木村拓哉、堂本光一、中島健人、髙橋海人……“ソロデビュー作”に見える決意と表現者としての姿

 King & Princeの髙橋海人が10月5日、KAITO名義で1stデジタルシングル『swim?』をリリースし、ソロ活動を開始した。新設されたYouTubeチャンネルにMVがアップされるやいなや、公開3日間で300万回再生を突破(10月8日現在)する勢いを見せている。

KAITO「swim?」Music Video

 これまでもグループの一員として親しまれてきたアーティストが、ソロ活動をスタートさせる場面がいくつもあった。自分の名前で作品を届ける、その第一作にどんな顔を選ぶのか。ソロデビューを飾る楽曲には、それぞれの制作への姿勢が表れる。そこで、今回は髙橋に加え、鮮やかなスタートとして印象に残っている堂本光一、木村拓哉、中島健人のソロデビュー曲を通して、グループで培ってきたものと、ひとりの表現者として差し出した新たな顔を振り返ってみたい。

髙橋海人、仲間と解き放つ自由な感性

 これほどの才能の持ち主だったのかと、あらためてその底知れぬクリエイティビティにおののいたデビュー曲「swim?」。作詞作曲はもとより、アートワーク、MVと、全てのクリエイティブに本人が携わっているという。これまでも歌に、ダンスに、演技に、アート、漫画と、さまざまな形で表現してきた彼が唯一無二のクリエイターであることは、十分知っていたつもりだった。だが、その認識をも大きく上回る楽曲だと認めざるを得ない。

 中毒性のあるサウンド、普段のふんわりとした話し方からは想像もつかないグルーヴィーな歌声。どの瞬間を切り取っても痺れるようなダンス。それを可能にしている体幹の強さ。でも、どこか「おいおい!」とツッコミたくなるようなユーモアのある世界観。MVのラストは、体内から輝く大量のカニを放出しながら倒れこむKAITOの姿が映し出されるが、むしろノックダウンさせられたのは彼のセンスに打ちのめされた視聴者だと言いたくなる。

 10月4日のYouTube配信では、MV公開に向けて自身の思いを語っていたKAITO(※1)。作曲には彼にとって音楽制作を教えてくれた人でもあるトラックメイカーのUTA、振り付けには小さいころからの友人であるダンサーのKAITAが集結。メガホンを握ったのは、これまでKing & Princeの「HEART」「Theater」「So Honey」をともに作り上げてきた大知裕介監督だ。大好きな人と楽しく、そして熱く制作に取り組めたことを、「最強の陣営で作れた」と振り返った。

髙橋海人KAITOソロシングルリリース直前生配信

 そんな気心知れた大知監督から見たKAITOを表すキーワードは「自由さ、遊び、ふざけ、そしてちょっとした狂気」だったそう。その言葉を聞いてもう一度MVを観返すと、「まさにそう」と膝を打ちたくなった。作品を作るほど、よりリッチなものを目指そうと毎回ハードルが上がっていく。それは、もはやクリエイターとしての“狂気”とも呼べるかもしれない。けれど、そうして自ら上げたハードルを越えていく感覚を「いい感じ」と語り、笑顔を見せる彼がまた頼もしいのだ。

堂本光一、自作曲で誘う心の奥

 堂本が両A面シングル『Deep in your heart / +MILLION but -LOVE』をリリースしたのは、2006年7月のこと。ただし、堂本のソロアーティストとしての歩みは、それ以前から始まっていた。2004年には初のソロツアーを開催し、2006年1月には舞台『Endless SHOCK』のサウンドトラックも発売している。そうして舞台やライブで積み重ねてきた表現が、自作曲によるデビューシングルとして形になった。特に「Deep in your heart」は、すでに歩みを進めていたソロアーティスト・堂本光一のひとつの節目を刻む楽曲とも言える。

 

 同曲は、堂本が主人公・トールの青年期を演じたアニメ『獣王星』(フジテレビ系)の主題歌でもある。声優に初挑戦しながら、自作曲でのソロデビューを果たす。声で人物を演じ、音楽で物語を彩る。歌い手であり、作り手でもある堂本の顔が重なった。歌詞に描かれるのは、相手の心の奥に触れたいという欲求だ。誰にも見せていない部分を知りたい、けれど壊さずに近づきたい。その距離を探る言葉からは、手を伸ばすような切実さを感じる。そこに、作り込まれたサウンドと、歌の世界観を体現するパフォーマンスが重なる。その全てが、ひとつのショーとして成り立つのだ。

 見せる側であり、作る側でもある堂本の表現に触れると、どこまで彼の描く世界に入り込み、同じように感じられているのか、心の奥まで問いかけられるような感覚になる。見せられたものを楽しむうちに、自分の心の動きまで見つめたくなる。そんな奥行きに惹き込まれる1曲だ。

木村拓哉、スターの風格と誰かと進む力

 木村がソロアルバム『Go with the Flow』をリリースしたのは2020年1月だった。SMAPというあらゆる前例を塗り替えてきたグループがその歩みに区切りをつけ、木村は自分自身で新たな流れを作り出した。それこそ、新たな伝説の始まりともなる一歩。そのプレッシャーたるや計り知れない。

 国民的スターの次の一歩が注目されているなか、木村は収録曲「One and Only」MVで、編集なしのワンカット撮影に挑んだ。舞台は、架空のライブ会場。それは、初のソロライブツアーを控えているタイミングでのことだった。どんなステージを見せてくれるのか。実際のライブ会場に足を運べない人にも、その空気感を届けてくれるような温かさを感じた。

「One and Only」Music Video

 そして、「One and Only」の作詞を手掛けたのはB'zの稲葉浩志だ。木村自身がラジオで明かしたところによると「ダメもとで稲葉さんとかどうかな?」と提案したという(※2)。そんな歌が生まれるまでの物語も含めて、エンターテインメントになる。木村が動くと舞台裏までスポットライトが当たっていくのだ。どこにいても、何をしても、スーパースター。楽屋からスタートするMVを観ていても、それを痛感する。時代が移ろい、さまざまな期待を向けられるなかでも、ステージに立つ姿にはその風格が滲んでいた。孤高にも見えるスターが〈僕は独りじゃない きっとそうだ〉と歌い、〈そしてまた Here I go〉と続ける。その姿に、こちらまで背中を押されるような気持ちになる。

中島健人、自分の言葉でまだ見ぬ自分へ

 中島の「ピカレスク」も、これまでにない顔を見せた楽曲として大きな注目を集めた1曲だ。2024年12月発売のソロデビューアルバム『N / bias』のリード曲として、同年10月に先行配信された「ピカレスク」。Sexy Zoneを卒業し、音楽ユニット・GEMNやHITOGOTO名義での活動を経て届けた、自らの言葉で綴った作品だった。

 そのMVには、「こんな一面もあったのか」といい意味でイメージを裏切る、ダークな世界が広がる。この曲に、「自分の本当の気持ち、自分の奥底にある真実みたいなものをわかってほしい」という気持ちを込めたと語っていた中島(※3)。何かを選び、進もうとするとき、見る人によって評価は分かれる。誰かにとっての正義が、別の誰かには悪と映ることもある。その揺らぎを引き受けながら、自分の道を進んでいく。「ピカレスク」というタイトルには、そんな葛藤が重なるのだ。

中島健人「ピカレスク」Music Video

 ただ、そこには大切な人を守りたいという想いも込められているのが、圧倒的にアイドルである中島らしさ。怒りや悲しみを表現することと、応援してくれる人へ気持ちを向けること。その両方があるから、ダークな姿にも、これまで見てきた中島とのつながりを感じるのだ。

 MVでは、〈これは アクマでも序章〉と歌う場面で、さまざまな衣装に身を包んだ中島の姿が映し出され、その歩き方や佇まいまでいつもの彼とは違って見える。長く親しんできたイメージがあるからこそ、まだ知らない中島健人がいるのだと強く印象づけられた。その先へ進む姿がますます楽しみになる。こちらの予想を超えながら、自分の言葉で新たな物語を切り拓く。そこには中島の、ソロアーティストとしての“正義”が刻まれているようだった。

 ソロデビューを飾る楽曲には、それまでの歩みと、これから何を表現したいのかという意志が、ともに息づいている。その出発点に触れると、こちらの心にも、何かを始めたくなる熱が残る。聴き手にとっても、新たな一歩を踏み出すきっかけの1曲になるかもしれない。

※1:https://www.youtube.com/watch?v=JsIu4ZgJHtw
※2:https://www.tfm.co.jp/flow/archive/53811
※3:https://www.tfm.co.jp/darehana/report/34483

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