INI、“自らの音楽”を掴み取る豊かな探究心 重ねてきた5年の先で立つ新たなスタートライン――ユニット曲から徹底検証
異なるサウンドの4曲に一貫している“INIの美意識”
こうして4曲を俯瞰すると、INIというグループが持つ表現の奥行きが改めて浮かび上がってくる。
今年9月にリリースされたシングル『ANTHEM』では、11人が一つのグループとして生み出すエネルギーと、これまで積み重ねてきたパフォーマンスの完成度が提示された。特にタイトル曲「You Know What To Do」では、軽快なダンスポップサウンドに乗せて、ためらわずに前へ進もうというポジティブなメッセージが歌われている。後藤と西が作詞に参加したこの楽曲もまた、メンバー自身のクリエイティビティがINIの音楽に反映されている好例。個々の異なる声質やダンスの個性が、INIという一つの大きな表現へと収斂していく。グループとしての一体感と、未来へ向かって進むエネルギーが高い次元で結びついているのだ。
対して今回の「INI WORKSPACE」では、その個性がより自由に解き放たれている。11人の表現を一つにまとめ上げるのではなく、メンバーそれぞれの音楽的な嗜好や創作への衝動を出発点として、異なる方向へと表現を拡張していく。特筆すべきは、4曲がいずれも近年の音楽的なトレンドを巧みに捉えながら、安易なキャッチーさや分かりやすさだけに依存していないことだろう。
トラップや2ステップ、ダンスホール、ストリート由来のHIPHOP、ファンク、ディスコ、アシッドジャズ。そして、極限まで音数を削ぎ落とした繊細なバラード。それぞれの音楽的な語彙を、自分たちの表現したい感情やビジョンに応じて選択し、一貫した美意識のもとに作品を構築している。これは、単に流行のサウンドを器用に取り入れているという話ではない。自分たちが何を表現したいのかを理解し、そのために必要な音楽を自ら選び取ることができる。その主体性こそが、現在のINIの最も大きな強みなのだ。
そして、グループとしての活動とユニットとしての活動は、決して相反するものではない。11人で培ってきた表現力があるからこそ、少人数でもこれほど多彩で、何より上質な作品を成立させることができる。そして、ユニットで獲得した新たな感性や技術は、再び11人のINIへと還元されていく。この相互作用が、今後のグループの進化をさらに加速させる原動力になるはずだ。
先日、筆者がINIの池﨑理人、田島将吾、藤牧京介にインタビューした際、藤牧は現在のグループについて、こう語っていた。
「ようやくINIとしてスタートラインに立ったというか。ここからINIが始まるような感覚があるんです」
実に印象的な言葉だ。デビューから5年が経ち、東京ドームという大きな目標を実現した今、ようやくスタートラインに立ったと感じている。そこには、これまでの実績に満足することなく、さらに先へ進もうとする強い意志が表れている。その言葉の意味を、今回の4曲ほど分かりやすく示しているものはないのかもしれない。
アーティストとしての個性を確立するとは、必ずしも一つの音楽性にたどり着くことではない。自分たちが何をかっこいいと思い、何を表現したいのかを理解し、それを具体的な音楽作品として提示できること。そして、その表現に対して自ら責任と誇りを持てることだ。INIは今、その段階へと到達しつつある。
5周年という節目は、彼らにとって完成を意味するものではない。むしろ、自分たち自身の音楽を本当の意味で生み出していく、その新たな出発点なのだ。
藤牧の言葉を借りるならば、ここからINIが始まる。今回の4曲は、その新たなスタートラインに立った11人が、これからどれほど自由に、どれほど豊かな音楽世界を生み出していけるのか。その未来への期待を、何より雄弁に物語っている。
◾️INI WORKSPACE リリース情報
「SWING」(RIHITO, SHOGO, HIROTO)
配信:lnk.to/INI_SWING
「Give Me More」(TAKUMI, TAKERU, YUDAI, JIN)
配信:lnk.to/INI_Give_Me_More
「Spin It」(FENGFAN, HIROMU)
配信:lnk.to/INI_Spin_It
「君がくれたもの」(MASAYA, KYOSUKE)
配信:lnk.to/INI_Kimigakuretamono