ゆとりくん「他者の評価が自分の幸せに結びつくわけじゃなかった」 今見つけた光の当て方、『ミラーボールを消して』

世間の目に映る“ゆとりくん”と本来の姿、本当の自分を探し求めた先にあった答え

――4曲目「feel real me」は、成功者として見られる自分の奥にある“本当の自分”を探し求める内省的な曲ですね。

ゆとりくん:EPのなかではいちばん最初に作りました。当時は本当に落ち込んでるというか「世間から見られている“ゆとりくん”と、本来の自分とのバランスを取るのが難しいな……」と、ワケがわからなくなっていた時期だったんですよ。去年の春から発信活動を本格的に始めて、「なんとか爪跡を残さなきゃ」みたいなモードになっちゃってて。躁鬱で言うと躁すぎた。ぶっ飛ばしながら活動してる感じで、その反動が去年の秋ぐらいにきました。なんかね、“ゆとりくん”をやることで縛られてるんじゃないか? と思っちゃったんですよね。年末に休みをが取って、アメリカのセドナに行ったことでバランスが取れるようになったんですけど、行く直前はいちばん落ちていたんですよ。本当に鬱でしたね。

――その光と影は〈光の中じゃ隠れるreal me〉〈眩しすぎる俺の毎日/一人きり暗い部屋がFLEXIN〉などのフレーズにも表れていますね。アーティストにインタビューをすると、「鬱を乗り越えたから当時の暗い心境を曲にできた」と言う人が多いんですけど、ゆとりくんはその渦中に書いていた?

ゆとりくん:渦中でしたね。

――どんな心持ちだったんですか?

ゆとりくん:きっと、自分を俯瞰したかったんですよね。歌詞ができて「これはいいな」と思ってる時点で、多少は鬱を離脱してるっていうか。作品になったら何でもそうだと思うんですけど、結局は会議室でどれだけロジカルに懸念点とか不安点を言葉で考えても、写真とか服とか曲一発で全部の問題を越えられることは往々にしてある。内省的に考えるとどん詰まるけど「曲としてかっこよくなっていればよくない?」と。そういう軽さも同時にあったんだと思います。「むしろ、こんなに暗くなることはないから逆においしいじゃん」とすら、心の奥底では考えていましたね(笑)。

――冒頭の「どこに光を当てるか」という話とも共通しますね。「turn go」「PARADOX」「feel real me」はその視点が活かされている気がする。

ゆとりくん:あー、面白い! たしかにそうですね。この3曲は同じ時期に作っていますし、『ミラーボールを消して』というタイトルも含めて、その意識は自然と働いていたのかもしれないです。

かわいいへの自意識「これがいちばんリアルな俺じゃん」

ゆとりくん「バブりたい」Music Video

――ラストを飾るのはダンスナンバーの「バブりたい」。まず、このワードはどのようにして生まれたんですか?

ゆとりくん:ある日、猥談系YouTuberの佐伯ポインティと、占い師の子と3人で食事をしていて。占い師の子が「算命学的にかっこいいと思われたほうが運気が上がる人と、かわいいと思われたほうが運気が上がる人がいる」と教えてくれたんです。その子曰く、僕は「かわいい」と思われたほうが物事がうまくいくタイプらしくて。振り返ってみると、大学4年生の時に「かたぴー」と初めてあだ名をつけられまして。「片石」よりも「かたぴー」と呼ぶ人の方が、僕の欠点に寛容なことに気づいたんですよ。そもそも片石って、イヤなヤツっぽいじゃないですか。

――いやいや! そんなことはないですよ(笑)。

ゆとりくん:響き的に「片石」って頭はよさそうだけどクセも強そう。でも、「かたぴー」は全然印象が違うじゃないですか。

――たしかに、一気に柔らかい印象になりますね。

ゆとりくん:日本人は「かわいい」って感情を大事にしてる気がしてて。ゆとりくんもネーミング的にかわいいし、あらためて「かわいい」って思われたほうがいいなと思って、その日に作ったのが「バブりたい」ですね。僕、バブって生きていきたいんです。バズりたいよりバブりたいし、かっこいいよりもかわいがられたい――「これがいちばんリアルな俺じゃん」と思って、2、3時間でバーって曲を作りました。

――鬱から抜け出す糸口が見つかったと。

ゆとりくん:まさに、この曲は最後に作ったんですよ。年末のちょうど鬱々としてる時期に、元レぺゼン(Repezen Foxx)のWAKIと知り合って。WAKIが紹介してくれたチバニャンにアレンジをしてもらいました。コミカルでキャッチーな歌なんですけど、世間的な批判性も織り込まれていて。今、バズることってめちゃくちゃ簡単になってるじゃないですか。相手の感情を刹那的に刺激すればいいんですよ。フォロー/フォロワーだけのタイムラインだった時って、あくまでファンダムのなかでどう響くかと、それがどう拡散していくかだったけど、おすすめ表示が中心になってからは“ドパガキ”専用のタイムラインになってしまったんです。ドーパミンはどういう時に出るかと言うと、たとえばカップラーメンに虫が入ってる写真をポストしたら、それだけで簡単にバズるじゃないですか。

――要は、その瞬間の刺激的な内容をポストすればいい。

ゆとりくん:そうです。だから、手段を問わなければ、バズることって意外と簡単。これまではバズって有名になって、やりたいことができたかもしれないけど、今はそういう世のなかじゃない。バズが飽和しすぎてる。「昨日の正義はもうダサい」と一緒で、タイムラインも移ろいゆくものなんです。第三者の瞬間的な承認よりも、自分にダメなとこがあっても、お母さんとお父さんでもいいかもしれないし、彼氏と彼女とか旦那さん奥さんでもいいし、親友でもいいし、「お前は本当にダメだよな。どうしようもない人間だよ」と言いながら付き合ってくれる“誰か”がいる。そっちの価値がめちゃくちゃ上がってるし、それをみんな求めてるから、“あなたと私の関係性”においては社会性って必要ない。ふたりの規範ってあるじゃないですか。それが社会から逸脱していても、誰かを傷つけることでなければ別に豊かじゃない?と。そういう人をみんな欲してるし、そういうあなたと私の関係性を作りたい。だけど、どうしても社会的な何かが自分のなかでちらついちゃう。この葛藤が今の現代人が抱えてる病気だと思ってて。「そんな世のなかだからこそ踊ろうよ」って曲ですね。

――最近「おいしいご飯を作れる人、笑いをとって笑顔を作れる人は、幸せを作れる人。」とポストされていましたけど、本当に豊かなことって数字や社会的な地位よりも、もっと身近にあるってことですよね。

ゆとりくん:小難しく幸せとか幸福論を語るのも僕は好きだし楽しいんですけど、ご飯を食べるって気持ちいいじゃないですか。「おいしい!」って気持ちよさは当たり前に幸せなこと。普通に笑った回数が多ければ、その日はいい日だったと言えるわけで。幸せって案外その程度のものでもあって、もっと近くに転がっている気がするんですよね。

――歌詞の話を中心にお聞きしましたが、サウンド面も面白いですよね。「fashion」はヴィンテージロック、「turn go」はレゲエ、「PARADOX」はディスコ、「feel real me」はルーツミュージック、「バブりたい」はシティポップなど、いろんなジャンルを横断しています。

ゆとりくん:まさに! 音像は70年代、80年代ぐらいがコンセプトとしてあって。「fashion」はもろにそうですよね。

――今作はどんな一枚になりましたか?

ゆとりくん:めちゃくちゃ納得してます。どの曲にも自分の価値観や経験が反映されているし、楽曲的にもすごくこだわっていて。それぞれ音像のアプローチは違うけど、「ゆとりくんがやるなら違和感がないな」と思ってもらえるジャンルレスな作品になったと思います。「feel real me」のデモができたのは去年10月で、完成まで8カ月ぐらいかかったんです。ここまで長いタイム感で物作りをしたのが初めてなので、みんながこれを聴いてどう思うのか知りたいですね。感想はポジでもネガでもどっちでもよくて、その人が思い浮かぶ分量が多かったら嬉しいです。

■リリース情報
2nd EP『ミラーボールを消して』
配信中

配信URL:https://linkco.re/HzuTBYYd

<収録曲>
01. fashion
02. turn go (feat. YOSHIKI EZAKI)
03. PARADOX (feat. KOHEI, Sora)
04. feel real me
05. バブりたい

■公演情報
『ゆとりくん本気の独演(奏)会』
7月18日(土)代官山UNIT
OPEN 16:00/START 17:00

<チケット>一般発売中(チケットぴあローチケイープラス
・前売VIPスタンディング 7,777円(税込/ドリンク代別/最前エリア/特典付き)
・前売スタンディング 4,500円(税込/ドリンク代別)
※未就学児入場不可
※問い合わせ:ディスクガレージ(https://info.diskgarage.com/)

ゆとりくん アーティストページ:https://cloud9pro.co.jp/artist/profile/yutorikun/
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