MISAMOが3部作を通して伝えたかった想いとは? 最終章『PLAY』に至る変化と唯一無二の表現に迫る

 TWICEの日本人メンバー、MINA、SANA、MOMOで構成されたユニット・MISAMOの結成がアナウンスされてから3年近くが経つ。第1弾シングル「Bouquet」のヒットで存在感を示した彼女たちは、同時期にグローバルファッション誌『VOGUE JAPAN』の表紙を飾り、初のショーケースは4万人分のチケットを求めて60万人が殺到し大きな話題に。その勢いはさらに加速し、デビュー1年目にして『第74回NHK紅白歌合戦』(NHK総合)に出場。翌年には早くも自身初のドームツアーを成功させるなど、現在までの道のりは実に華やかなものであった。

 常に順風満帆。誰もがそのように評価するMISAMOだが、2月4日にリリースするMISAMO JAPAN 1st ALBUM『PLAY』で、サウンドおよびコンセプトにおいてひとつの区切りをつけるという。本作は1stミニアルバム『Masterpiece』、2ndミニアルバム『HAUTE COUTURE』に続くもので、3部作の最終章になる。1作目のキーワードが“美術”、2作目が“ファッション”、そして『PLAY』は“演劇”となっているが、この3作を通して伝えたいメッセージは果たして何だろうか? それを読み解くために、彼女たちが今まで出してきた作品を順に追っていきたいと思う。

『Masterpiece』『HAUTE COUTURE』で描いたもの

 「MINA、SANA、MOMOが3人で曲を出す」というニュースがあったのは、2023年1月。金曜ナイトドラマ『リエゾン-こどものこころ診療所-』(テレビ朝日系)の挿入歌「Bouquet」を担当することが知らされた。同曲はポジティブなオーラを放つミディアムテンポのポップスで、〈このままでいいの/私のままでいいの〉〈あなたがそばにいたから/過去の自分も好きになれる気がする〉といったフレーズがリスナーの心を癒してくれる。

MOMO SANA MINA from TWICE「Bouquet」 Making Music Video(short ver.)

 MISAMOとして本格的なスタートを切ったのは、「Bouquet」から半年後に発表したMISAMO JAPAN 1st MINI ALBUM『Masterpiece』(2023年7月)だ。本作は前述の通り、“美術”をモチーフにした作品が並ぶ。いずれもクールかつスタイリッシュな作風で、先行配信した「Bouquet」とは異なる方向性に驚いたファンも多かっただろう。

 「Bouquet」が3人の“これまで”をベースにしたものとするならば、『Masterpiece』は“これから”に重きを置いた作品だった。特筆すべきは、3人ならではのテイストを追求した点である。TWICEでは主にCHAEYOUNGやDAHYUNが担当するラップをMISAMOではMOMOが担当。彼女のキレのいいクールなフロウに加えて、つややかでコクのあるMINA&SANAのボーカルは「今までとは違う何か」を期待させた。

 これだけで十分と思えるが、サウンドメイクでもMISAMOらしさを発揮しているのが頼もしい。なかでもリードトラック「Do not touch」のインパクトは強烈だ。ギターの乾いた音色や幻想的なムードを盛り上げる軽やかなトラップ系のリズムは、TWICEの一連のヒットソングとは違った魅力がある。「名画や宝石のように鑑賞できても触れることはできない私。好きならそのときが来るまで待って」というストーリーは、恋の駆け引きを描いているように思わせつつ、本作の主題“美術”の核心に迫ったもの。自らをひとつの作品と捉え、「私たちは触れることも、手の届くことすらも許されない高貴な存在」だとアピールする。この曲を通してMISAMOの誕生を高らかに宣言したわけだ。

MISAMO “Do not touch” M/V

 続くMISAMO JAPAN 2nd MINI ALBUM『HAUTE COUTURE』(2024年11月)も興味深い作品である。前作で自らを芸術作品にたとえた彼女たちは、枠のなかでとどまっているだけでなく外へ出ようと動き出す。“作品”から“創造者”へ。鑑賞の対象から芸術を生み出す主体へと進化する3人の姿を克明に刻み込んだのが本作だ。

 象徴的なリードトラック「Identity」は、TWICEの育ての親として知られるプロデューサーのJ.Y.Parkが作詞に参加。エッジの利いたサウンドと、「ほかの誰かではなく、自身の価値や考えを尊重することで自分らしさが表現できる」というメッセージを込めた歌詞によって、アルバムのコンセプト“ファッション”の意味を際立たせる。

MISAMO "Identity" M/V

 この曲を筆頭にスーパーモデルを気取る女性を歌う「NEW LOOK」(安室奈美恵のカバーソング)、ファッションショー特有のクールな雰囲気を表現した「RUNWAY」、メンバー自らが作詞に関わったソロ曲などを収めた『HAUTE COUTURE』。こうしたインパクトのある収録曲でメンバーのクリエイティブな面を強調したわけだが、最新作となる『PLAY』では、さらに先を行くサウンドメイクに挑戦していることに驚く。

最新作『PLAY』で至った境地

 オープニングを飾るのはリードトラックの「Confetti」。スイングジャズの軽快なリズムに乗りながら、台本のないステージ(人生)を演じ切る喜びを3人は楽しそうに歌い上げる。以降も本作のキーワードとなる“演劇”を連想させる多彩なトラックが目白押しで、ときにドラマチック、ときにドリーミーにと、曲ごとに物語の世界に溶け込む歌声を聴いていると、「彼女たちはシンガーではなく役者なのでは?」と一瞬錯覚してしまう。

MISAMO 「Confetti」 Music Video

 『PLAY』は表情豊かなボーカル&ハーモニーだけでなく、カラフルなサウンドメイクもセールスポイントとなっている。「Hmm」はドラムのリムショットを効果的に使ったクールなR&B。濃厚なグルーヴでラストまで突っ走るかと思いきや、突如スタンダードジャズ風のアレンジに切り替わり幕を閉じる。「Not a Goodbye」ではベッドルームポップのような音像にチャレンジ。シンセの幻想的な音色や、前へ前へと進もうとする気持ちを応援するようなハンドクラップが心地よく響く。

 ミステリアスなムードを醸し出す「Deep Eden」も聴きごたえのあるナンバーだ。乾いたギターサウンド、きらびやかなストリングス、マリンバなどさまざまな音が交互に現れる。トラップをベースにしているようだが決してリズム一辺倒ではなく、不思議な魅力に満ちている。『PLAY』はジャズ的なアプローチが目立つ作品だが、「Catch My Eye」もそのひとつ。ここではディキシーランドジャズをピックアップ。しかしながら、そのままやるのではなくハウスやヒップホップなどをミックスして独自の世界を構築しているのが、唯一無二のスタイルを目指すMISAMOらしい。

 前作と同様にソロ曲が収められているが、こちらもクオリティの高い舞台を鑑賞し終えたような満足感に浸れるものばかりだ。MOMOの「Kitty」は、可愛らしさとアグレッシブな面を兼ね備えた姿を表現。そしてSANAは「Ma Cherry」で誰もが一度は憧れる存在となり、MINAは「Turning Tables」で欲しいものを迷わずに手に入れる主人公を演じる。いずれもJ-POPやK-POPといったカテゴライズを必要としない無国籍な音作りが耳を引く。

 『PLAY』の最後を締めくくるのは「Message」。この曲は聴き手の心にそっと寄り添い、背中を押してくれるミドルテンポのバラードで、昨年4月に映画『かくかくしかじか』の主題歌としてリリースされた。〈聞こえる Message 遠くにいても/ちゃんとあるの 今日も明日も〉〈And to you, Message/届かなくても 伝えるよきっと〉といった前向きな言葉の数々は、もちろん映画の内容を意識したものだが、アルバムのラストに置くと、最終章のエンディングのために制作したかのように思えてくるから不思議である。

MISAMO「Message」×「かくかくしかじか」SPECIAL MOVIE

 1st MINI ALBUM『Masterpiece』でMISAMOを完璧な作品としてたたえ、2nd MINI ALBUM『HAUTE COUTURE』では、他者の手によって形作られる存在(美術)ではなく、自らをデザインし表現する主体へと変わっていく。そして『PLAY』では、身体と感情をフルに使ったこの瞬間こそが、真の芸術なのだと確信し、同時にそれを見守る観客(ONCE=ファンの呼称)の重要性にも気付く――。つまり3部作を通してMISAMOが伝えたかったのは、アーティストとして着実に成長していく3人の内面の変化、そしてその原動力となるのはONCEでしかありえないというメッセージなのではないだろうか。

 今回の3部作を通して、MINA、SANA、MOMOのポテンシャルの高さが証明されたのは間違いないだろう。メンタルの面でもグレードアップした彼女たちが、今後のソロ/ユニット活動のみならず、TWICE本体の活動にも良い刺激を与えることを期待したい。

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