一息つく間も与えないほど濃厚でエネルギッシュなステージングを披露するJINに、「JINさん、走り続けてくれてありがとう」と「Run Jin」の最終回でスタッフが贈った言葉を思い出した。きっと、このライブを見届けているすべてのARMYが同じ思いだったに違いない。

　BTSを守り続けるため、応援し続けてくれるARMYのために、心を尽くし、体を張ってきたJIN。その思いの結晶が「Run Jin」というコンテンツだった。そして、その役目を十分に果たした「Run Jin」が、今度はこうしてライブという形になったことにあらためて胸を熱くしていると、JINが「みんな、この曲を知ってますよね」といたずらっぽく笑う。聴こえてきたのは「Dynamite」。ここから怒涛のBTSメドレーがスタートした。

　ARMYを喜ばせたいと動いてきたJINの口から発せられた「みんな会いたかったです。みんな愛してるよ」の言葉が持つ説得力の強さと言ったらない。そして、繰り返し〈보고 싶다〉（会いたい）と歌う「Spring day」がこんなにも切なく胸に迫ることを、この離れていた時間が教えてくれた。7人の歌声を感じながら、ステージに膝をついて心を込めて歌う姿に、思わず目頭が熱くなった。音が止んでも、客席のARMYの熱唱は続く。その愛に溢れた空気を、JINは「幸せです。本当に幸せです」と両手を広げて丸ごと抱きしめるのだった。

　クライマックスの「The Astronaut」ではカメラに向かって「チュッ」とキスをしてみせると、ステージの端から端まで走り抜け、さらに花道に寝そべり、添い寝アングルを披露するサービスも。そのまま「Nothing Without Your Love」では顔をくしゃくしゃにして熱く歌い上げた姿が印象的だった。

　そして、ARMYたちのメッセージボードが次々とカメラにとらえられると、どれほどJINと会えることを楽しみにしていたかが伝わってきた。「おかえり」「会えてHAPPY」「おかえり」「ありがとう」「好きを更新」……そして「ARMYになれて幸せ」の文字も。この風景がアーティストたちの活力の源なのだとあらためて実感した。

　その思いを受け止めたかのように「Epiphany」で始まったアンコールでは、「僕って、こんなに愛情を受けてもいい人物なのかと考えることがあります。なぜなら、まだ至らないところがある人物だと思っているからです。それでも、このように目の前で直接みなさんからたくさんの愛情を受けていると、みなさんにどうやって感謝を伝えたらいいのかといつも考えます」と語り始めたJIN。「まだまだ足りない」「最善を尽くして、みなさんが幸せであるためにいろんなことに挑戦していきたい」「ARMYがすべてです」と締めた。

　ウェーブで再び会場をひとつにまとめると、今度は「歌ってくれるARMYを探しに行きます」とおもむろにステージを降りて客席に近づくJIN。「歌、上手ですか？　真似してください！」とARMYの口元にマイクを近づけて「Moon」の一節を目の前で披露。ARMYもすっかり喉が温まっているのは言うまでもない。見事にJINの真似をしてみせたものだから、会場がさらに盛り上がる。

　そのままハイタッチをして回ると会場の歓声が凄まじいことに。その盛り上がりを受けて、ここまで見事な演奏を披露してきたバンドメンバーも縦弾きや寝っ転がったりと、大はしゃぎ。「いいぞ、いいぞ」の連続。「ライブはやっぱりこうでなきゃ」というお祭り状態へと突入した。これもJINの醸し出す柔らかな空気と包み込む愛情深さがあればこそ実現した風景なのだろう。アミボムを振りながら、最後の瞬間まで会場中を走り抜けて「To Me, Today」を歌う背中に、ますますBTSの長男としての頼もしさを感じずにはいられなかった。

　「僕は退勤〜！」と大ジャンプをして走りながら帰っていく時の足取りが最も軽そうだったのには笑ってしまったが、それがARMYとしては何よりも嬉しいはず。JINが元気に駆け抜けてくれることこそが、ARMYにとってはいちばんの幸せなのだから。同ツアーはアメリカ、イギリス、オランダなど全9都市、18公演を開催予定。世界中のARMYに会いにいくため、JINはまだまだこれからも走り続ける。