INI、“自らの音楽”を掴み取る豊かな探究心 重ねてきた5年の先で立つ新たなスタートライン――ユニット曲から徹底検証
「SWING」(池﨑理人、田島将吾、西洸人)
池﨑理人、田島将吾、西洸人による「SWING」は、3人の音楽的なバックボーンと身体表現へのこだわりが、極めて鮮明に打ち出された1曲だ。プロデュースを手掛けたのは、トラップを得意とするkrynX。重く煙たい空気をまとったダークでダーティなサウンドと、激しくバウンスするビートが、楽曲全体に不穏な緊張感を生み出している。
そのどす黒いグルーヴを、3人は実に巧みなラップスキルで乗りこなしていく。低重心のビートに対して、声の質感やフロウ、リズムのアクセントを自在に変化させながら、音楽に強烈な推進力を与えているのだ。とりわけ印象的なのは、クールで抑制されたボーカル/ラップのアプローチと、強気でエモーショナルな歌詞との対比である。
歌詞には、スタジオからドームへと駆け上がってきた自分たちの歩みや、仲間とともにさらなる高みを目指す野心が、ストレートな言葉で刻まれている。野球のフルスイングをモチーフに、迷いや制約を振り切り、全力で挑み続ける姿勢を表現しているのも実に痛快だ。
ここで描かれるのは、単なる虚勢や自己顕示欲ではない。自分たちの実力を証明するために積み重ねてきた努力と、ここからさらに上を目指そうとする覚悟である。実際に東京ドームという大舞台に立った彼らが、自らの言葉でその野心を歌うからこそ、楽曲には特別なリアリティが宿る。彼らが2021年にリリースしたユニットソング「How are you」とのサウンド的な対比もぜひ楽しんでみていただきたい。
さらに、振付にはプロダンスリーグ『D.LEAGUE』で活動するクランプのチーム FULLCAST RAISERZからyamato氏を迎えている。ここにもまた、単に流行のダンススタイルを取り入れるという以上の意味が込められている。
クランプは、怒りや葛藤、喜びといった人間の内面にある感情を、激しい身体の動きによって解放するストリートダンスの一つだ。HIPHOPカルチャーへの親和性が高く、ラップやダンスを自身の表現の核としてきた3人にとって、その選択は極めて必然性の高いものだったのではないか。krynXの重厚なトラックメイク、3人のラップ、そしてクランプによる身体表現。音楽的な嗜好とフィジカルな表現が一つの美意識のもとに結びついたとき、そこにはボーイズグループのダンスナンバーという枠組みを超えた、ストリートミュージックとしての強度が生まれる。「SWING」は、彼らがHIPHOPを単なる音楽的なスタイルとしてではなく、自らの感情や精神性を表現するための言語として捉えていることを感じさせる刺激的な作品だ。
「Spin It」(シュウ・フェンファン、髙塚大夢)
シュウ・フェンファンと髙塚大夢による「Spin It」は、今回の4作品の中でも、音楽的な洒脱さとダンスミュージックとしての快楽性が際立っている。往年のファンクやディスコ、フレンチエレクトロの要素を取り込みながら、アシッドジャズ由来の軽快で洗練されたアレンジを融合。跳ねるように躍動するクールなベースラインが楽曲全体を牽引し、華やかなダンスグルーヴを生み出している。
特に秀逸なのが、ボーカルとコーラスワークのアプローチだ。2人の歌声は、メロディを伝えるためのものというだけではなく、リズムやグルーヴを構成する音楽的な要素として機能している。軽やかなフレージングと洗練されたコーラスの重なりが、楽曲に独特の高揚感と色彩を与えている。シュウのウィスパーと実音を絶妙に交差させるスキルフルな歌唱表現と、髙塚のスムースにスウィングする歌声が軽快に交錯することで、洗練されたグルーヴの中にも、鼓膜と心をグイグイと引き込み続ける“優しい魔力”が生まれているのだ。
こうした音楽性は、歌詞に込められたメッセージとも密接に結びついており、レコードの回転数を意味するRPMや、ターンテーブルに針を落とすイメージをモチーフに、周囲に振り回されるのではなく自分自身のペースで音楽を鳴らし、自分らしく生きることの大切さを歌っている。さらに興味深いのは、そのメッセージが決して説教臭く響かないことだ。まずは音楽に身を委ね、自由に踊ることの楽しさを提示する。その快楽の中にこそ、自分のリズムを大切にするという思想が息づいている。
往年のダンスカルチャーが培ってきたグルーヴの快楽性を、2026年のポップミュージックとして再提示する、まさに温故知新的なサウンド。こうした楽曲のアイデアをシュウと髙塚自身が発案し、作詞に参加していることも重要だ。作曲はJinsol、SEUNGHOO、jaedogiといったクリエイター陣が手掛け、振付にはs**t kingzのOguri氏を起用。自分たちが理想とする音楽世界を実現するために、適切なクリエイターと協働するという制作スタイルが採られている。
セルフプロデュースとは、必ずしもすべてを自分たちだけで作り上げることではない。頭の中にあるビジョンを明確に提示し、それを実現するために他者との化学反応を引き起こすこともまた、優れたクリエイティビティの一つだ。サウンドとダンスの両面から、2人が理想とするスタイリッシュなエンターテインメントを追求する姿勢が感じられる。