JYOCHOが語る、バンドを続けるという“奇跡の瞬間” 9年間の歩みと現体制ラストアルバム『忘れたくないこと』
ライブへの意識、シンプルな演奏――変わったことと変わらないこと
一一個々のパートを覚えるだけでも大変だと思います。曲が完全にバンドのモノになるまで、どれくらい時間がかかります?
だいじろー:そこはシステム化されていて。レコーディングが終わったら、それぞれの個人トラックはオーディオデータで手配するんです。それをもとにまず完璧に個人練を行う。「とにかく個人練をしましょう」っていう意思疎通は常にしていて、そのあとにスタジオに入る。そのやり方でみんなコツは掴んできて、最近はスタジオで合わせても果てしないゴールではないですね。
山﨑:そうね、出口の見えないトンネルではない。
だいじろー:前は「ん? これって出口か?」みたいなこともあったりしたけど。最近は新曲も1回目から合うようになって。
山﨑:みんなも「だいじろーがこのフレーズ持ってくるっていうことは、こういうノリでやってほしいんだろうな」みたいな。僕は入って3年ですけど、最初はそこの擦り合わせがやっぱり難しくて。でも最近は「こうだろうな」「そうだよね」っていう時間がどんどん短くなっていますね。
一一その話と関係があるのか、今回のアルバム、バンドっぽさが強まっている気がします。
だいじろー:言われてみたらそうかもしれないですね。けっこうライブを想定しながら曲を作り始めているというか。もっとライブの良さを出していきたい。それぞれのパーソナリティとか演奏面、それぞれがすごいことをしているのを見せていきたいし。
一一複雑なことをやりたい、誰もやらないことをやりたいエゴって、若い頃はわりとよくあると思うんです。ただ、次第に「やっぱりシンプルなほうが伝わるよね」って変わっていく人が多い。
だいじろー:ああ、そうですよね。
一一JYOCHOがそうならないのは素晴らしいなと思いますよ。相変わらず聴いたことのないような演奏が続く。
だいじろー:その原因もわかっていて。複雑さを狙っているわけではないんです。ほんまにこれが好きで、ナチュラルにやっている。
一一このタッピングも「どうだ、俺すごいだろ」ってことではない?
だいじろー:ない。……あ、でもちょっとある(笑)。ちょっとはあるんですけど、曲作りのときは「ここにコレ来たらヤバいやん」みたいな目線のほうが強くて。それに加えて今、ライブを意識することが多くなった感じですね。お客さんがアガってくれるとか、こういうことをしたら心が繋がってくれるだろう、みたいな。だからわかりやすくはなっていると思います。
猫田:前よりもロックっぽくなってきてる。
だいじろー:うん。
猫田:前はアコギで作る牧歌的な曲が多かったけど、今回「無常の合唱」「惜春」、あと「山川草木」とか、けっこう強強な感じで。
一一「山川草木」、最高でした。それぞれのパートはテクニカルだけど、ただ、難しさよりも曲の勢いのほうが勝っている。
猫田:これ、昨日のライブ(『吉祥寺ワープ presents「SMALL LAKE!!」』)で初めてやったんですよ。まだ音源も世に出ていないし、昨日のお客さんがいちばん最初に生で聴いたんですけど、初めて聴く曲なのにノッてくれていて。そういうの、いいなぁと思います。
だいじろー:基本的には好きなことをやり続けてますけど、お客さんが喜んでくれるのも自分のなかでは好きなことじゃないですか。なので、そこは整合性が取れていますね。
一一はやしさん、山﨑さんはいかがですか?
はやし:さっきおっしゃっていた、「昔も今も複雑なまま、新しい音楽をやっている」っていうのは変わらないと思うんです。ただ、演奏している自分の感覚で言えば、確かにシンプルになってきた印象はあって。ノリにくい変拍子が減っている。いろんな人に伝わりやすい曲が増えているのかなって。
山﨑:うん。あと、これ言ったら頭おかしいだろうと思われそうですけど、ドラム、“難しい”って表現じゃない気がしますね。感情を乗せるって考えると、的確なところに音が全部入っているから、覚えることも別に難しくないんです。
一一人間の生理に反していない、という意味ですか?
山﨑:そういうことです。だから練習していて「次の展開なんだっけ?」ってなったことは1回もなくて。もちろん複雑な表現ではあるんです。テクニカルだったり、拍子が4/4ではなかったり。ただ、そのなかでも「次にこう行きます」っていうのがわかりやすく整理されている。僕はリスナーだった期間が長いんで、ずっと緊張と緩和の使い分けが上手いなと思ってた。聴いたことがなくても、スッと耳に入ってくるメロディラインがあったり。そのバランス感覚が非常に優れてるなと思っていて。だいじろーの芯の部分はずっと変わっていないですね。
一一曲を書くとき、不自然にならないように、という意識はあるんですか。
だいじろー:その意識はないかもしれない。自然、不自然って……。
山﨑:何をもってそう言うのか、っていう話でもあるしね。
だいじろー:そう。不自然が悪いとか、自然だからいいとも思わなくて。何かの逆張りをしているつもりもないし。わりと「ええやん」で終わる。その「ええやん」のチョイスが社会的には不自然かもしれないけど、自分のなかには明確な判断基準があって。「ええやん」やったらOK。
山﨑:自分にとって適切であるかどうか、みたいなところでしょうね。コードトーンが不協だったとして、音楽理論上は不自然なんだけど、だいじろーがここで表現したいものって意味ではそのコードが適切だったり。