おいしくるメロンパンが“花”をモチーフにし続ける理由とは ナカシマ、覚悟と変化の新曲「ツツジの枯れる頃には」を語る

 おいしくるメロンパンが、4月15日にデジタルシングル「ツツジの枯れる頃には」をリリースした。バンドは過去にも“花”をモチーフにした楽曲を多数制作しており、同作はその最新版と言える。

 なぜおいしくるメロンパンは花にこだわり続け、そこにどんな想いを込めているのか。リアルサウンドでは、その真意に迫るべく全楽曲の作詞/作曲を務めるであるナカシマ(Vo/Gt)にインタビュー。歴代の花ソングを振り返りながら、なぜ花に魅力を感じるのか、そして新曲「ツツジの枯れる頃には」で到達した変化まで語ってもらった。(編集部)

「僕にとって花の曲は、セーブポイントみたいなもの」

――おいしくるメロンパンは、ほぼ全てのミニアルバムに“花”にまつわる曲を収録していて。唯一入っていない10th mini albumのタイトルが『bouquet』である点も含めて、とても美しいなと思いました。

ナカシマ:ありがとうございます。自分のなかのフォーマットとして、毎ミニアルバムに1曲は花の曲を入れると決めていて。『bouquet』はアルバムのタイトルと重複しちゃうから、意図的に入れませんでした。僕にとって花の曲は、セーブポイントみたいなもので。花の曲を聴き返すと、その曲を書いていた頃にやっていたことや当時の気持ちをなんとなく思い出せる。もともと、作品がどんどん連なっていくなかで、あとから聴き返した時に楽しめそうだなと思って始めたことだったんですけど、実際聴き返すと、なんだか安心感がありますね。花ってたくさんあるので、「次はどんな花の曲ができるのかな?」と自分でも楽しみながら作っています。僕は花が好きなので、アルバムに入れる前提で考えなくても、自ずと花の曲ができるんです。

――いつ頃から好きなんですか?

ナカシマ:中学生の頃から、花というか植物が好きで。家の近くのホームセンターに、種や苗がたくさん売っていたので、そこで買ったものをよく育てていました。今も観葉植物とか育てています。東京に出てきて一人暮らしをするようになってからは、より自由に、いろいろなものを育てられるようになって楽しいですね。今は12株くらい、いろいろな植物を育てています。

ナカシマ(Vo/Gt)

――ということは、「部屋のアクセントに」というレベルではなく、植物に囲まれながら暮らしている感じですか?

ナカシマ:そうですね。部屋もそんなに広くないし、窓のないところに置くと枯れちゃうから、置く場所も考えなくちゃいけなくて。だから植物用のライトを買って光を与えたりとか、試行錯誤しながらなんとかやってます。本当はもっとジャングルみたいにしたいので、いずれ広いところに引っ越したいですね。最近、ハンギングという植物を上から吊るしたり壁に掛けたりする手法にハマっているんです。ツタ科の植物とか、下にどんどん伸びていくものに適していて。

――なるほど。

ナカシマ:下に置くだけだともう場所が足りないから、吊るす方向で考え始めたら、もっと増やせるなと(笑)。植物って道端で見かける分には「あるな」と思うだけの存在だけど、自分で育てていると「めっちゃ生き物だな」とちゃんと感じられて。ともに暮らしている感じがけっこう好きですね。寝る前とか朝起きたときに霧吹きをするんですけど、成長が早いので毎日どんどん変わっていくんですよ。春や夏は「また新芽が出てるな」とか。

 ソフォラっていう、“メルヘンの木”と呼ばれる植物があるんですよ。枝がジグザグに生えていて、ちっちゃい葉っぱがプチプチッとついていて、本当におとぎ話に出てきそうな木。育てるのが難しいらしいんですけど、いろいろ頑張っていたら、めちゃめちゃ成長して、かなりデカくなっちゃって。あのときのことはすごく記憶に残っています。

峯岸翔雪(Ba)

――そういう成長を見るのが楽しいと。

ナカシマ:あとは、鉢との組み合わせ次第で、綺麗に見えたりカッコよく見えたりするカスタマイズ性とか。ハサミで剪定することで、美しい形を自分で作れたりとか。いろいろな楽しさがあります。

――ナカシマさんは、これまでにさまざまな花の曲を書いていますよね。花の知識はどこから得ているんですか?

ナカシマ:街を歩いていて花を見かけたとき、「この花は何だろう?」と調べることは多いですね。調べるのが難しいときもあるんですよ。見た目の特徴を入力して、インターネットで検索をかけても、なかなか辿り着けない、みたいな。そういうときに使っているアプリがあって。植物のことが知りたい人と植物博士のマッチングというか……花の写真を投稿すると、植物に詳しい第三者が現れて教えてくれるんです。前にどうしても何の花か分からなくて、そのアプリに投稿してみたら、2分くらいで「これは〇〇です」、「珍しいですね、野生で咲いているなんて。初めて見ました」と返ってきて。その花の名前は忘れちゃったんですけど(笑)、そういうこともありました。

 僕は「詳しい」と言えるほどじゃないけど、花にまつわる知識はいろいろ持っていて。花は枯れていくまでにいろいろな姿になるし、花言葉や特性などの周辺情報も多い。それで、自ずと曲に使うことが増えていったのかなと。あと、曲を作る以上、デザインとして美しいものであってほしいので。それも、花の曲が多い理由のひとつなのかなと思います。

幼少期に“絵本”が育んだ植物への興味

――アジサイ、サクラ、スイセン、タンポポ、ヨルガオ、ドクダミ、ジンチョウゲ、コセンダングサ、そして今回の新曲はツツジ。私は「海馬の尻尾に小栴檀」(9th mini album『antique』収録曲)を通じて、コセンダングサを初めて知りました。

ナカシマ:ひっつき虫みたいな。僕もそれは作っている過程で知りました。「あれってなんて名前だろう?」と調べて。

――「ドクダミ」(8th mini album『eyes』収録曲)も気になりました。「好きな人のことをドクダミに喩えるのか!」と。

ナカシマ:これは「いつの間にかいるな」という感じです。バラやチューリップのように目がいく存在ではなくて、気にしないと見つけられない存在というか。素朴だけどかわいい、みたいなところですかね。ドクダミって、名前のわりに意外と薬草だったりして。親がドクダミのお茶を作ってくれた記憶もあって、いたわってくれる存在というイメージもありました。

――「水仙」(4th mini album『flask』収録曲)には〈冷たい猫に手を合わせて/水仙は赤く冬を奏でる〉という歌詞がありますが、赤い水仙ってあまり見たことないなと。

ナカシマ:車に轢かれちゃった猫がいて、その近くにスイセンが咲いていたので……っていう。高校生の頃、猫が轢かれているのを家の近くでよく見かけたんですよ。僕は福岡出身なんですけど、野良猫が多かったからなのかな? そういうのをしょっちゅう見ていたから、記憶に焼きついているのかもしれないです。

――ナカシマさんの書く曲の根底に死生観があるのは、そういう原風景があるからなのかもしれないなと今のお話を聞いて思いました。おいしくるメロンパンが初めて制作した楽曲「桜の木の下には」(2nd mini album『indoor』)も、死の匂いが漂っていますよね。

ナカシマ:この曲を書いたときのことはあまり覚えていないんですけど……「カゲロウデイズ」(じん)をギターで耳コピして、「こんなコードがあるんだ」というところから着想を得て作った、初めての歌モノの曲だったと思います。でも、なぜこういう歌詞になったのかは正直覚えていなくて。梶井基次郎の『櫻の樹の下には』からの影響もあったのかなと思うんですけど。

――梶井基次郎は、桜の美しさの根拠として、地中に埋まった死体から養分を吸い上げているのだと想像しましたが、その感覚はナカシマさんにとって共感できるものだったと。

ナカシマ:そうですね。小さい頃、『葉っぱのフレディ いのちの旅』という絵本が好きだったんですよ。一つひとつの葉っぱが意思を持っていて、会話をしていくんですけど、死生観がしっかり描かれていて。「死ぬことは変化のひとつだから怖くない」みたいなところに着地するんですよね。死は今でも全然怖いけど、「そういう考え方でいられたらちょっと楽になるかも」と思って。

 『葉っぱのフレディ いのちの旅』を初めて読んだのは、小学生になるよりも前だったと思うんですけど、すごく衝撃を受けた記憶があります。もしかしたら、植物に興味を持ち始めたのもそこからなのかもしれない。植物は僕にとって、いちばん身近に死を感じられる存在というか。花がどんどん枯れていって、当たり前に新しい芽が芽吹いて……という繰り返しを眺めながら、「不思議だな」と思ってます。

原駿太郎(Dr)

関連記事