砂月凜々香、心奪われる歌声との出会いを求める人にこそ勧めたい 最新曲「Just take it slow tomorrow」までの歩みを辿る

 2017年にアーティスト活動を始めて以来、様々な形で圧倒的な歌唱力を示してきた砂月凜々香。地元・福岡で開催されたオーディションの賞を次々受賞し、路上ライブを精力的に重ねていた彼女は、早い段階から注目を集めていた。全国区にその名を知られる大きなきっかけとなったのは、2019年にAbemaTV(現ABEMA)で配信された恋愛リアリティショー『恋する♥週末ホームステイ Season7』への出演だろう。2022年にシンガーソングライター・優里のYouTubeチャンネル「優里ちゃんねる」で開催された『天歌一武道会』のグランプリ獲得も確かな実力を証明する機会だった。『ものまねグランプリ』(日本テレビ系)『熱唱!ミリオンシンガー』(日本テレビ)『オールスター合唱バトル』(フジテレビ系)など、地上波の番組で存在を知った人も多いはず。

瑞々しさも宿す独特なハスキーボイス

 彼女の歌の魅力はリスナー各々の捉え方があると思うが、おそらくほぼ全ての人が惹かれているのは「ハスキーボイス」だろう。瑞々しさも宿している独特なハスキーボイスを、彼女は多彩な歌唱表現に繋げている。例えば、2024年8月19日にリリースされた1stデジタルシングル「サイダー」で描かれているのは、どことなく初々しさを感じる夏の恋模様。溢れ出してどうにも止まらない恋心を描写する上で、歌声が果たしている役割はとても大きい。ハスキーボイスは要するに「かすれた声」だが彼女の歌はカサカサとした質感ではない。煌めきや潤いと常に結びついている。このニュアンスを何かに喩えるならば、よく冷えた炭酸飲料を口にした時のあの感じに近いのかもしれない。サイダーをモチーフにしながら甘酸っぱい恋を表現する上で、彼女の歌声は本当にぴったりなのだ。

 2nd デジタルシングル「キレイゴト」も、彼女の歌声に合っている。「理想の人との出会いは素敵だが、成就させるためには奪うしかない。しかし、そんなことはできない。本当の気持ちから目を逸らそうとすればするほど恋心は燃え上がり、苦しみが膨らむ」……という出口を見出せない状況が描かれているこの曲で、ハスキーボイスが表現しているのは大きく分けると2種類、「溜息に自ずと滲む切なさ」と「爆発しそうな想い」というようなニュアンスだ。前者は抑制したトーンで歌う部分で表現されていて、後者は堰を切ったかのようなサビで全開となっている。ピッチやリズムというような歌唱技法のスキルが高いだけでなく、自身の声の特性を曲に応じて効果的に発揮できるのが、単に「上手い」だけではない彼女のシンガーとしての実力なのだと「キレイゴト」を聴くとよくわかる。

【オリジナルMV】キレイゴト/RIRIKA

 現時点での最新曲、今年の8月27日にリリースされた3rdデジタルシングル「START DASH★」は、ロックサウンドとの相性の良さが示されている。楽曲提供・プロデュースを手掛けたのは、松隈ケンタ。BiS、BiSH、豆柴の大群など、WACK所属グループのサウンドプロデュースを長年にわたって手掛けてきた彼は、彼女と同じく福岡県出身。同郷タッグチームが響かせるサウンドが痛快極まりない。印象を端的に言い表すならば、シンプルでストレート。歌に関しても彼女の中から湧き上がる感情、衝動が素直に引き出されている。歌詞の内容は、胸の内にある想いそのものなのだろう。8年間のアーティスト活動を経て、改めて力強く走りだそうとしている姿が真っ直ぐに伝わってくる。「夢はひとりで叶えられるものではなく、応援してくれるみなさんがいるからこそ形になる。私の夢も、みんなの夢も、これからずっと続いていく」と、彼女はこの曲についてコメントしている。〈君と描く未来は 終わらないストーリー〉〈暗闇の中でも 君がいればいい〉など、歌詞の中に登場する〈君〉は、「応援してくれるみなさん」なのだと思う。サビで炸裂する〈ここからSTART DASHだ 飛べ遥へ〉が気持ちいい。ハスキーボイスの躍動が、まぶしい光を放つかのようだ。

START DASH★ - 砂月凜々香【Official Music Video】

 これまでにリリースされたシングルに沿って彼女の魅力を紹介してみたが、おすすめできる曲は他にもいろいろある。先述の「優里ちゃんねる」での『天歌一武道会』のグランプリ特典として優里が提供した「フタツナイアイ」は、ウィスパーに近い抑制したトーンから始まり、狂おしい感情を一気に声に滲ませるのが大きな聴きどころだ。決して離れたくない存在への愛を情熱的に表現している歌声は、大人の表情を浮かべている。その他、彼女の公式YouTubeチャンネルにたくさんアップロードされている「歌ってみた」動画も強力におすすめできる。Ado、imase、Mrs. GREEN APPLE、優里、米津玄師、Aimer、tuki.、宇多田ヒカルなどの曲を見事に表現している動画を観始めたら興奮が止まらない。

『フタツナイアイ』 acoustic ver. 優里×砂月凜々香

等身大を全力で肯定する新曲「Just take it slow tomorrow」

 そして、現時点で非常に楽しみなのが、10月17日にリリースされた新曲「Just take it slow tomorrow」。「START DASH★」に続き、松隈ケンタが楽曲提供・プロデュースを手掛けている。これまでリリースしてきたオリジナル曲とはまた別の形で歌声の持ち味が発揮されるのだろう……と書いてこのコラムを締め括ろうとした直後に資料が届き、リリース日に先駆けて聴くことができた! 瑞々しいメロディの躍動、爽やかな疾走を体感させてくれる「Just take it slow tomorrow」は、人それぞれのあるがままの姿、等身大を全力で肯定する。疲れた心に寄り添う優しさと温もり、リスナーに少しでも何かを届けたいと願う姿がありありと浮かぶ凛々しいトーンが歌声に漲っている。奮闘続きの日々の中で安らぎを求めている人にぜひ聴いてほしい。

 彼女の歌は、様々な輝きを放つ可能性をたっぷりと秘めている。心奪われる歌声との出会いを求めている人は、砂月凜々香を今すぐにチェックした方がいい。今後、ワクワクできる進化を次々遂げてくれるはずだ。

「Just take it slow tomorrow」

■配信情報
「Just take it slow tomorrow」
10月17日(金)配信
https://lnk.to/Just_take_it_slow_tomorrow

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