JYOCHOが語る、バンドを続けるという“奇跡の瞬間” 9年間の歩みと現体制ラストアルバム『忘れたくないこと』

 技巧派プログレ集団と呼ぶのも間違いではないが、汗をかきながら、実に楽しそうに、とんでもない演奏を続けているロックバンド、と言ったほうがいいだろう。ギタリスト・だいじろーのソロユニットとして始動したのは約10年前だが、長らくライブ活動を続け、現場での一体感が強まることで、ニューアルバム『忘れたくないこと』は過去最高にダイナミックな仕上がりとなった。楽曲は複雑怪奇なのに鮮烈、耳と体にスッと入ってくるものばかり。世界各国にリスナーが増えていったのも当然の結果である。リリース後に決まっているワンマン公演は2本。そのあとにはボーカル/キーボード奏者の卒業とライブ活動の無期限休止が発表されているが、今メンバーは何を思うのか。JYOCHOの4人に話を聞いた。(石井恵梨子)

海外にまで届いた「今まで聴いたことのない音楽」

一一6年前の取材、だいじろーさんの「JYOCHOが好きな人って世界中にいっぱい潜在している」(※1)という発言で終わっているんです。まさに事実となりました。

だいじろー:そうですね。活動を進めていくにつれて、海外のお客さんの声も届くようになって。年々増えているのを実感しています。特に狙ったわけではないけど、海外のお客さんとJYOCHOの親和性が高かったのかなって。

猫田ねたこ(以下、猫田):「スゴカワ」(「sugoi kawaii JYOCHO」)とかね、海外からのコメントがいちばん多いMVだった気がする。

JYOCHO - sugoi kawaii JYOCHO (Official Music Video)

一一インストは特に世界に広がりやすい。とはいえJYOCHOは日本語の歌ものでもあって。どんなふうに面白がられているんだと思いますか。

だいじろー:よく言われるのが「聴いたことのない音楽」っていう。それが海外の人にとっては日本っぽさだと思われていたり。今まで体感したことのないエモーショナルな部分を、日本、JYOCHOというフィルターを通して感じているんだと思います。

猫田:言葉がわからないと没頭するのが難しい音楽もあると思うんですけど、JYOCHOは歌詞がわからなくても抽象的に楽しめるというか。「スゴカワ」とかほんとバチバチにテクニカルな演奏なので、「馬乗りになってボコボコにされてる気分」ってコメントが来たり(笑)。普段、音楽に対して使わないような感情を抱いてくれるんだなって思いますね。

はやしゆうき(以下、はやし):私はJYOCHOをやる前からだいじろーを知っていますけど、初めて出会ったときにも「今まで聴いたことのない音楽」って思ったし。バンドに入って自分でフルートを吹いていても、ほかではまずやらない音の並びが多いんですよ。そういうところが新鮮味になって、いろんな国の人に刺さるのかなって印象があります。

一一ドラムの山﨑さんが加入するのは2023年ですけど、JYOCHOについてはどんな印象を持ってました?

山﨑浩二朗(以下、山﨑):だいじろーとはJYOCHO以前から付き合いがあって。

だいじろー:僕が前のバンド(宇宙コンビニ)を組んでいたときに、サポートを頼んだんですよ。

山﨑:当時やっていたバンドの映像を、たまたまネットでチェックしてくれたらしく。「こういうバンドをやっています。今ドラムがいなくて、サポートしてもらえませんか」って熱い長文が送られてきた。聴いてみたら僕もびっくりして。それで一緒に音を出したのが……15年くらい前?

だいじろー:15年前ですね。

山﨑:そのあと、バンドには熱意を持った正式なドラマーが入って、僕は離れるんですけど。でも音源が出るたびにお互いやりとりをしていて、だいじろーの音楽はリリースされるたびに聴いていたんです。

猫田ねたこ

一一15年経って、オーディションを受けようと思った理由は何でした?

山﨑:そもそも彼の前身バンドのサポートをやっていたときに、「ほんとにこの人は曲がいいな」と思ったんですよ。でも当時の生活とか自分の夢を考えたときに、僕は「一緒にやらない」って選択をしたんですね。ただ、曲を聴くたび「やっといたらよかったな!」みたいな思いはずっとあって。3年前、JYOCHOがドラマーオーディションをやっていることをたまたま音楽仲間から聞いて、タイミング的にも直感的にも「あ、今なんやろうな」って。それで応募しました。「昔からの付き合いがあるから話が早い」っていうんじゃなくて。

一一バンド側も公正に選んだ結果ですか。

だいじろー:そうです。まさかオーディションに来るとは思っていなくて。僕、京都の嵐山でカフェを経営しているんですけど、彼は今東京に住んでいて。「今いる?」みたいな感じで突然来て「叩いたやつ、オーディションに出しといた。2曲ともフルで叩いたわ!」って。応募はワンコーラスだけでよかったんですけど(笑)。

山﨑:フルコーラスで叩いたのは、もちろん気合いが入っていたのもあるけど、ちゃんと(募集要項の)文章を読んでなかったからで(笑)。見落としてた。

だいじろー:でもその演奏動画は素晴らしかった。あと、ほかにも合わせてみたいドラムの方がいたんで、最終審査はメンバーと事務所の人間みんなで投票制にして。それで勝ち上がってきた感じです。

一一今の話でちょっと気になったんですけど、関西と関東、それぞれ住む場所が違うのはバンドのデメリットにならないですか。

だいじろー:えっと……バンドのデメリットです。

山﨑:大デメリットですね(笑)。

だいじろー:住む場所が違うと全員のスケジュールを合わせるのがけっこう大変なんですよ。

一一思いついてすぐスタジオに入るとか、不可能ですよね。

だいじろー:そうです。それが厳しい。移動と宿泊、1回スタジオに入るだけでもお金がどんどん飛んでいくので。

山﨑:だからNo Big(Deal Records)にはほんと感謝しかないです。それでゴーを出していただけるのはかなり恵まれていると思う。

だいじろー:ライブ当日も、始発で東京に行ってスタジオに入ってリハをする、みたいなことがよくありますし。

山﨑:この曲の難易度だからね。

だいじろー

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