Nothing's Carved In Stone、4年ぶりフルアルバム『Fire Inside Us』完成インタビュー 燃えたぎる炎が導く“未来”
時代に合わせて言葉が出てくるとか、歳を重ねて言葉が変わってくるのも自然なこと(村松)
――おっしゃる通り、ナッシングスが歌ってることってずっと変わらない部分もあると思うんですけど、でもキャリアも歳も重なっていくし、時代も変わっていくわけで。そうすると歌えることが増えたり、広がったりしていくと思うんです。そのなかで、今回はすごくいい歳の重ね方をしたうえで、ポジティブに未来に向かっているというか、可能性を感じてるんだなって思ったんですよね。このアルバム、〈未来〉って言葉がほぼ全曲で出てくるんですけど。
村松:なんか出てくるよね。毎回言ってるなっていう(笑)。
――それ、なんでだと思います?
村松:俺、好きな歌詞が今回あって。「孤独の先」の――真一の歌詞なんですけど――〈とりとめも無く/流れ続けるメッセージ/自由を履き違えた世界で/かけがえのない錆びついた言葉を/紡いだ先に見えてきた未来〉っていう。ここにも〈未来〉が入ってますけど、コロナ禍もあって、生身の人間同士で関わり合わなくても、ちっちゃい箱のなかに人間が作ったものがいっぱい詰まってるから、そこに答えがあるような気がする世のなかじゃないですか。そういうことを言ってる部分もあるのかなって思う歌詞で。やっぱり、人間同士で顔つき合わせて、コミュニケーションをとって、思いを紡いでいく作業が、僕らにとっての正解の生き方なんだろうなっていうのは、バンドをやっていても思うんです。「そういうの、いいな」って。そういう思いで俺も歌詞を書きましたし、時代に合わせて言葉が出てくるとか、歳を重ねたから言葉が変わってくるのも自然なことで、その感じで自分もわりと等身大で書いてる感じがします。
――「孤独の先」は、本当にアルバムの1曲目、そしてリードトラックとしてアルバムのいちばん真ん中の部分を言い切っているような曲ですよね。
生形:これは最後のほうに作った曲で、最後の一個前のセッションかな、その時に「孤独の先」と「Find the Color」ができて。そのふたつができた時に、なんとなくアルバムの全体像が見えた気がしたんです。「Find the Color」はナッシングスっぽさもあって、すごくポップでメロディアスで、「孤独の先」はそれに比べるともうちょっとロック寄りというか。この2曲を「似てる」って思う人もいるかもしれないけど、僕らからしたら結構違う曲なんですよ。そのふたつができたのがすごくデカかった。
――しかもこの2曲、歌ってることはすごく近いものがありますよね。
生形:統一されてますよね。「孤独の先」は俺が歌詞考えて、「Find the Color」は拓ちゃんの歌詞なんですけど。
――感じているものと見えているものがすごく近かったんだろうなって気がしますよね。「Find the Color」は、拓さんはどういう思いで書いたんですか?
村松:これはね……俺、bachoが好きなんですけど、「bachoみたいになりたいな」って思って(笑)。
――今になって(笑)?
村松:今になって(笑)。bachoと俺、同い年なんですけど、同世代でも年下でもサラリーマンでも、(北畑)欽也が歌ってるとみんな勇気をもらうじゃないですか。それって、欽也がしみったれた部分とかも歌詞で全部表現してるからなんですよ。ナッシングスもそうなっていきたいというような気持ちで書いたかもしれないですね。
――つまり、自分の内面というか本音の部分みたいなのもある程度出しながら。
村松:そうそう。あと、さっき言ってたポジティブなところ。ネガティブなことはいくらでも書けるんですけど、できれば聴いたり、ライブにきてくれたりした人たちが、僕らの紡いだ言葉で自分らの生活を昇華させていってほしいっていうか。
音楽で歳を取っていきたくないし、落ち着きたくない(生形)
――役割意識と言うとちょっと言葉が硬いですけど、バンドマンとしてステージに立って歌うっていうことの意味についても、より考えるようになりましたか?
村松:わからないけど、なってるかもしれない。なんで考えるようになったのかって言われたらわからないんだけど……。
――でも、歳を取っていくと、未来の選択肢が少しずつ減っていくというか、消去法になっていくじゃないですか。それが悲しかったりもするけど、でもナッシングスはどんどん可能性を広げている感じがして、その姿に勇気をもらうんですよね。
村松:ああ、嬉しい。
生形:俺、今年で50になるんですけど……自分の目標としては歳を取ったとか落ち着いたと思われないようにしたいかな。それは見た目じゃなくて、音楽の話ね。歳を重ねる、年輪みたいなものは大事だと思うんだけど、音楽で歳を取っていきたくないし、落ち着きたくない。バンドとして常に新しいことをやって、新鮮でいたい。
村松:俺もセンスだけは磨いておきたいですね。音楽に対してとか、世のなかに対する切り口とかは自分自身で持っていきたいし、研いでいきたい。あと、バンドに自己を投影できるような自分をさらに磨いていきたいなって気持ちはあるんですよ。若い時よりももっと人に伝わるように、人や世のなかが少しでもプラスに動くような何かを発信できる存在になりたい。今聴いてくれている人たち、ファンのみんなはそう思ってくれてると思うんですけど、そのために人間性をもっと研いでいかなきゃいけないのかなっていう思いは、年々強くなっているかもしれないですね。
――逆に、若い時はどういう感じだったんですか?
村松:ゲロをバーって吐いて、「やったぜ!」みたいな(笑)。書いている側が気持ちよければ何だっていいみたいな観点もたぶんあると思うんです。でも、そういうのは……なんていうか、人が出した歯くそみたいなもんですよ。それを書くことに意味があった時代はもう終わったかなと思うんです。だから、それを研いでいけたらいいなという。
――歯くそを曝け出すというのもひとつのあり方だけど、それをより意味のあるものにしたいということで。
村松:それは願望なんだと思います。受け取る側もいるので、みんな自由に感じてくれたらいいんですけどね。ただ、「これは歯くそだから」とは今はちょっと言いたくない。
――でも、まさに独立して以降のナッシングスは人に対して何を与えられるのか、何を伝えられるのか、それはお客さんっていう意味でもそうだし、もっと広い社会だったり、もしかしたらあとに続いてくる若いミュージシャンやバンドマンなのかもしれないですけど、そういう人々に対してちゃんとかっこいい存在としてあり続けるっていう意識を持って、どんどん心を開いていくっていうマインドでやってきている感じはしますね。それがある種の若さや熱さとなって出ている気がする。
村松:ここ2年くらいのライブをやってくるなかで、激しいのが自分たちのライブに合うなっていうのに気づいたところはあって。あれもスイッチだったよね。
生形:たしかに、ちょっとファーストの頃に戻ってるよね。
――今回のアルバムのタイトルも『Fire Inside Us』ですからね。
村松:このタイトルは、最後の最後に何個か案を出して、みんなに相談して、「いいね」ってなったんですよ。
生形:うん。いちばんいいタイトルだなって思った。
村松:これは直訳すると「自分たちのなかの炎」で。情熱ですよね。本当は『Fire Inside Me』でもよかったんですけど、それをあえて『Us』にしようっていうのはみんなで話したかな。主人公を自分たちだけにしたくなかった。
――だからやっぱり、バンドの外側と繋がって作用し合いながら進んでいくっていうのが今のナッシングスのモードなんでしょうね。4人の確固たる部分はあるんだけれども、それ以外のエネルギーを吸収しながらどんどんデカくなっていくっていうイメージでやれているんだろうな、って。
村松:うん。
――その背景には、独立して以降のこの何年か、4人のやり方や形がより固まったっていう部分もあるんだろうなと思います。
生形:自分たちでやるようになって、それで変わった部分はいっぱいあるかもしれないですよね。決めごとにしても、どうやってやっていくかにしても、変わってきてる。今はみんなで口を出し合いながらやってるし。