愛は、自分の気持ちを叫んでいた。けれど「ザッツ!超常」のまなざしは、まっすぐに〈君〉そのものへと向けられている。相手の夢や頑張りをよく見つめ、変わらないよさを大切にすること。そして、「足りない」ということは、必ずしも欠点ではないこと。ふたりで補い合えば、それは最強の武器になる。ひとりではできないことも、〈君〉となら乗り越えられる。何でもない日常が、君がいるだけで奇跡に変わっていく。

 そこには、「好きになってほしい」という願いも、「好きだ」という叫びも、必要ないのかもしれない。君は君のままでいい。そのままの君と一緒にいられることが、何よりも嬉しい――。相手をまるごと肯定し、その存在そのものに感謝をする、とびきり大きくて優しい愛。それは、12年という時間をともに歩んできたファンとの関係性にも、苦難を乗り越えてきたメンバー同士の関係性にも、どこか重なって見える。

 相思相愛を目指す甘酸っぱい恋から、宇宙規模の全力愛へ。そして今、相手の存在をまるごと肯定する無償の愛へ。同じ“愛”というテーマを掲げながら、彼らは決して同じ場所に留まらない。歌うたびに更新されていく愛の解像度こそが、M!LKというグループの凄みなのだとあらためて思う。

 愛の歌は、世のなかに溢れている。けれど、愛をこれほどまでに多面的に、そしてこれほどまでにまっすぐに歌い続けられるグループは、そう多くはない。M!LKが次に歌う愛は、一体どんなかたちをしているのだろう。その答えを知る日が、今から待ち遠しくてたまらない。

※1:https://www.oricon.co.jp/news/2490603/full/

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