G-FREAK FACTORY「責任取ってくれよな、TOSHI-LOW」 愛と笑いと絆――ビルボードライブで示したレベルミュージックの芯

「ちゃんとしたアコースティックはニューアコ(『New Acoustic Camp』)、OAUがきっかけ。最初はそんなの無理だって言ってた。でも気づいたらアルバム作って、ツアー回ることになって……ビルボードに立ってる。どうすんだよ。責任取ってくれよな、TOSHI-LOW」

 茂木洋晃(Vo)が笑っていた。バンド30周年を目前に、初のアコースティックアルバム『灯-TOMOSHIBI』を完成させたG-FREAK FACTORY。10月から始まった全国ツアー『Path to 30th TOUR “TOMOSHIBI” -燈/灯-』は全箇所、バンドセットとアコースティックセットの2DAYS公演である。とはいえ10月9日、初日、東京・Zepp DiverCity (TOKYO)公演と対になるのが初のビルボードライブ横浜公演というのは、ちょっと予想外の展開だった(本稿では2nd Stageをレポートする)。

 そもそもビルボードってどんな格好で行けばいいんだ。多くのファンが直面した問題はメンバーも例外ではなかったようで、結果、フォーマルではないがTシャツでもない、茂木の場合は白のロンTにオーバーオールに大型ハット、普段着よりはドレスアップと言えるのか……? といった装いに落ち着いている。いや、落ち着いてはいないだろう。要するに、どう振る舞っていいのかわからないソワソワと、どうせならこの場所を楽しんでやれというワクワクが、いつもの硬派さを上回っていた夜だ。

茂木洋晃(Vo)

 最強のローカルバンド、強固なレベルミュージックといった肩書きが不動になっている今のG-FREAK FACTORY。だからこそ、「ビルボードってごはんも食べられる」「一番高いメニューはいくら」などと盛り上がり、「それをメンバーからどこかのテーブルにプレゼントします!」と漢気ジャンケンが始まっていく様子には会場全体が大喝采。最後に茂木がボソッと「四星球みたいになってきた……」とこぼしていたのも、かなりレアな笑いを誘っていた。

 くだけた話から始めているのは、当然、一発でフロアを刺す音の説得力があるからだ。ただ、この夜の主体は言霊と爆音ではなかった。フロントの茂木とウッドベースの吉橋“yossy”伸之(Ba)以外は着席スタイル。原田季征(Gt)のギターソロはまろやかに耳をくすぐり続けたし、彼と同じくらい活躍したのはサポートキーボードの多畠幸良。隙間を埋めていくピアノやオルガンの音色は可憐な羽根で飛び回る蝶のよう。総じて柔らかく軽やかな心地よさの共有がまずあった。

原田季征(Gt)
吉橋“yossy”伸之(Ba)
Leo(Dr)

 こうなると、言葉よりメロディのよさが際立ってくるのは不思議な効果。茂木の歌は、何を語るかを別にして、和モノとしてグッとくる、歌謡としての強さがある。やや苦しそうに見えて大事なところは外さない、どんな高音も必死に捕まえていくスタイルも、朗々たる歌唱力で説き伏せるタイプとは真逆の求心力となる。彼を懸命に支える大合唱が、気づけば自然発生していた中盤の「Fire」はその典型。盛大なコーラスの中で曲を終えた茂木が「カンペキっ!」と笑顔を見せた瞬間も、妙にチャーミングな印象を残すのだった。

 そもそもレベルミュージックと旗を掲げたところで、厳しそうなおっさんが厳しい目つきで厳しい言葉を垂れ流しているなら、それはエンタメとして成立しない。茂木の歌は、まず自ら地べたに降り、視線を合わせ、ニカッと笑うところから始まっていく。これはお前の歌、俺らの歌だと納得させるところから。そんな流儀を目の当たりにしたのはこのあとだ。

「いま、病気と闘ってる仲間がいます。傷だらけのヤツもいる。見るたびに代わってやりてぇ、その痛みをよこせって思う」

 このMCから始まるのは人生の儚さをテーマにした「EVEN」。思い浮かぶのは大腸がんを公表したばかりの盟友 TOSHI-LOWだ(この翌日、Zepp DiverCity公演はBRAHMANとの共演になる予定だった)。もちろん別の誰かを思い浮かべた人もいるだろう。特別な話ではない。とりあえず身のまわりに生じてしまった“受け入れたくないもの”。それに対する最もささやかで切実な“抵抗の歌”を彼らはレベルミュージックと呼んでいる。親しみやすい音と歌心をまず提示した後に、G-FREAKは自分たちの抗い方を見せていく。笑い飛ばす強さと未来への希望を持って歌い続ける。冒頭に書いたMCは、こういう後半のシーンからこぼれ落ちてきたものである。

 もしあいつ元気だったら今日来てたと思うんだよ。一緒に歌えないから代わりに歌ってくれ。そんな言葉から始まったのは「ダディ・ダーリン」。過去にTOSHI-LOWが飛び入り参加することの多かった名曲だ。もちろんファンは全力で大合唱。サビを歌うだけでなく、2番を丸ごと全部、ほぼ全員が暗唱していたのは見事な調和力と一体感。そして、“みんな”の力が大きければ大きいほど、今すぐにでも壊れていきそうな平和について静かに語る茂木の言葉は、どこまでもリアルな重みを持つのだった。

 それまでは静かに寄り添うプレイに徹していたドラムのLeo(Dr)が、一気に覚醒していくのはジャズバージョンの「島生民」。吉橋もアップライトから着席スタイルのエレキベースに持ち替え、スリリングな駆け引きによるコントラストが生まれていく。そこからダイナミズム溢れる「GOOD OLD SHINY DAYS」に流れる大団円だったが、実際のところ、この躍動的な音の会話にもう少し触れていたかった、というのが正直なところ。もちろん初のビルボード、時間の限られた1日2回公演なので、あまり多くを期待するのは贅沢が過ぎるのだろう。「懲りずにこういうこともやっていきたい」と茂木は語っていたので、次回の同会場に大きく期待しておきたい。そもそも30周年を手前にした初のアコースティックアルバムだ。このツアーを経ることで、G-FREAKのアコースティックサイドは驚くほど大胆な進化を見せていくはずだ。今から伸びしろしかないって、素敵なことです。

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