ポケモン、攻殻機動隊……Ninajirachiが影響を受けた日本のカルチャー オーストラリアの音楽シーンの現在についても聞く
「『攻殻機動隊』は大きなインスピレーション源」日本のカルチャーから受けた影響
ーー最新アルバム『I Love My Computer』は、テクノロジーをディストピアとして恐れるのではなく、とても親密な存在として描いていますよね。過去には『Ableton Live 11』の公式デモプロジェクトを手掛けるなど、音楽制作ソフトウェアにも非常に精通されていますが、ご自身のクリエイションにおいて、コンピューターは単なる道具を超えた、どんな役割を果たしていると思いますか?
Ninajirachi:ある意味ではまだ「ツール」なんですけど、私にとってはインスピレーションの源なんです。インターネットへのアクセスポイントですし、その先には無限の情報の海が広がっています。例えば、この前タクシーに乗っていた時に日本のことでふと疑問が浮かんで、その場でスマホで調べたらすぐ答えが出てきました。こんなに遠くの国のことでもすぐにわかってしまう。改めてすごいなと思いました。
ーー制作のインスピレーションもそこから?
Ninajirachi:正直に言うと、一番のインスピレーション源は時間制限のないPCタイムですね。YouTubeで誰かが作ったドキュメンタリーを観たり、ランダムにウェブサイトを閲覧したり、Pinterestでいろんなアートを眺めたり……とにかく自宅にいながら世界について学べるのが最高なんです。しかも、そのブラウザを閉じて音楽制作ソフトを開いたらすぐに曲が作れる。なので、コンピューターには全部が詰まっていると思っています。
ーー2024年にご自身のXで「日本に行くのが私の夢」というポストをされていましたが、2度目の来日となる今回のツアーは東京公演が即ソールドアウトになるなど大きな反響がありました。日本のファンとのつながりや、ツアーの手応えはいかがでしたか?
Ninajirachi:本当に最高でした。東京公演の後に気づいたんですけど、日本はXがすごく盛んですよね。自分のタイムラインを見たら、みんなが私の動画をどんどん上げてくれていたことに圧倒されちゃいました。試しにその中から一つ選んでリポストしようと思ったんですけど、選べないぐらいどれも素敵なコメントと一緒に投稿されていたので、結局「I love Japan」とだけ書きました(笑)。
それと今回のツアーでは、『4x4』と『girl EDM』のジャケットを手掛けてくれた日本のアーティストの情緒(Jyoucyo)さんが東京公演を観に来てくれただけでなく、大阪公演にはご家族と一緒に観に来てくれたんです。あとは、前回のツアーTシャツを着てくれてる人がいたり、サインしたものを持ってきてくれる人がいたりするので、本当に夢が叶ったという感じです。
ーー今回のツアーでは『攻殻機動隊展』のイベント「FIRN」にも出演されましたが、最新アルバムの「テクノロジーとの融合」というテーマは日本のサイバーパンクの世界観ともリンクしていると感じます。実際にあの空間でプレイしてみていかがでしたか?
Ninajirachi:最初にオファーをいただいた時は、もう夢なんじゃないかと思うくらい嬉しかったです。もともと来日ツアーが決まっている中で、さらにあのイベントでプレイできたことはすごく光栄です。それと「FIRN」クルーの皆さんも素晴らしかったし、お客さんも最高でした。
今回のアルバムのグッズとして作ったTシャツは、アニメチックな女の子がラップトップを持っているデザインになっていますが、実はそのベータ版はフォントを似せたり、ケーブルがぐるぐる巻かれていたりという感じでもっと『攻殻機動隊』にインスパイアされたデザインでした。それはそれでよかったのですが、それを最終的にはもっとミニマルなデザインに変更することになって。そういう意味では『攻殻機動隊』はもともと自分にとって大きなインスピレーション源なので、あのイベントでプレイできたのは本当に特別な体験でした。
ーーステージネームからも日本のゲームやカルチャーへの愛情を感じますが、ご自身の音楽的なルーツとして、日本の音楽やカルチャーに影響を受けてきたことはありますか?
Ninajirachi:小さい頃、学校に行く前にテレビがついていて、弟と一緒に観てたんですけど、そのチャンネルで放送されていたのは、『ポケットモンスター』、『遊☆戯☆王』、『セーラームーン』といった日本のアニメの英語吹き替え版ばかりでした。なので、欧米のアニメを観るよりも先に、日本のアニメを観て育ったという感じです。毎朝観てたし、DVDも借りていたし、ポケモンはゲームよりもアニメが先でしたね。
ーーゲームもかなりプレイされてたんですか?
Ninajirachi:6~7歳くらいでニンテンドーDSを手に入れて、『ポケットモンスター』と『どうぶつの森』をプレイしました。初期の『どうぶつの森』や『ポケットモンスター』って、今よりもっと日本的というか、日本文化にインスパイアされた要素が多くて、欧米向けにはあまり作り替えられていなかったと思うんです。だから意図せず、ゲームやアニメを通じて小さい頃から日本の文化を吸収していたんですよね。でも、子供の頃は好きなものがどこから来ているかなんて知らないじゃないですか。ただ、少し大きくなってから「あ、自分が好きなものは全部同じ場所から来てるんだ」と気づいて、その場所である日本に行ってみたいという夢が芽生えました。あと、今の私の音楽って、その頃に体験した要素や音にとても影響を受けてるし、当時のワクワクした気持ちを表現しようとしてるんだなと自分でも感じます。
ーー今の日本の音楽シーンに対してどういった印象を持っていますか? また、個人的に注目している日本のアーティストがいれば教えてください。
Ninajirachi:新しい学校のリーダーズは全曲聴いているくらい大好きです。去年の年末にオーストラリアのフェスに同じラインナップでブッキングされてたんですけど、残念ながら出演日が別の日だったので観られませんでした。
ーー櫻坂46「承認欲求」のリミックスも手がけられていますよね。
Ninajirachi:正直、お話をいただいた時はそこまで詳しくなかったんですけど、Porter Robinsonが彼女たちについて投稿しているのを見たことがあったので、名前は知っていました。なので、オファーをもらった時はすごく嬉しくて、そこからたくさん聴くようになりました。あのリミックスは実はどの国に行ってもプレイしているんですけど、日本でプレイするのはやっぱり格別でした。トップラインが日本語なので、お客さんの反応がすごく良い。それが本当に嬉しかったですね。
ーーほかにも好きなアーティストはいますか?
Ninajirachi:Perfumeもすごく好きです。最近活動を休止されたと聞いたので、もしかしたらライブを観ることは永遠にできないのかもしれないと思うと残念なんですけど、素晴らしいアーティストですよね。あとは昨日、10年くらいフォローしてきたTREKKIE TRAXクルーに会えて本当に感動しました。彼らは私が所属しているNina Las Vegasのレーベルともつながりがあるし、Carpainterさんの曲はずっとDJプレイに取り入れてきました。
それと東京公演で共演したFellsiusさんの音楽は本当にクレイジーなぐらい素晴らしい。あとMasayoshi Iimoriさんは「FIRN」で私の前日にプレイされていたんですけど、彼の音楽ももう10年くらいかけ続けているぐらい好きです。日本には本当に伝説的なエレクトロニックミュージックのアーティストが沢山いますが、このツアーでそういう方たちと同じイベントでプレイしたり、直接会えたりしたのは本当に貴重な体験でした。
ーー昨年はアルバムが大絶賛されたり、本国では『ARIA Music Awards』も受賞されたりと大きな成功を収めました。常に次の作品を作っていると聞いていますが、今後の目標や活動の展望を教えてください。
Ninajirachi:正直に言うと、まだ全然時間がなくて、いろいろ試したいんですけどなかなか手をつけられていない状態ですね。リミックスはいくつか手がけていて、最近だと「Fuck My Computer (Frost Children Remix)」がリリースされたばかりです。
あとは、アルバムに入らなかったデモ音源がかなりあるんです。曲が悪いからじゃなくて、アルバムを膨らませすぎたくなかったから泣く泣く外したもので、一つひとつは素晴らしい曲になる可能性があると思っています。これから4月の『Coachella Valley Music and Arts Festival』までは少し時間ができる予定なので、その間にそれらを次にどう発展させていくか、じっくり向き合ってみようかなと思っています。
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