全国バンド紹介 北海道編:Chevon、LAUSBUB、テレビ大陸音頭ら北の大地からメインストリームへ、勢いに乗る6組
全国各地には、その土地で生まれ、独自のサウンドを鳴らしながら全国へと存在感を広げていくバンド/アーティストがいる。音楽性はさまざまでも、その土地で育まれたシーンや人々との出会い、独自のライブカルチャーは彼らの歩みに大きな影響を与えているはずだ。さらに近年は、地元でフェスを主催するなど地域との結びつきをより強く打ち出すバンドも増えている。
本シリーズでは、そうした各地の音楽シーンに目を向け、現在注目を集めるバンド/アーティストをピックアップ。現地のシーンやアーティストの活動を知るキュレーター・ライターの視点で、それぞれの土地から生まれる音楽の魅力を紐解いていく。第1回となる今回は、北海道発のバンドにフォーカスしたい。
今回は、関西を拠点に若手バンドの発掘・キュレーションを行っている遊津場氏に、現在注目している北海道のバンドについてコメントを寄せてもらった。(編集部)
個性的な若手バンドが次々と頭角を現す北海道のバンドシーン
北海道出身のバンドやミュージシャンと言えば、誰を思い浮かべるだろうか。北島三郎、松山千春、中島みゆき、GLAY、YUKI、サカナクション……そう、北海道はこれまで数多くのトップアーティストを輩出してきたのだ。では、現在の北海道の音楽シーンはどう変化しているのか。近年は個性的な若手バンドが次々と頭角を現し、それぞれが独自の存在感を放っている。今回は、その中でも目を引くトピックのある6組をピックアップし、現在の北海道バンドシーンの魅力を紐解いていきたい。
Chevon
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北海道発の若手バンドシーンを語るうえで、欠かせない存在がChevonだ。谷絹茉優(Vo)、Ktjm(Gt)、オオノタツヤ(Ba)からなる、札幌市で結成された3ピースロックバンド。楽曲はもちろんのこと、SNSなどにおける発信力やカリスマ性を感じるステージングも相まって、ライブを重ねるごとに支持を広げてきたバンドだ。今や全国にカプリ仔(Chevonのファンの呼称)は増加し、9月の横浜アリーナ公演はソールドアウト。12月には日本武道館2DAYSも予定している。
多くの楽曲で歌唱力やメロディに圧倒的な力強さを見せる一方、「さよならになりました」などでは、人の繊細な心の柔らかさも極上に表現。文学やインターネットカルチャーにも造詣の深いChevonは、俯瞰的に自身のキャラクターをデザインしながら、ロックバンドとして、ある種エゴ的な衝動から生まれる人間らしさも大切にしている。そうした部分を丸裸にして放出しているところに、多くの人が惹かれているのだろう。
新人発掘もしている筆者は、2021年7月に「アオタカゼ」でChevonを知った。当時のChevonは毎月EggsやYouTubeに高いクオリティの楽曲を投稿し続けていたと記憶していて、結成当初からのタフさが今も彼らの礎となっていると感じる。今年は4月にメジャーデビューし、アニメタイアップも担当。より一層幅広くChevonの音楽が届いていくことになりそうだ。
First Love is Never Returned
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北海道から、近年着実に活動の場を広げているバンドの一組がFirst Love is Never Returnedだ。R&Bをルーツにポップミュージックを鳴らす北海道在住の5人組バンド。ニューヨークでのボーカル留学を経験したKazuki Ishidaの透明感とエモーションをあわせ持つ歌声が、彼らの音楽に豊かな表情を与えている。今夏は『SUMMER SONIC 2026』、『SPACE SHOWER SWEET LOVE SHOWER 2026』といった大型フェスに“出勤“。さらに10月には「本当の意味での“メジャーデビュー”」をすることを宣言し、キャリア初となるフルアルバムをリリース、そして11月からはワンマンツアーを開催する。
なぜ“出勤”という言葉を使ったかと言うと、彼らは社会人バンドで、今も有休と戦い続けているからだ。その中でのこの全国的な活躍は同じ社会人バンドにとって希望になっているはず。2025年3月にリリースされた「挿入歌」は、そんな大人だからこそ等身大な恋の幸せの表現が絶品だ。フィクションと現実を比較して〈リアルな世界に音楽は鳴らない/ドラマティックな展開もなくて〉と歌うが、だからこそ一番愛おしいことは何かを知っている、今を生きる大人のラブソング。年齢を重ねても、その変わりゆく生活の側にあり続ける曲を、今後も彼らは世に出していくのだろう。
テレビ大陸音頭
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2023年、北海道札幌市にて結成。千代谷竜司(Vo/Gt)、鈴木隆太郎(Gt)、戸借晴亜(Ba)、ヤナガワヒロト(Dr)からなる4人組バンドで、2024年にリリースした楽曲「俺に真実を教えてくれ!!」はSpotifyチャート「バイラルトップ50」で1位を記録。注目の高校生バンドとして、テレビ番組などにも取り上げられたことは記憶に残っている人もいるだろう。その後も着実に活動を広げていき、2年連続で『FUJI ROCK FESTIVAL』にも出演した。
今年6月には初アルバム『VS Tairiku Ondo』をリリース。収録曲の「超常現象を信んじてみる。」は、誰もが抱える心の闇に向けて届く〈頑張れー〉の声が染みる。怠惰や極端な妄想中毒に走る肩を、有無を言わさずガッチリ掴んで共感してくれる感覚が、グルグルと整理がつかない僕らの頭をバチッと目覚めさせてくれる。キテレツな印象もあるかもしれないが、ロックバンドとしての芯は真っ直ぐで、彼らだからこそ歌える応援歌だ。同い年の大阪の期待のバンド・grating hunnyとも6月にツーマンを開催。ここから06世代という現在の20歳が音楽シーンに起こす旋風において、北の代表はテレ大だと思う。
LAUSBUB
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2020年3月、北海道札幌市の同じ高校の軽音楽部に所属していたRicoとMeiによって結成されたLAUSBUB。当時高校生のLAUSBUBの楽曲を聴いて、サカナクションの山口一郎は「グローバルで戦っていけるくらいのセンスがある」(※1)と評している。今年Spotify『RADAR: Early Noise 2026』に選出され、杉咲花と多部未華子のW主演ドラマ『クロエマ』(Prime Video)の主題歌を担当。9月にメジャーデビューアルバム『society | lazy』をリリースし、全国5カ所を巡るツアーも開催した。
『クロエマ』の主題歌「sign」は、このドラマがちょっと甘くてダークな占いミステリーということを踏まえて聴くと、その歌詞がより意味を持ってきて、高い作家性を改めて感じることができる。何かをきっかけに運命は動き出すが、結局その景色を変えているのは自分だというリアルな証明を、繊細かつミステリアスなサウンドに乗せる。作中での杉咲と多部の演じるキャラクターの関係性は独特で、そのシュールさも内包しているように聴こえるのも魅力的。LAUSBUBの独自の創造が、また我々のイメージを超えていくことを期待したい。
浪漫派マシュマロ
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北海道釧路市出身のスリーピースバンド・浪漫派マシュマロも全国のライブバンドと切磋琢磨を重ねている。上京後は下北沢LIVEHOLICを中心に活動し、「君に夢中!!」のヒットとともに認知度を上げていった。今年は『JAPAN JAM 2026』に初出演を果たし、10月からZepp Shinjuku (TOKYO)を含む全国7カ所を巡るツアーも開催している。
新曲「○✕△□」は力強い歌い出しからグッと引き込まれ、力強さと心地よさが交じったポップメロディが一歩踏み出す勇気を与える。曖昧な感情が溢れるこの世界の中で、信じられる確かなものや人の存在のありがたさにも気づくだろう。
筆者が今年3月に観たEggsの10周年イベントのステージでは、聴く者の心を弾ませるグルーヴの良さだけでなく、周囲の存在を当たり前と思わず、感謝を真っ直ぐ伝える姿勢が印象に残った。音楽を通して人とのつながりを大切にしてきた彼らの歩みが表れていたように感じる。これからも変わらずその一つひとつの縁を大切にしながら、活躍の輪を広げていくはずだ。
goethe
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最後に紹介するのは4人組バンド・goethe。今年5月に初のフルアルバム『circle』をリリースし、11月からは全国6カ所を巡るツアーを開催。ツアーファイナルは、12月4日に行われるヒューリックホール東京での初のホールワンマンライブとなっている。
goetheの音楽は、上品かつ生活に馴染むピアノの音色を中心に構成され、そこに樋口太一(Vo/Gt)の甘美な歌声がぴたりと合う。家でコーヒーを片手に聴きたくなるような、気持ちに余裕が生まれる作品も多い。「ユーモアを交えて」は気分よく歩く帰り道が脳裏に浮かぶ。新曲「ぬれ手でアワ」は、キュートなアニメーションMVとあわせて聴くと、そのポップさが五感のすべてで優しく弾けて心地よい。嗅覚を入れたのは、うっかりではない。シャンプーの匂いがたしかにするくらい、お風呂に入っている気分になれる曲だ。「濡れ手に粟」ということわざと、お風呂で濡れた手と泡の状況をかけたユーモラスな楽曲だ。
5月に開催したLIQUIDROOMでのワンマンライブでは、トロンボーンやサックス、トランペットをサポートに迎えた9人編成でのパフォーマンスも披露した。ホールという空間になれば、また格別なものとなるだろう。
上記に挙げたバンド以外にも、北海道のバンドシーンには注目のアーティストが多くいる。来年、再来年とまたどんな新星が出てくるのかも楽しみにしたい。
※1:https://www.tfm.co.jp/lock/sakana/index.php@itemid=16178&catid=17.html

























