aiko、Creepy Nuts、syrup16g、IVE、離婚伝説、MAZZEL……注目新譜6作をレビュー

New Releases In Focus

 毎週発表される新譜の中から注目作品をレビューしていく連載「New Releases In Focus」。今回は、aiko「君の言う通り」、Creepy Nuts「トムとジェリーとヘイターと私」、syrup16g「セブンティーン」、IVE「Looks Can Kill」、離婚伝説「シチュエーション」、MAZZEL「Touch」の6作品をピックアップした。(編集部)

aiko「君の言う通り」

 ニューアルバム『最後に熱い日々を狂わしき想いで』のオープニングを飾る1曲。すっと息を吸い、アカペラで歌い出すこと約20秒。そこにピアノとウィンドチャイムが入ってくる瞬間には切なさと愛おしさが溢れ出すaikoワールドが起立している。この曲は現在進行形の恋ではなく、かつて大好きだった誰かを〈あの時のままで あの日の世界で〉想う追憶の歌。再会したわけでも近況を聞いたわけでもない。それなのに、今ここで震えている心、今後さらに押し潰されていくだろう寂しさを、かくも生々しく描写できるのだ。アルバムタイトルには“最後に”というワードも入っているが、キャリアと年齢を重ねた今、aikoブランドはさらなる凄みを増している。(石井)

aiko「君の言う通り」

Creepy Nuts「トムとジェリーとヘイターと私」

 何の前触れもなく、突如リリースされた新曲。タイアップもなく、この曲には今のCreepy Nutsのメッセージが込められていると考えるのが自然だろう。“ヘイター”とは、SNSなどで特定の対象に向けた誹謗中傷を繰り返す人のこと。大きな成功を手に入れたR-指定、DJ松永に対する恨み妬みが大量に発生している現状を、この曲で彼らはそれをはっきり認めながら、〈でもおらな困んねんなAll My Hater's〉から始まる後半ではヘイターをむしろ仲間として受け入れ、挙句の果てに〈ずっとこうやって遊ぼうな〉と呼びかけてさえいる。トムとジェリーよろしく仲良くケンカしようぜというわけだが、果たして上手くいくだろうか。2026年のヒップホップとして完璧な強度とクールさを体現していることも明言しておきたい。(森)

Creepy Nuts - トムとジェリーとヘイターと私

syrup16g「セブンティーン」

 結成30周年、12枚目のアルバム『Canon Feel』収録曲のひとつ。どこまでも続く曇り空、もしくは夜明け前の薄闇を延々と見ているようなギターロックはこのバンドの専売特許で、むしろファンの誰ひとりもすっきりした青空が見たいとは思っていないだろう。ただ、30年間この世界観を背負ってきた五十嵐隆(Vo/Gt)が乾いた声で〈自分からは逃げらんない〉と歌い出すと、その重みはちょっと異様なものがある。開き直りか自嘲か、それともこれが安心のコクーンか。ただヒリヒリと痛いものは聴き続けるのが難しい。ギターには透明感と包容力が、アンサンブルには職人技のような安定感が宿っているところが救い。(石井)

syrup16g - セブンティーン(MV)

IVE「Looks Can Kill」

 10月26日発売のEP『Looks Can Kill』からタイトル曲が先行配信。アッパーなシンセに始まり、強烈な低音とビートによってぐんぐん聴き手を引っ張っていく。物語性ではなく、パンチのあるタイトルで一発勝負という感じのダンスナンバーだ。あえてそのようにしているのだと思うが、メロディも起承転結に富んでいるわけではなく、むしろ単調な繰り返しの中、少しずつ変わっていく譜割りがフロウを作っている。ラップとは似て非なる、この唱法はなんだか新しい。また、カラフルな色彩で目を楽しませつつ、ダンスシーン、昔のアクション映画や何かのCM風カット、さらにメイキング映像までを次々と挟んでいくMVもユーモラス。繰り返し観てしまう。(石井)

IVE 아이브 'Looks Can Kill' MV

離婚伝説「シチュエーション」

 佐野康夫(Dr)、山本連(Ba/Suchmos)のリズムセクションが気持ちよすぎて曲が始まった瞬間にどうしても身体が揺れてしまう「シチュエーション」は、ニューアルバム『ファーストキス』の冒頭を飾るミディアムチューン。しなやかなグルーヴと切ないメロディのバランスも素晴らしく、オーセンティックなR&B、ソウルを誰もが楽しめるJ-POPへと導くこのバンドのセンスと技術がさらに向上していることが伝わってくる。サビは〈あどけないって素敵じゃん〉のリフレイン。恋の始まりを描いた歌詞のストーリーを的確に捉えたフレーズなのだが、心地よいフロウとして繰り返されるうちにゲシュタルト崩壊していく(≒意味がよくわからなくなる)感覚も楽しい。(森)

シチュエーション

MAZZEL「Touch」

 アルバム『Banquet』のリリース、初のアリーナツアーの成功など大きくステップアップした2026年のMAZZEL。新曲「Touch」は彼らの創造性とパフォーマンスが確実に進化していることを示すナンバーだ。最初に聴こえてくるのは可憐なピアノの旋律と切なさを滲ませるフェイク。さらに00年代はじめ頃のR&Bを想起させるトラックが立ち上がり、軽やかさとしなやかさをたたえたメロディがゆったりと広がっていく。大切で大好きな恋人とのかけがえのない瞬間、いつまでも一緒にいたいという切実な願いを綴ったリリックを含め、幅広い年代のリスナーが素直に「いい曲だな」と感じるクオリティが備わっているのだ。これ見よがしではない、さりげなくて奥深い名曲だと思う。(森)

MAZZEL / Touch -Music Video-

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