炙りなタウン ゆきなり × Hump Back 林 萌々子対談 先輩から後輩へ、受け継がれるガールズロックの衝動と信念

 岡山発のロックバンド・炙りなタウンのゆきなりと、大阪発のHump Backの林 萌々子。ライブハウスを拠点に、飾らない言葉と衝動的なロックンロールでリスナーの心をつかんできた両バンドには、世代を超えて響き合うものがある。ガールズバンドとしてシーンを歩んできた先輩と後輩は、互いの音楽や生き方をどう見つめているのか。バンドを続けることの喜び、ステージに立ち続ける理由、そしてこれからのロックシーンへの思いまで、2人に語り合ってもらった。(編集部)

「Hump Backのキッズだったんで」ーーゆきなりと林 萌々子、アメ村での出会い

ーー会うのはいつぶりなんですか?

林 萌々子(以下、林):ちょっと久しぶりかな。私が若手たちのライブを観に行った時以来かも。それに、こうやって対談するのは初めてですね。

ーーでは今日は、ゆっくりお話ししていただければと思います。Hump Backと炙りなタウンはよく対バンしているイメージがありますが、お二人が初めて会ったのはいつ頃でしたか?

林:いつやったかな……。けっこう前だと思うんですけど、アメ村のサーキットイベントで、ゆきなりが「炙りなタウンっていうバンドをやってます」ってCDを渡してくれて。最初の方に出してた、動物の顔のCD(1stミニアルバム『狼煙』)。

ゆきなり:オオカミの顔のCDですか?

林:そうやったかも。

ゆきなり:じゃあ多分、2019年か2020年頃ですね。その日炙りなタウンは、新神楽っていうライブハウスでライブをやって。アメ村をうろちょろしてたら萌々子さんがいたから、「Hump Backの人だ! 音源を渡しに行こう!」って声を掛けさせていただきました。

林:「Hump Backの人だ!」って思ってくれてたんや。

ゆきなり:普通に、Hump Backのキッズだったんで。高校生の時に、すみだ(炙りなタウンのしおきち・Ba/Vo)が「Hump Back、めっちゃいいよ」ってCDを貸してくれて。それがきっかけでハマってからはライブを観に行ったり、高校の軽音楽部のメンバーとコピーをしたりしてました。

ーーHump Backの楽曲やライブのどのようなところに惹かれましたか?

ゆきなり:まず、萌々子さんが書く曲は、本当にいい曲ばっかりで。

林:一番嬉しい。

ゆきなり:好きな曲はいっぱいあるんですけど、一番を聞かれたら、Hump Backと出会った曲でもある「月まで」をやっぱり挙げたくなっちゃいます。どの曲にも、萌々子さんという人間が滲み出ているなと思うんですよ。ライブに行って萌々子さんが歌ってる姿を見た時に、曲の中の人がここにいる、そのまんまだ、と思って。で、泣いちゃう、みたいな。

林:嬉しいな。私に声を掛けてくれた時のゆきなりは、そんな感じに見えないくらいギラギラしてたんですよ。「わし、バンドやってます!」みたいな感じで。年下の女の子からそんな勢いで来られたことがあんまりなかったんで、「こいつは面白いやつが来た!」と思って。

ゆきなり:すみません(笑)。

林:実はそれより前から、炙りなタウンのことを知ってました。ライブハウスで働いてた友達から「炙りなタウンってバンド、めっちゃよかった」と聞いてたから、バンド名がずっと頭にあって。岡山のバンドなんや、女の子のバンドなんや、みたいな。

Hump Back 林 萌々子
炙りなタウン ゆきなり

ーーそこから時を経て、ゆきなりさんからCDを渡されて、「あっ、あのバンドだ」と?

林:そうです。もらったCDを聴いてまず「下手やな」って思ったけど(笑)、それがいいなと思いました。多分、自分たちが下手ということにもあんまり気づかんまま、「たっのしいー!」って感じで録ってるんだろうと伝わってきたので。

ゆきなり:はい、その通りです(笑)。

林:そこで初めてコンタクトをとってからライブを観る機会も何回かありましたけど、やっぱり上手か下手かを超えた、意味の分からん感動を覚えるというか。その衝動みたいなものが炙りなタウンの良さやなって、当時から感じてました。

ーーそこから、対バンする仲になっていったわけですね。

ゆきなり:初めて対バンしたのは、心斎橋BRONZEでのツーマン……?

林:ああ、それや! 2023年の1月。うちらのホームのBRONZEは、毎年1月は、周年月間としていろんなイベントを組んでて。そこで初めて、炙りなタウンとHump Backのツーマンを組んでもらいました。

ゆきなり:Hump Backとツーマンだ!ってことで、わしはめっちゃ気合いが入ってました。憧れの先輩やけど、「憧れてるだけじゃダメだ」「勝つんだ!」「カマすぜ!」という気持ちが当時はあって。だから、MCでも本当は好きだってことを隠してたし、「先輩を倒しに来ました!」みたいなことを言ったんですけど、けっこうコテンパンにやられちゃって。

林:ふふふふふ。

ゆきなり:そのあとわりとすぐに、Hump Backがツアーに呼んでくれて、2度目の対バンをすることができたんです。その時はもうちょっと、大好きだって気持ちを出して。そしたら自分の大好きって気持ちより、ものすごく大きな愛で返してもらって。袖でボロボロ泣いてたら、萌々子さんが抱きしめてくれたんですよ。敵わないな……って思いました。

林:そんなこともありましたね。

ゆきなり:前に萌々子さんに「Hump Backはオレンジ色のブランケットみたいなバンドです」と伝えさせてもらったことがあって。Hump Backは、わしの持ってるトゲトゲを愛や優しさで包んでくれる。そのブランケットを破ったり刺したりしちゃっても、また包んでくれる。だから敵わないと思っちゃうけど、それじゃダメだと思う自分ももちろんいるので。いつかはライバルと呼んでもらいたいですね。頑張ります!

「前例の一つになれたら嬉しい」ーーゆきなりが感銘を受けた林の言葉

ーー林さんは、ゆきなりさんが初対バンの時に、Hump Backへの気持ちを隠して自分を奮い立たせていたことに気づいていたんでしょうか?

林:全く気づいてなかったです。まず、Hump Backは後輩に好かれているのか……自分たちは「怪しいな」と未だに思ってて。

ゆきなり:えっ……!

林:バンドマンの飲み会で「一番慕ってくれてる後輩って誰なん?」って聞かれても、「……いや、わからん。うちら、後輩に好かれてるかな?」みたいな。その中でギリギリ出せる名前が炙りなタウン(笑)。「確かに慕ってくれてるけど、あの子ら、“後輩”をやるのが上手いからな。うちらに気を遣ってくれてる部分もあるとは思うねんけど……」というふうに言ってます。

ーーHump Backに憧れてたり影響を受けたりしているバンドは、たくさんいると思いますよ。

林:いるんですかね? いたら嬉しいですけど。自分たちの中には「みんなHump Backのことは、そんなに好きじゃないんじゃないかな?」という前提がずっとあるから。

ーーおそらく林さんが思っている以上に、Hump Backの存在は邦楽ロックシーンに影響を与えていると思います。もっと自信を持ってほしいです(笑)。

ゆきなり:めちゃくちゃカッコいいですからね、Hump Backは。萌々子さんが産休前に「私らがオカンになってもバンドを続けられるって証明するし、道を作っとくから、安心して好き放題バンドやってな」と言ってくれたことがあって。

林:へえー。そんな、良さげなことを(笑)。それは何らかのフィルターかかってない? 何気なく言った言葉を、カッコよく聞こえるように脚色してくれてる?

ゆきなり:そんなことしてないですよ(笑)!

林:でもまあ、今言ってもらった思いは確かにあるんで、言ったんだと思います。覚えてないけど(笑)。

ーー本人は覚えてないっていうのが、また素敵ですね。

林:私も妊娠・出産を視野に入れた時に、マキシマム ザ ホルモンのナヲさんとか、Dizzy Sunfistのあやぺたさんとか、子どもがいても活躍してる女の先輩がいるっていう前例に救われたので。今は女の子のバンドが増えてるし、もちろん結婚や出産だけが幸せじゃないし、彼女たちが何を選ぶかは自由だけど、結婚や出産をしたいと思った子が、「Hump Backはこんなことをしてたんだ」ってちょっと思えるだけでも、何か違うのかなって。そういう前例の一つになれたら嬉しいなという思いはありますね。

ゆきなり:産休前と産休後で、生活って変わりましたか?

林:大変わり! ひいた風邪を治す暇もないし。でも、打ち上げとかもやっぱり手を抜きたくないし。

ーーHump Backくらいキャリアを重ねていても、まだ「打ち上げは手を抜けない」って思うんですね。

林:まだ仲良くなれてない先輩がいたら、「仲良くなりたい!」って気持ちで飲んだりはします。あと、飲みに行くタイミングがマジでなくなったんで、「今、楽しまな!」みたいな。もうね、一刻も早くおかしくなりたいんですよ。「早く私をおかしくさせてくれ!」みたいな(笑)。

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