Billyrrom、CANDY TUNEらも出演 タイ『Bangkok Music City 2026』主催に聞く、ショーケースイベントが果たす役割

土井コマキのアジア音楽探訪 Vol.22

 1月25日~26日にタイ・バンコクで開催された、国際音楽カンファレンス&ショーケースフェスティバル『Bangkok Music City 2026』(以下、BMC)に行ってきました。まず最初に「ショーケースイベントって時々聞くけど何?」と思っている方もいらっしゃるかと思います。業界の関係者に向けて披露されるショーで、それを見たメディアが取り上げたり、レコード会社やマネージメント会社、イベント主催者などと契約するきっかけを作ったりといった目的があります。もちろん完全にクローズドで関係者のみにお披露目される場合もありますが、大きな規模で開催して一般の方にも一度に見てもらう場合もあります。ちなみに『FM802 MINAMI WHEEL』も、サーキット型のショーケースイベントです。どちらかというと関係者だけではなく、より多くのラジオリスナーに、インディーズアーティストのライブを直接見てもらう機会になってほしいと思って開催しています。

 そんなライブパフォーマンス部門と同時にカンファレンス部門も開催して、交流会やビジネスマッチングの時間を設け、国内外の関係者を積極的に招いて、もっと交わってチャンスを作ろうとしているイベントも多いです。『BMC』も然り。今回初めて参加してみて、世界中から集まった約400人という関係者の人数の多さにびっくりしたり、その熱意に感動したりしました。各国の音楽関係者の中には、私も何度も顔を合わせている人もいて、みんな盛んに情報交換をしていたり、感想を言い合ったりしていて、あぁ、こうやって世界の音楽業界は回っているんだなと、感動しました。何度かあのような場に行くだけでも、個と個で繋がった縁が輪になり、大きなうねりになっていくのだと本当に思えます。とても意義のあることです。もし興味を持ったアーティストや音楽関係者がいらっしゃったら、来年は応募してみることを強くお勧めします。

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 会場は、バンコクのCharoenkrung Creative District (チャルンクルン・クリエイティブ・ディストリクト)。8つのステージに2日間で16カ国から86組のアーティストが出演しました。街自体が歴史を感じる場所なのですが、近年、アート系のイベントなどがよく開催されるエリアです。この『BMC』は複数の主催者によって共催されているのですが、その内のお一人、FungjaiのFounder/CEOであるSarun Top Pinyaratさんにメールインタビューができました。

タイの音楽業界を世界と繋げたい

土井:まずは、なぜこの街を開催地に選んだのですか?

Sarun Top Pinyarat(以下、Top):チャルンクルン・クリエイティブ・ディストリクト(タラートノイやグランド・ポスト・ビルディングを含む)には、豊かな歴史とクリエイティブなカルチャーがあるので選びました。当初から地域全体をフェスティバルの精神に融合させることを目指し、多くの地元のレストランやバーに小規模なステージを作りました。『MINAMI WHEEL』が大阪の活気あふれる心斎橋を活用しているように、『BMC』はチャルンクルン地区を舞台に、現代音楽とバンコクの伝統を融合させています。これにより、参加者はステージ巡りの合間に、地元の屋台料理、アートギャラリー、歴史的建造物などを気軽に体験できます。私自身も『MINAMI WHEEL』では、心斎橋を五感で体験することができました。視覚、味覚、聴覚など、様々な感覚で楽しめました!

 告白すると、私も、ちょっとサボって申し訳ないなと思いながら、次のライブへの移動の途中、ギャラリーやカフェなどに行ってしまいました。ですが、主催の狙い通りというわけです。とても魅力的な街で、ステージが設置された建物がどれもユニークでした。古い建物が多く残るこのエリアの象徴的な建物「グランド・ポスト・ビルディング」という元中央郵便局に3つのステージがあり、カンファレンスなどもこの建物で開催されました。クラシカルの一言に尽きる素敵なレトロ建築です。そして、チャオプラヤー川の近くにある高級ホテル「ロイヤルオーキッドシェラトンリバーサイドホテル」の広いバンケットルームに1つ。さらに同じ川沿いの「リバーシティバンコク」の屋上ヘリポート(!!)にもステージが組まれていてびっくり! オーディオメーカーのMarshallが2025年にオープンした初のライブハウス「Marshall Livehouse」も会場として使われていました。そして興味深いカルチャースポット「The Coner House Bangkok」は100年の歴史ある古い建物をリノベーションした小さなビルなんですが、この中にも2つステージがあり、毎夜の交流会はここで開催されました。

土井:そもそも、なぜ『BMC』を始めたのですか? Topさんは各国の音楽イベントに参加されていますが、参考にしたイベントはありますか?

Top:タイ国内にはショーケース・フェスティバルが全く存在しなかったため、タイの音楽業界を世界の他の地域と繋げ、タイ人アーティストを地域および世界の舞台へと送り出す必要性を感じて、『BMC』を始めました。『SXSW(米国)』、『The Great Escape(英国)』、『Zandari Festa(韓国)』といったフェスティバルが、都市インフラとB2Bネットワーキングを融合させた青写真となっています。

土井:2019年に始まって、コロナ禍の影響で2020年はリアルとオンラインのハイブリッド開催、2021年はオンライン、2025年にリアル開催でカムバックして、今年は5回目の開催。どんどん大きなフェスになっていますね。

Top:来場者数は、2019年の約6,000人から、2026年1月開催時には約12,000人にまで増加しました。これは非常に大きな成果です! 出演アーティストも、今年は16カ国から86組のアーティストが出演しましたが、実は世界中から1,000組を超える応募があり、あらゆる大陸から応募があったため、非常に大きな反響があったと言えます。ネットワーキングの面でも、2025年の倍の400名以上の海外からの参加者を迎えました。近い将来、国境を越えたコラボレーションが数多く実現することを期待しています。

YONLAPA、DOTDOTDOT…世界でも注目を集めるタイのアーティスト

土井:今年の出演者の中で、評価が高かったり注目を集めたタイのアーティストはいますか?

Top:私自身が見ていた感じと参加者からのフィードバックによると、海外の参加者から注目を集め、すでにいくつかの出演依頼を獲得しているアーティストもいます。例えば、YONLAPAは韓国の『Asian Pop Festival』に、 TONTRAKULとYuBassはチェコ共和国の『Colours of Ostrava』に、LEPYUTINはシンガポールの『Baybeats』に出演することが決定しました。DOTDOTDOT、Pami、Supergoods、Flower.farは、パフォーマンスを観た参加者から多くの好意的なフィードバックを受け、アンケートでも多くの関心が寄せられました。日本のBlack Petrolはジャカルタの『LaLaLa Fest』に出演することが決定しましたよ。

 そうなのです。TopさんはBlack Petrolを『MINAMI WHEEL』で見て絶賛してくれて、彼らは『BMC』を経て『LaLaLa Fest』まで道が繋がっていきました。関西のアーティストなので、私個人的としてもとても嬉しいです。『BMC』では著名なタイのアーティストも出演していたのですが、トリはYONLAPA(チェンマイ在住のギターロックバンド)でした。このタイムテーブルにはフェスの思いが込められているようで心打たれましたが、さらに海外のフェスへの出演が決まったなんて、ショーケースイベントとしては大きな成果ですよね。

 Topさんが挙げてくれたDOTDOTDOTは、私もライブを見ることができました。繰り返し聴きたくなる中毒性のあるサウンドでした。彼らは大学の友人5人で結成した、まだ結成間もない注目のオルタナティブロックバンド。タイ東北部の音楽が融合していて、ケーンという箏のような民族楽器も使われています。以下に動画を紹介している「Thorns and Fear」は熱くアグレッシブで聴きながら踊っているうちにハイになってしまいますが、彼らのサウンドはバラエティに富んでいて、うたた寝のように心地よく甘く柔らかな曲もあります。タイにはこういった伝統楽器や旋律を取り入れて、見事に融合させているアーティストも多く、いつか、しっかりと向き合ってみたいシーンです。

DOTDOTDOT

DOTDOTDOT - ขวากหนามและความหวาดกลัว | Live in a day

 タイのオンライン音楽マガジン「The COSMOS」に、『BMC』出演よりも前に取材された、DOTDOTDOTの中心人物ニックのインタビューがありました。その記事を自動翻訳で読んでみると、彼はタイ東北部のイサーン地方出身で、バンコクで勉強していて休日には故郷に戻る生活をしていたそう。友人がケーンを演奏できたから、ケーンを音楽に取り入れるようになったのだとか。この記事によるとタイではイサーン地方出身者について語られる時、苦難のイメージが多く、ニック自身も貧困と干ばつばかり思い出す。だから、イサーン出身という言葉がもっと肯定的なイメージで使われるようになってほしいと考えているそう。「僕の音楽が、疲れた人たちの心の支えになってほしい。聴いてくれた人たちに、少なくとも僕が彼らの物語を語るためにここにいることを知ってほしい。聴いてくれる人たちには、まるで友達のように、同じ気持ちを共有していると感じてほしいんだ」といい、『BMC』の存在は「とても重要」で「僕たちはタイの楽器も使っているので、他の国の人たちにも僕たちの演奏を聴いてもらいたい」と語っています。(※1)

『BMC』をアジア屈指のショーケースフェスティバルに

 ちょっと規模の大きな話になりますが、アジアエリア全体の中で『BMC』はどんな存在でありたいですか? Topさんの個人的な意見を教えてください。

Top:目標は、アジア屈指のショーケースフェスティバルとして確立すること。単なるフェスティバルを超え、アジア諸国を結びつける究極のゲートウェイとなることを目指し、さらにアジアの音楽市場と世界の音楽業界を結びつけることを目指します。参加者、アーティスト、そして観客が国境を越えてシームレスに交流できる持続可能なエコシステムを構築することが目標です。そして、次のステップとして、フェスティバル期間中だけでなく、それ以外の期間でも会話が生まれるようなアクティビティやプラットフォームを構築したいと思っています。例えば、サテライトイベント、小規模イベント、あるいはネットワークを維持するためのオンラインプラットフォームなど。

 実際『BMC』が終わってからも、参加者のメッセージグループでは、活発にお互いの情報発信が続いていて、これはすごいなと感動しています。世界中の熱心な音楽関係者たちが一堂に介しているのだけど、人に情熱を抱かせるミュージシャンがいるからだし、ちゃんと同じビジョンを抱く人たちを集める求心力が、『BMC』にはあるのだと感じました。

 今年は、日本から一般社団法人カルチャー アンド エンタテインメント産業振興会(CEIPA)とトヨタグループが推進する「MUSIC WAY PROJECT」がグローバルパートナーとして参加し、MUSIC WAY PROJECTステージに、Billyrrom、Black petrol、山本大斗、CANDY TUNE、luvの5組がプロジェクトからの支援を受けて出演しました。また交流パーティや、カンファレンス、ビジネスマッチングの時間など、フルスイングで世界に働きかけていました。おそらく参加した全員が刺激を受けたのではないでしょうか。

Billyrrom
Black petrol
山本大斗
CANDY TUNE
luv

 『BMC』のような場に出ていって交流することと、日本に来てもらって交流することのどちらも大切だし、規模の違いによって交流の中身が変わる。それぞれの良さがある。日本のアーティストが海外で活躍する裏側や、海外のアーティストのライブを日本で見ることができる舞台裏には、こんなふうに動いてくれる熱量の高い人たちがいるからなのだと、肌で感じることができた『BMC』でした。もちろん日本国内にも色々なショーケースがあり、4月には東京で『CUEW Showcase & Conference』が開催されます。相当な人数の関係者が集まるとのことで、そこからまた次のコラボレーションが生まれてくるでしょう。各国の音楽シーンを繋ぐためにショーケースを用意してくれる人がいるので、もっとたくさんの人がどんどん参加して挑戦するべきだと思う。勇気を出して真面目にドアを叩けば、必ず応答してくれる人はいます。ちなみにTopさんに『MINAMI WHEEL』をさらに魅力的なショーケースにするためのアイデアをもらったので、チームにフィードバックして、日本のミュージシャンや音楽リスナーにとって、もっと有意義なものにしていこう。ぜひ貪欲に参加してください。

※1:https://www.therealcosmos.com/transmission/dotdotdot-interview/

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