かりゆし58「このアルバムを残せたことがよかった」 デビュー20周年、夢から志へと向かう最新作『結縁音』を語る

 かりゆし58から10枚目のオリジナルアルバム『結縁音』(読み:ゆいえんね)が届けられた。

 デビュー20周年の節目を飾る本作には、デビュー記念日の2月22日に配信リリースされた「愛を編む」「youth」、メンバー全員で作詞を手がけた「5820」、レギュラーラジオ番組のタイトルから名付けられたアッパーチューン「かりっかりかりか」、アルバムのコンセプトに直結した表題曲「結縁音」などを収録。キャリアのなかで培ってきた音楽性、人と人との温かい結びつきが実感できる充実作に仕上がっている。

 11月からは全国ツアー『ハイサイロード2026 結縁音-YUIENNE-』がスタート。そして2027年4月30日には、初の日本武道館ライブも決定。しっかりと地に足を付け、出会った人たちとのつながりを大事にしながら一歩一歩進んできた4人。そのなかで育まれた豊かな歌をじっくり味わってほしい。(森朋之)

このメンバーで20年やってきたから、この形になった

ーーニューアルバム『結縁音』、素晴らしいです。20年の軌跡とこの先の未来が同時に感じられる作品だと思いますが、みなさんの手ごたえはどうですか?

新屋行裕(Gt):正直、ほっとしました。

中村洋貴(Per):そうね。

新屋:配信シングルは出してきたんですけど、アルバムとしてまとまった作品をリリースするのはだいぶ久しぶりで。「レコーディングってどうやるんだっけ?」から始まって、少しずつ取り戻しながらやってきて。ちゃんと完成してよかったです(笑)。

前川真悟(Vo/Ba):実際に制作に入ったのは6月くらいなんですけど、構想自体はもっと前からあったんですよ。

宮平直樹(Gt):去年の終わりくらいですね。

前川:うん。そのときにトリビュートアルバム(『かりゆし58 20th TRIBUTE ALBUM -Solo-solo HA!touch-』)とオリジナルアルバムのタイトルを決めて。『結縁音』はすごく自分たちらしいタイトルだなと思ったし、それを柱にしながら、どんな内容にしようか考え始めたんです。みんなの意見を聞きながら選曲するつもりだったんですけど、案の定、なかなかリアクションがなくて(笑)。春先になって「そろそろヤバくない?」って、そこから形にしていった感じです。

新屋:制作のタイム感を掴めてなかったです(笑)。

前川:サボっていたわけではなくて、みんな、足掻いてたと思うんですよ。それぞれが果敢にデモを作っていたと思うし、それを精査してるうちに時間が経って。

ーー『結縁音』というタイトルが決まっていたのは良かったかもしれないですね。しっかり指標があったというか。

前川:そうですね。今回のアルバムは、「自分たちが音楽家として今日まで生きてこられたのは、誰のおかげだろう?」というところも見つめていて。そこに大事なものがあるというのが、共通の認識だったんですよ。自分たちはどんな人たちと出会ってきて、どこに向かおうとしているのか? を思い出しながら制作できたらなと。曲作りもそうで、自分のなかから無理矢理絞り出すのではなく、自分と誰かの間にあるものをスケッチしたり。

ーー人との縁のなかにあるものを歌にしていく。

前川:はい。20年もやっていると、ラブソングを歌うのがこっぱずかしくなったり、「夢を見よう」って無責任に言えなくなったりもするんですけど、今回は「誰かがそれを欲しているんだったら、ちゃんと歌おう」と思えたんですよね。

中村:久々にみんなでスタジオにこもって制作できたのも楽しかったですね。

前川:モノ作りしてる感じがあったよな。

新屋:3カ月くらいずっと東京にいて。

中村:子どもが七夕の短冊に「お父さんが早く帰ってきますように」って書いてたみたいです(笑)。

ーー(笑)。中村さん、新屋さんは沖縄在住ですからね。宮平さんはどうでした?

宮平:個人的には上手くいかないこともけっこうあったんですよ。提出したデモがアルバムにハマらなかったり、レコーディングでも苦戦することが多くて。メンバーにめちゃくちゃ助けられたし、バンドとしてすごくいい状態で制作できたアルバムだと思いますね。聴くたびに「このメンバーで20年やってきたから、この形になったんだな」と実感してます。

前川:それぞれの得意・不得意もわかってますからね。ヘンに背伸びすることなく、届きそうなところに手を伸ばしたり、ついてしまったクセをちょっと直したりしながら作れたのかなと。

ーーでは、収録曲について聞かせてください。まずアルバムのリード曲「5820」はメンバー全員で作詞した楽曲。まさにかりゆし58の20年が刻み込まれた楽曲だなと。

前川:「5820」というタイトルを先に決めて、「これをもとにみんなで書いてみよう」ということにして。3〜4カ月経っても全然出てこなくて、「おかしいな。酒飲んでないときに話したんだけど」って心配になりました。

新屋:結局、アルバムの曲のなかで最後にできました(笑)。

宮平:そのおかげでレコーディング中に思ったことも入れられた気がしますけどね。

前川:そうだね。いちばん最初のサビは僕が書いて、後は3人がそれぞれのパートを書いてくれて。最後のブロックはほとんど洋貴が書いているんですよ。

ーー〈夢が叶ったり/現実に引き戻されたりして/また夢を見たり〉という。これは中村さんの実感ですか?

中村:それもあるし、自分としては〈この先も変わらないだろう/この感じのまんまなんだろう〉ということを書きたかったんですよね。

前川:この曲の制作は個人的にもすごく勉強になりました。最初は集まった歌詞を自分なりに解釈して、少し書き直したりしてたんですよ。でも、スタッフの方から「もっと4人の顔が見えるような感じのほうがいいんじゃないでしょうか」と提案されて。確かにそのほうがいいなと思って、原文をなるべく崩さずにメロディを付けてみたら、4人の色が織り交ざったキャラクターが浮かび上がってきたんですよね。“かりゆし58くん”じゃないけど、バンドとしての語り部が生まれた感じがありました。

新屋:みんなの言葉がちゃんと入っているし、新しい作詞の方法を発見できたというか。

宮平:歌詞を書きながら、中学生くらいのときから振り返ってましたね。メンバーとは高校生のときに出会っていて、かりゆし58が存在する前から知ってるので。あとは家族のことだったり。

前川:直樹だけ何パターンも送ってきたんですよ。時間はかかったけど、いい曲になってよかったです。ライブのアンカー(最後の曲)は「オワリはじまり」になることが多かったんですけど、「5820」に任せてもいいのかなと。

前川 真悟

ーーアルバムに入っている「ユーモア」の制作には、「オワリはじまり」などのアレンジを手がけた久保田光太郎さんが参加しているそうですね。

新屋:そうなんですよ。光太郎さんとセッションするのは10年以上ぶりで。

前川:「ユーモア」の制作も自分たちにとって大事なことを示してくれましたね。光太郎さんは第1期のかりゆし58の柱を作ってくれた人で。洋貴がドラムからパーカッションに代わってから光太郎さんと一緒にやるのは初めてだったんですけど、「洋貴がパーカッションをつまらなく感じていないかな」と心配してくれたんです。「楽器なんか使わなくてもリズムは作れるよ」って、みんなでホームセンターに行ったんですよ。タライに砂利を敷いて音を出したり、塩ビのパイプを叩いてキックの音にしたり。

中村:塩ビのパイプの音程が曲にピッタリだったんですよ(笑)。

前川:そうやってアレンジしていくなかで、この先のかりゆし58の道が見えてきたというか。

ーー「もっと自由に遊んでいい」という気持ちになれたのかも。中村さん、「かりっかりかりか」では三線を演奏していますね。

中村:初挑戦ですね。今年の初めに三線を3人(中村、新屋、宮平)で習いに行ったんですよ。

前川:3人が三線を持って並んだときに、「絵としていちばんまとまってるのは洋貴さんですね」ってスタッフの方が言っていて。行裕と直樹は「ギタリストが三線を持ってみた」という感じなんだけど、洋貴は「三線を弾いてる沖縄のおじさんに見える」って(笑)。

中村:(笑)。三線、ハマってます。

ーー確かに似合いますよね(笑)。以前、BEGINの皆さんが「ジャズやブルースは一生懸命練習しても少しずつしか上達しなかったけど、三線はわりとすぐ弾けるようになった」とおっしゃっていて。やはり子どもの頃から親しんでる音なんだなと。

新屋:分かるような気がします。ディアマンテスのアルベルト城間さんも、三線を弾き始めたのは大人になってからだったそうですけど、「2年くらいで難しいフレーズも弾けるようになったから、君たちもできるよ」と言われました。

前川:ちょっと話が逸れるんですけど、洋貴は最近、夜釣りにハマってて。子どもたちにごはんを食べさせた後に夜釣りに行って、釣り糸を垂らしながら三線を弾いてるって、幸せの最終形態だなって思ったんですよね。

中村:外で弾くのが楽しいんですよ。家で弾いたら苦情が来ちゃうんで(笑)。

前川:「かりっかりかりか」は僕らがやらせてもらってるラジオ番組(『てれこ〜ORANGE RANGE れでぃお番長 かりゆし58のかりっかりかりか(仮)』)の名前をタイトルにさせてもらっていて。ライブで盛り上がる曲になったと思うし、アルバムのなかで大事な役割を担ってくれてますね。

中村 洋貴

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