『SCHOOL OF LOCK!』が癒した震災の傷跡 プッシュプルポット 山口大貴×グランジ 遠山大輔、“ひとり”に届ける責任と決意

 9月30日に5枚目となるミニアルバム『願いの花束』をリリースするプッシュプルポット。石川県金沢市を拠点に活動する4ピースバンドのボーカル・山口大貴は岩手県出身で、東日本大震災での実体験を元に書かれた「13歳の夜」は、2019年リリースの楽曲でありながら今なお聴かれ続けている。

プッシュプルポット-「13歳の夜」Music Video

 山口が13歳・中2になった頃に何気なく出会ってしまったというラジオ、齧り付くように聴いたという番組が『SCHOOL OF LOCK!』(TOKYO FM)。その当時“とーやま校長”として声を届けていたのはお笑いトリオ・グランジの遠山大輔。そんな2人の初顔合わせが実現した。ラジオのパーソナリティ・リスナーという立場で出会いの場となる『SCHOOL OF LOCK!』がオンエアされているTOKYO FMのスタジオで、緊張が拭えない山口の話に耳を傾け優しく語りかける遠山。一対一で対峙するラジオのようだった時間をここに再現する。(高橋ちえ)

東日本大震災、明日への活力になった『SCHOOL OF LOCK!』

遠山大輔(以下、遠山):面と向かってお話しをさせてもらうのは初めてだけど、会ってる気が勝手にするのはラジオを通じて(楽曲を)聴いてるからかな? ちゃんとお会いできて嬉しいです、今日はよろしくお願いします。

山口大貴(以下、山口):僕は『SCHOOL OF LOCK!』(以下、『SOL』)をたくさん聴いてきたから、声を聞いてやっぱり本物だ!って俺、メッチャ緊張してます。汗が……(笑)。

遠山:今日はもう、思ったままを喋っていただけたら。

山口:僕は『SOL』との出会いって何気なくて。岩手出身で東日本大震災(2011)を経験してるんですけど、テレビも見られないから情報を求めるためにラジオを流してたらたまたま『SOL』が流れてきて。今の自分に語りかけてくれる、自分だけに言ってくれてる感じがすごくして。学校が再開しても部活が終わって毎日22時になったら、ちゃんと勉強してるふりをしながら(笑)、イヤホンしてラジオを聴いて。(勉強の)ノートは全然進んでないけど、明日からも頑張れる、明日への活力になってくれた、そんなラジオでした。

遠山:大貴くんが聴き始めたタイミングって(震災があった)2011年の春だから、とーやま校長・やしろ教頭の時で俺はまだ1年目で。そう言ってくれて嬉しい反面、最初の1~2年は校長として全く何もできてなくて。

山口:そうなんですか?

遠山:ちゃんと届けられているのか自信がない時期で毎日ヘコみまくってて。それでも校長先生だから声を届け続けないと、ってやってた時期。だから俺からすると、大丈夫だった?って聞きたい。

山口:僕からしたら大丈夫も何も、心を動かされてますから。

遠山:どういう風に心が動かされたのかな?

山口:僕は番組にメッセージを飛ばしたことは一度もなかったけれど、マジで『SOL』から音楽を聴き出したので。音楽なんて誰もやってないし家族も音楽を全く通っていないけど、『SOL』があったから音楽カッケー、バンドやってみてーな、じゃあ自分も!って。中学校の時に僕は生徒会長をやってたんですけど。

遠山:生徒会長!? 話は一瞬、いや相当逸れるけど、このルックスで生徒会長だとモテたでしょ?

山口:読書感想文コンクールとかで賞を獲ったり陸上の選手に選ばれたり、中学校の時が確かに一番モテ期でした(笑)。僕が生徒会長で副会長にも『SOL』を紹介して、会えばお互いに「昨日のラジオはこうだったね」って喋ったり、その子のお父さんがギターをやってたので「高校に行ったらバンド組もうぜ」って話して、高校に入ってから一緒にバンドをやってましたね。

プッシュプルポット 山口大貴
グランジ 遠山大輔

遠山:『SOL』で聴いたとか、メッチャ覚えてるなっていう曲とかはある?

山口:andropの「Bright Siren」(2011)っていう曲がすごいキャッチーでカッコいいなと思ってたら、従兄弟も『SOL』を聴いてて。そんなに喋る仲でもなかったんですけど、andropというバンドひとつで繋がれて話が弾んだりもしましたね。

遠山:androp先生としても来校していたし『閃光ライオット』(後述)のゲストアーティストで来てくれたこともあったからね。大貴くんが聞いていた頃のレギュラー講師陣だと……?

山口:(小声で)『ガッキーLOCKS!』が大好きでしたね。「好きな女性は?」って聞かれたら、ガッキー(新垣結衣)ってずっと言ってましたもん。

遠山:『ガッキーLOCKS!』ね、“女子クラス”(『GIRLS LOCKS!』)はやっぱ色めきだっちゃうよね(笑)! ラジオの中の学校はレギュラー講師陣たちもすごくてとにかくキラキラしてて。鬱屈とした10代を俺も札幌で過ごしてて、何もうまくできないし自信もないし勇気もない、みたいな。そんな時の夜10時にこの周波数に合わせれば少なくとも何だかすごく楽しそうで、本当に光って見えただろうなってすごく思うよ。

山口:『SOL』は、本当に青春ですね。

遠山:僕はね、全然ダメで劣等感がすごかった、でもだからこそ『SOL』をやれたって今は思ってるの。俺も運動神経はそこそこあって野球はピッチャーでエース、鳴り物入りでシニアリーグに入るんだけど中学でどんどんみんなに追い越されて、プライドもへし折られて人生初の挫折。そこから中学、高校生活はまぁ楽しくはやっていたけども、どうせ俺なんてっていうのがずっとへばりついてて。

山口:そうだったんですか……。

遠山:あの時から30年以上経った47歳の今でもそれはある。だから俺も、お笑いと音楽とラジオに助けられてるって言うか、(出演側として)勝手に元気を出してるって感じ。

山口:僕も生徒会長とかをやってましたけど、何だろう……夜中とかになると自信がなくなる感じというか。「俺なんて」みたいな感じは思ってたし、何かこう、満足しきらない気持ちは常に抱えてて。でも人前では明るく振る舞って何でも引き受けがちみたいなところもあるし、俺って何なんだろうってモヤモヤしてる、みたいな感覚はずっと持ってましたね。

遠山:それは今でもある?

山口:音楽を始めてからは自分自身を解放できるようになったから少しは楽になったけど。それでも落ち込んだり、ひとり孤独を感じる日はありますね。

遠山:でもそれが、今のプッシュプルポットの音楽を作る大きな原動力であったりする?

山口:そうですね、人前で笑ってキラキラ接する人の方が1人になったら落ち込んだりする。それって多分あると思うし、その気持ちがわかるからこそ音楽を生み出しているのかなと思ったりはしますね。

関連記事