二宮和也によるカバー、「3%」の広がり――さとう。が手にした気づきの正体 アルバム『窓越し、その目に触れて』を語る

 インタビュー冒頭にも語ってもらった通り、さとう。のこの一年は、とても充実したものだった。誰にでもわかるポップを歌うこと、誰かにしかわからない温度を紡ぐこと、寄り道をする愛おしさ……そんな気づきがきっとあったのだろう。そのすべてを自分のモノにしていく作業が、さとう。の今の強さを作ったのだと思う。アルバム『窓越し、その目に触れて』は、今優れたポップミュージックはここにあると思わせてくれる、そんな名盤である。(編集部)

さとう。- 2nd ALBUM 『窓越し、その目に触れて』【全曲ティザー】

充実の一年、ツアーであらためて感じたリスナーの存在

――去年のさとう。さんはトピックが多い一年でしたね。

さとう。:そうですね。1月にTVアニメ『花は咲く、修羅の如く』(日本テレビ/BS日テレほか)のエンディング主題歌(「朗朗」)を担当させていただいたことから始まり、3月にミニアルバム『とあるアイを綴って、』をリリースし、その作品で初めてバンドアレンジにトライしました。

――7月から8月にかけて東名阪ツアー『地平線、そこで会えたら』を開催。9月からは初の全国ツアー『この芽の色を知る人へ』がスタートし、ツアーファイナルは東京・大手町三井ホールで、これも初めてとなるホールでのワンマンライブを成功に収めました。

さとう。:全国ツアーで各地のライブ会場に行ってみると、初めてお邪魔したにもかかわらず、皆さんが私の音楽を知ってくださっていて。「ずっと観に行きたかったです」と言ってくださる方が、どの会場にもいたんですよね。「さとう。の音楽を大切にしてくれてる人がこんなにいたんだな」と、あらためて気づかされました。私が皆さんに何かを渡すためのツアーだったはずが、それ以上にたくさんのモノをもらいました。

――楽曲に関しては「3%」のMVが500万回再生直近で。この曲を通して得たものであったり、多くの人へと広がっていく状況をさとう。さんはどのように感じておりましたか?

さとう。:「3%」はいろんな人に、さとう。の音楽を知ってもらえるきっかけとなった一曲で。去年のツアーでも「『3%』で好きになってライブを観にきました」と言ってくださる方がたくさんいました。また「『3%』でさとう。を知り、今は別の曲が好きになった」という声もたくさん聞きます。さとう。はライブがすごく好きで、「3%」のようなアルペジオのミディアム曲も歌うし、ジャカジャカ弾いて歌い上げる曲もたくさんある。いい意味でのギャップを生み出せて「こういう魅力もあるんだな」「もっとほかの曲も知りたいな」とその先へ繋げてくれる楽曲になったな、と最近はすごく思います。

さとう。 - 3%【Music Video】

――さとう。さんの音楽がより知られるようになったきっかけで言うと、二宮和也さんが7月にリリースされたカバーアルバム『〇〇と二宮と2』に「ピアス」が収録されたことも大きな出来事だったと思います。カバーの話はどんな状況で知りました?

さとう。:昨年の春頃だったと思うんですけども、私のマネージャーさんから「二宮和也さんが『ピアス』をカバーしたいとおっしゃっています」とメールがきまして。その時は自宅にいたんですけど、膝から崩れ落ちました(笑)。嬉しい反面、どこか信じられない気持ちにもなって。しかも、アルバムのラインナップを見たら、本当に素敵なアーティストさんの楽曲ばかりで。

――幾田りらさんの「Answer」、RADWIMPSの「謎謎」、スキマスイッチの「未来花」、Official髭男dismの「ラストソング」など、豪華な楽曲が並んでいましたもんね。

さとう。:そのなかに「さとう。」の文字を見た時に、「メールの話は本当だったんだ!」とようやく受け止められました。そもそも、二宮さんが聴いてくれていると思っていなかったので、「自分の知らないところでさとう。の音楽が届いてるんだ」と強く感じたのはカバーアルバムの一件も大きかったですね。

「愛情を持って真摯に向き合ってくださった」――二宮和也の「ピアス」カバー

――「ピアス」を書かれたのは、いつ頃だったんですか。

さとう。:曲自体は2022年くらいからありまして。自分がホームにしているライブハウスが「題名縛りで曲を書く」という試みをやっていて。そこで「さとう。さんは『ピアス』というタイトルの曲を作ってください」と言われて書いた曲だったんです。ライブで歌うようになったら「あの曲がすごく好き」と言ってくれる方が多くて、2024年に念願のリリースができて、その一年後には二宮さんにカバーしていただけて……。自分のキャリアのなかでも歴史の長い曲なので、またひとつ素敵な思い出が増えました。

――原曲は弾き語りのみで完結していますが、二宮さんのカバーは荘厳なアレンジになっていましたね。

さとう。:さとう。の「ピアス」はギターと歌のみなので、どういうアレンジをされるのだろうと楽しみにしていて。いざお聴きしたら、一本の映画を観たぐらいの充実感というか、何かのエンドロールに流れてきそうな壮大な仕上がりに感じました。二宮さんのワンマンライブに行かせていただいて、その時にも歌ってくださったんですよ。あとでスタッフの方に、二宮さんが「ピアス」の振り付けや演出にすごくこだわって、ツアーの合間も正解を模索し続けて、ようやくツアーの最終日に完成したという話を聞いて、本当に感動したんですよ。あの二宮さんが駆け出しのシンガーソングライターの楽曲に対して、愛情を持って真摯に向き合ってくださったんだ、って。何より、さとう。のことなのに、さとう。よりも喜んでくれる方がたくさんいたのが嬉しかったです。「さとう。だけの曲ではなくて、ちゃんとみんなの曲になっているな」と実感しましたね。

さとう。- ピアス 【Music Video】

――7月からは、6カ月連続リリースという試みをされましたね。

さとう。:バンドアレンジも多かったり弾き語りもあったり、今までさとう。のことを知ってる人が聴いても「新しい」と思う一面が出ていると思います。最近になってさとう。を知った方でも、ちゃんと私の音楽が伝わるようなアレンジや選曲にしたので、皆さんと一緒に6カ月間を駆け抜けてよかったなと思います。

――そんな連続リリースの楽曲も収録されている、2ndアルバム『窓越し、その目に触れて』が完成しました。どんなコンセプトで制作されたのでしょう?

さとう。:前回の1stアルバム『産声みたいで、』が、声とギターというさとう。の原点にフォーカスを当てた一枚だったのに対し、今回はそれをちょっと飛び出したアルバムになりました。それこそ、2025年は初めてバンド編成でツアーをまわらせていただいたので、バンドサウンドと同時にさとう。らしさも伝わるアレンジに仕上がっています。「どこかの誰かのノンフィクションを歌う」ことに重きを置いて歌い続けているので、どの曲を切り取っても、誰かの生活が見えるというか。それは、さとう。自身の生活であり、もしかしたら聴いているリスナーの人生を切り取った部分かもしれない。「曲を聴いて身近に感じてもらえたらな」と思いながら制作しました。

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