iLiFE!、Appare!、きゅるりんってしてみて……その勢いはアリーナ規模へ 女性アイドルシーンの新しい波 鍵はライブと同性人気?

 FRUITS ZIPPERを筆頭としたKAWAII LAB.、=LOVE、≠ME、≒JOYからなるイコノイジョイが、ここ数年の女性アイドルシーンで大きく存在感を高めてきた。TikTokをはじめとしたショート動画SNSをきっかけに楽曲が広がり、そこからメンバー個人のSNSを追い、ライブへ足を運ぶという流れが定着しつつあるなかで、KAWAII LAB.やイコノイジョイに続く存在として頭角を現しているグループが複数いるなか、iLiFE!、Appare!、きゅるりんってしてみての3組は、その筆頭だ。

 iLiFE!は今年8月にKアリーナ横浜で『iLiFE!ワンマンLIVE「MEGALiFE!」』を開催。Appare!は2027年5月23日に横浜アリーナ、きゅるりんってしてみては2026年11月14日にKアリーナ横浜での単独公演をそれぞれ控えている。ライブアイドルシーンを中心に活動してきたグループが、続々とアリーナクラスへと進んでいるのだ。

 なかでも現在の勢いを象徴する存在が、iLiFE!だろう。2024年の幕張メッセ イベントホール、2025年の日本武道館を経て、Kアリーナ横浜でワンマンライブを開催するなど、着実に会場規模を広げてきた。さらに、新メンバーを募集したオーディション『Project i』には4万2000人が応募。この数字から見えてくるのは、iLiFE!が“観るアイドル”から“なりたいアイドル”へと変わりつつあるということだ。

 iLiFE!の存在を最初に広く知らせたのは、楽曲「アイドルライフスターターパック」だった。MIXやコールといったライブアイドルの現場で育まれてきた文化を楽曲にそのまま落とし込み、タイトル通り、ライブ初心者にとっての“スターターパック”になった1曲だ。TikTokでサビの振り付けやフレーズが切り取られて広がる例は珍しくないが、この曲の場合、SNSで曲を知った先にライブの楽しみ方まで用意されている。〈タイガー!ファイヤー!〉と声を出すことも含めてひとつの楽曲体験になっており、ライブアイドルの現場に馴染みのない人にとっても、その文化に触れる入口となった。iLiFE!が広げたのは楽曲だけでなく、「アイドル現場って楽しそう」という感覚そのものだったのかもしれない。来年1月にはついにメジャーデビューを果たすiLiFE!。シーンの台風の目として、その人気はまだまだ加速していきそうだ。

iLiFE! 「アイドルライフスターターパック」 [Idol Life Starter Pack] (Live Movie Color Coded Lyrics) [日本/Rom/Eng]

 Appare!にも、SNSを通して広く知られるようになった楽曲がある。「ぱ ぴ ぷ ぺ POP!」だ。TikTokで広く拡散され、今ではグループを代表する1曲となっているが、この楽曲を聴いていて感じるのは、ライブで盛り上がる曲とショート動画で広がる曲の距離が、実はそれほど遠くないということ。目まぐるしく変化するサウンドに、思わず口にしたくなる〈ぱ ぴ ぷ ぺ POP!〉というフレーズ、真似しやすい振り付け。ショート動画SNSと相性の良い要素が、そのままライブでも観客を巻き込む力になっている。

 Appare!は2016年に天晴れ!原宿として活動をスタートし、2020年に現在のグループ名へ改名。ライブハウスや対バン、フェスへの出演を重ねながら動員を伸ばし、2025年には日本武道館でのワンマンライブを実現した。彼女たちの楽曲には、「ぱ ぴ ぷ ぺ POP!」以外にもライブで観客を巻き込む力の強い曲が多い。「ぱ ぴ ぷ ぺ POP!」と同じく玉屋2060%が手がけた「Summer spit!」は畳みかけるような展開と勢いのあるサウンドが特徴で、「いいかんじっ!」にはグループの持つ真っ直ぐさや熱さがそのまま表れている。こうした曲を聴いていくと、Appare!が長くライブで磨いてきたのは、メンバーだけで完結するパフォーマンスというより、観客まで巻き込んでその場の熱量を上げていくスタイルだったことだ。「ぱ ぴ ぷ ぺ POP!」のヒットだけを切り取ればSNS時代らしい躍進にも見えるが、その前には長いライブ活動歴がある。SNSでのバズをきっかけに、曲だけでなく、現場で磨いてきた“熱”そのものが見つかった。そう考えると、Appare!の歩みがより分かりやすい。

ぱ ぴ ぷ ぺ POP! 〜Live Movie〜【2022.12.18『玉ねぎ食べるぞ!ツアー2022 〜勇往邁進〜 ツアーファイナル @豊洲PIT】

 きゅるりんってしてみても、「きゅるりんしてみて」「ツインテールは20歳まで♡」「♡♡♡わんだーらんど」など、SNSとの相性が良い楽曲をいくつも持っている。2021年の結成以来掲げてきたのは“女の子のカワイイ・リアリズム”。その言葉を体現するように、楽曲はもちろん、衣装やヘアメイク、アーティスト写真、SNSでの発信まで、一貫した“かわいい”の世界観を作り上げてきた。それぞれが独立しているのではなく、すべてがつながってグループのイメージを形作っているのも、きゅるりんってしてみての特徴だ。

 特にメンバーと同性である女性ファンからの支持を考えるうえでは、その“かわいい”との距離感が興味深い。ステージ上では憧れの対象になるほど作り込まれたビジュアルを見せながら、SNSではメンバーそれぞれのキャラクターや日常も見える。遠すぎる存在にも、近すぎる存在にもならない。そのバランスが、「推したい」という気持ちと「真似したい」という気持ちの両方につながっているように感じる。

【LIVE映像】きゅるりんしてみて/きゅるりんってしてみて 2025年01月25日(土)『Kyururin Sensation〜白銀の野音編〜』@日比谷公園大音楽堂

 メンバーを意識した服装やヘアスタイルでライブに足を運ぶファンの姿も、今では珍しいものではなくなった。こうした傾向はきゅるりんってしてみてだけでなく、iLiFE!にも見られる。衣装やヘアスタイル、メイクを含めたメンバーのビジュアルがSNSで広がり、ファンがその装いを参考にすることも多い。KAWAII LAB.のグループにも通じるが、今の女性アイドルは“推す対象”であると同時に、ファッションやメイクを真似したくなる身近なお手本としての“憧れの存在”にもなっている。同性からの支持が目立つ背景には、こうした見られ方の変化もあるのだろう。

 その一方で、iLiFE!、Appare!、きゅるりんってしてみての3組がここまで規模を広げてきた背景には、やはりライブそのものの強さがある。いずれもSNSで広がった楽曲を持っているが、SNSで何千万回再生されたとしても、その数字がそのまま動員につながるわけではない。SNSで気になった人が実際にチケットを買い、ライブを観て、「もう一度行きたい」と感じなければ、大規模会場を埋めるほどの支持にはつながらない。

 だが、3組はライブアイドルシーンで経験を重ね、現場でファンを惹きつける力を磨いてきた。そこにSNSで広がる楽曲や同性からの支持が加わり、これまでライブアイドルに馴染みのなかった層にも届くようになった。ライブハウスや対バンを中心に活動してきたグループが、今ではアリーナクラスの会場を単独で埋めることのできる時代になっている。iLiFE!、Appare!、きゅるりんってしてみての躍進は、女性アイドルシーンの勢力図だけでなく、ライブアイドルが大きく飛躍していくまでの道筋そのものが変わってきたことを示すものだ。

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