米津玄師、Mrs. GREEN APPLE、ヨルシカ、幾田りら……『薬屋のひとりごと』主題歌は何を描いた? 独自の視点で紡ぐ音楽

 後宮で巻き起こる難事件に、毒と薬に異常なまでの執着を持つ主人公・猫猫が立ち向かうTVアニメ『薬屋のひとりごと』(日本テレビ系)。今年10月からは第3期が放送中で、12月にはシリーズ初の劇場版公開、さらには2028年の実写ドラマ化を控えている。異国情緒あふれる優美な世界観と、謎解きとともに浮き彫りになる数々の人間ドラマ。その作品の魅力を引き立ててきたのが、国内アーティストたちが手掛けた楽曲だ。

 12月11日公開の『劇場版 薬屋のひとりごと 亡妃の秘宝』の主題歌には、米津玄師の「春が灯り」が起用される。本作は、5年前に亡くなった妃の最期の願いをきっかけに、猫猫と壬氏が南の地・未南州を訪れるストーリー。予告映像では、穏やかな響きのなかに祈りにも似た思いをにじませた楽曲の一部を聴くことができる。米津は主題歌の制作にあたって、童謡の「チューリップ」「あんたがたどこさ」を参照したとコメントしている(※1)。童謡は長い時間をかけて人から人へ歌い継がれてきたもの。そして、タイトルにある「春」からも、季節が巡るなかで受け渡されていく命や記憶を連想させる。ときを越えて繋がれていく思いや人々のあいだに生じる継承という視点を、米津は本曲に落とし込んだのかもしれない。

『劇場版 薬屋のひとりごと 亡妃の秘宝』主題歌入り本予告 【主題歌:米津玄師「春が灯り」】|2026年12月11日(金)公開

 幾田りらの「百花繚乱」は、TVアニメ第2期第1クールのオープニングテーマとして書き下ろされた。楽曲タイトルの通り、鮮やかな花が舞うように次々と表情を変えるサウンドとメロディからは、未知の世界を前にした好奇心が弾んでいる。明るくしなやかな歌声も、普段は冷静ながら薬や毒を前にすると目を輝かせる猫猫のチャーミングな人物像と重なるようだ。歌詞の軸になっているのは、花街の薬師として育ち、そこで得た知識を活かして数々の謎を解き明かしていく猫猫の姿。新しい誰かと出会い、知らなかった世界に触れる喜びを描いた本曲には、YOASOBIの活動を通じて世界を広げた幾田自身の実感も込められているという(※2)。だからこそ、自分も新しい扉を開けてみたくなるような、聴き手の心にも響く楽曲だ。

幾田りら「百花繚乱」 Official Music Video

 第2期第2クールのオープニングテーマであるMrs. GREEN APPLEの「クスシキ」は、疾走感と妖しい美しさが耳を引きつける。タイトルは“薬”の語源であり、神秘的、摩訶不思議といった意味を持つ“奇し”からつけられたもの。二胡や琴といった伝統楽器を取り入れたサウンドは、作品のオリエンタルな世界観を想起させる。まさに神秘的な雰囲気を醸し出す本曲で歌われているのは、今世を超え、来世でも変わらない愛だ。人を救うことも、傷つけることもできてしまう薬。その二面性は、喜びと痛みを同時にもたらす愛とも重なる。“薬”という作品の重要なモチーフにフォーカスしながら、理屈では割り切れない人の心を描くあたりに、Mrs. GREEN APPLEらしさを感じた。

Mrs. GREEN APPLE「クスシキ」Official Music Video

 物語の舞台が後宮から市井、隣国へと広がっていくアニメ第3期。その第1クールのオープニングテーマは、ヨルシカの「雲を抜け風下へ私だけ」だ。n-buna(Gt/Composer)の頭に浮かんだタイトルの言葉と、そこから生まれた草原のイメージをもとに制作されたという本曲(※3)。伸びやかな二胡の音色が印象的で、どこか懐かしさを覚えつつ、視界が遠くまで開けていくような心地よさをもたらしている。ベース、ギター、ドラムが刻む軽やかなリズムは草原を颯爽と駆け抜けていくような躍動感を生み出しており、suis(Vo)の透き通った歌声は、風に揺れるように優雅でありながら芯の強さも感じさせる。この曲が“旅”がテーマとなる物語に寄り添いながら、聴き手の心も遠くへと運んでいくだろう。

ヨルシカ - 雲を抜け風下へ私だけ(OFFICIAL VIDEO)

 アーティストたちがそれぞれの視点で物語を彩ってきたアニメ『薬屋のひとりごと』の歴代オープニング主題歌。その一曲一曲が、『薬屋のひとりごと』を味わう楽しみを深めている。

※1:https://realsound.jp/2026/10/post-2561324.html
※2:https://www.animatetimes.com/news/details.php?id=1736823827
※3:https://realsound.jp/2026/10/post-2550315.html

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