OSHIKIKEIGO×OddRe: 対談 ソロとバンド、異なるアプローチから定義する“2026年のJ-POP”
Spotifyがその年に躍進を期待する新進気鋭アーティストをサポートするプログラム『RADAR: Early Noise』。2026年はOSHIKIKEIGO、OddRe:、kurayamisaka、ハク。、Maverick Mom、名誉伝説、LAUSBUB、luv、Litty、Rol3ertの10組が選ばれた。3月19日、東京・Spotify O-EASTにて行われたライブイベント『Spotify Early Noise Night #18』には、その中からOSHIKIKEIGO、名誉伝説、OddRe:、ハク。に、オープニングアクトのREJAYを加えた計5組が出演し、会場全体を巻き込む熱狂的なライブ空間を作り上げた。
今回リアルサウンドでは、同イベント出演前のOSHIKIKEIGOとOddRe:を迎えた対談を企画。一見、ソロとバンドという対照的な形態をとる2組。しかし両者の根底にあるのは、アレンジに対するこだわりと“2026年の音楽”への高い志だった。サウンド面を指揮するOSHIKIKEIGOとSOI ANFIVER(OddRe:)は、初対面ながら楽曲を通じて互いの手の内を読み合っていたという。深いシンパシーで繋がった対話をお届けする。(編集部)
目指しているもの、視座みたいなものが僕らと近い(SOI ANFIVER)
――『RADAR: Early Noise 2026』に選ばれたOSHIKIKEIGOさんとOddRe:のお三方にお越しいただきました。まず、みなさんはSpotifyに対して、どのような印象を持っていますか?
SOI ANFIVER(以下、SOI):俺、Spotifyは本当にすごいなと思っていて。月間リスナーというシステムは発明ですよね。アーティストの人気が可視化されて、それがリスナーにも見られるわけだから……あれはちょっと燃えるよね。
AirA、ユウキ サダ(以下、サダ):めっちゃ燃える!
SOI:『ONE PIECE』の懸賞金みたいだなと。俺らは今、21万ベリー。
OSHIKIKEIGO(以下、OSHIKI):その発想、面白いですね。俺は今、何万ベリーだろう? あと、Spotifyは新人のフックアップをすごくしてくれますよね。月間リスナー数にかぎらず、いい音楽をやっているアーティストはたくさんいるじゃないですか。そういうアーティストに出会えた時に「おすすめに出してくれてありがとう」っていつも思う。そして今は、僕らがその恩恵を受けている。『RADAR: Early Noise 2026』に選んでいただいて、こんなにフックアップしていただいて。
一同:ありがとうございます!
AirA:めちゃめちゃ嬉しいですよね。
OSHIKI:本当に。「僕でいいのかな?」と思ったくらい。
サダ:そんな! いいに決まってるじゃないですか!
SOI:「センスあるじゃん!」「分かってくれてありがとう」くらいの気持ちでいきましょうよ!
――2組は、今日が初対面なんですよね?
OSHIKI:そうなんです。はじめまして、OSHIKIKEIGOと申します。
SOI、AirA、サダ:はじめまして! OddRe:です!
――お互いに、そして読者に向けて、自己紹介をお願いします。
OSHIKI:僕は元々、アレンジャーやミックスエンジニア志望で。そこから「編曲家になりたい」「作曲家になりたい」と音楽の専門学校に行って、本当はユニットを組むつもりだったんですけど、「人とやるのって大変だし、一人でやった方が早いな」と思って。それで今は、一人で活動しています。編曲が大好きで、DTM世代特有の、今の時代にそぐう音楽を作りたいなと思っていて。例えば、DTMを触っていると、ミスって1小節だけループしちゃう時がありますよね?
SOI:ありますね。
OSHIKI:「あれが曲になったらカッコいいな」と思いながら、電子音ではなく、あえて生楽器の音をチョップして作った曲があって(「喩えて」)。「2026年のJ-POPを作れたら」という想いで、そういうものを取り入れながら曲を作ってます。
AirA:すごい。
サダ:天才だね。
SOI:天才だ。僕らOddRe:は、音楽塾ヴォイスで出会って結成した3ピースバンドですが、元々僕やAirAはそもそもソロ志望だったんです。僕は自分で編曲をする人間として、OSHIKIさんの今の話はめっちゃ分かる。「全部自分でやった方が早いじゃん」と確かに思っていたし、僕もサンプリングのカルチャーからすごく影響を受けています。だから、違う世界線の話を聞いているみたいだなと(笑)。
OSHIKI:メンバーに出会えた世界線と、出会えなかった世界線ということですよね。
SOI:そう。OddRe:のジャンルを一言で言い表すのは難しいんですが……今までは女性ボーカルのロックってフィールドが限られているような印象を持っていたけど、そこを一つ広げられるような、ニューミュージックを作りたいなとずっと思っていて。具体的に言うと、ブルースロックやファンク、ディスコ、フレンチハウスを基盤に、エレクトロの解釈でロックをやっています。例えば「FEVER TIME」という楽曲には、フィリップ・セイスやジミ・ヘンドリックス辺りが由来になっているようなブルースサウンドが入っているんですけど、僕はあのギターを大真面目に弾いているつもりはなくて。「ああいうリフのブルースロックが、どこかにありましたとさ」「それをオマージュして作った2026年の楽曲です」という仮定で作ったようなイメージなんです。そんな感じで、僕もサンプリング文化が基盤にあるんですよ。
OSHIKI:まさにそうなんだろうなと楽曲から感じてました。僕はあるラジオ番組に出演した時に、OddRe:の楽曲を選曲したんですよ。まるでカレーにチョコやハチミツを入れるように……ギリギリ相容れる範囲内で、クサめのギターフレーズをさらっと入れていたのが印象的で。2026年のJ-POPとして、いろいろなジャンルのミクスチャーをやりつつも、自分の大好きなルーツは絶対に入れたいんだろうなという気持ちを、特にギターから感じました。なので、今の話で全部繋がりましたね。
SOI:嬉しい。僕はOSHIKIさんの曲を聴いて、サウンドのレンジがすごく広いなと感じました。音符って、いつの時代も普遍だと思うんですよ。“いいメロディ”は今も昔も変わらないけど、“いいサウンド”は時代によって違うから、各アーティストが「今流行るべきサウンドはこれだよね」というものを提示している。僕はOSHIKIさんの曲を聴いて、「音符からはチャーチ系の匂いやオーガニックなフィールを感じるけど、サウンドはバキバキだな」と思っていて。今の時代に目指しているもの、視座みたいなものが僕らと近いんじゃないかと前から感じていました。アレンジを自分でやるのって、大事だと思いません?
OSHIKI:思いますね。アレンジが楽しいから、曲を作っているといっても過言ではない。
SOI:日本では作曲を、ボーカルのメロディを作ることだと定義しているじゃないですか。僕はあれに、けっこう懐疑的で。
OSHIKI:分かります。カウンターメロディとか、後ろで鳴っている楽器にも意味があるのに。
SOI:本当に。アレンジって結局は全楽器のメロディとコードの集合だから、ボーカルだけじゃなくて、そのアレンジの一つひとつを見るのが大事だと思っていて。僕らはまだ若いから、ぶっちゃけできないことの方が多いと思うんです。実際、普段制作をしていてもできないことばかりで。
OSHIKI:うん、そうですね。
SOI:だけど、全てのクリエイションの根幹にある感情って“できない”だと思うから。全てが思い通りになったら、たぶん人は何も作らなくなると思うし、できないことをやろうとする姿勢に意義があると思うんですよ。だから僕は、できないからって人に投げずに、全部自分でやっているOSHIKIさんのようなクリエイターが大好き。だから応援したいし、「一緒に時代を作っていきたいな」とも思いますね。これからもいい距離で、いい関係でいられそうな気がする。アーティストにしかわからない絆のようなものを僕は感じています。
OSHIKI:今日会ったばかりだけど、それは自分も感じていて。僕、MVの撮影中にOddRe:の曲を初めて聴いたんですよ。深夜だったんですけど、ラジオで「ai my me」が流れていて。スタッフさんと喋りながら、そっとShazamして(笑)。
SOI、AirA、サダ:へえー!
OSHIKI:曲って文通みたいなものだと思っていて。聴けば「この人、このコード進行が好きなんだな」「こう考えて作ったんだろうな」というものが分かるから、作った人と会話できている感覚があるというか。「ai my me」を聴いた時、僕はすごくシンパシーを感じたし、今日こうやって喋れて嬉しいけど、よもや喋らなくてもいいまであるなと(笑)。