2025.05.30 17:00

iriが遂げた進化の真相と挑戦の足跡をたどる　EP『Seek』で証明された無二の個性、そして開かれた未来

　そして、30代を迎えて最初のパッケージ作品でもある新作EP『Seek』は、自身の足跡を総括したiriが国内外で活躍する気鋭のプロデューサーたちと生み出した新しい意匠のサウンドで身を包み、開かれた未来に一歩を踏み出した作品だ。

iri EP「Seek」Teaser

　デンゼル・カリーやWILYWNKA、SIRUP、MAZZELらを手掛ける日系オーストラリア人プロデューサーであるTaka Perryとの初顔合わせとなるオープニングナンバー「Butterfly」は、ローファイヒップホップのビートとアルベジオギターが心地好いメランコリアを紡ぐとともに、穏やかな歌声によって作品のテーマである“新たな旅立ち”に期する心情が描かれている。

iri - Butterfly (Music Video)

　2曲目の「harunone」では、KID FRESINOや君島大空のバックを務めるほか、ジャズからメインストリームのポップスまで多方面で活躍するギタリストの西田修大とドラマーの石若駿をフィーチャー。バンドサウンドの緩急がついたグルーヴ上でラップを交えたボーカルが躍動させると、続く3曲目の「river」はクリエイティブコレクティブ／レーベル・w.a.uファウンダーにして、R&BシンガーのVivaOlaやラッパーのWez Atlasら、新世代アーティストを手掛けるプロデューサー／ビートメイカーのKota Matsukawaとマッチアップ。モダンなR&B感覚を下敷きに、メロウなピアノが印象的な前半パートの穏やかな流れが後半に向けて加速し、エモーションを増幅する。そして、作品を締め括る「otozure」は新しい季節の訪れを予感させる一曲。長年にわたって、iriの作品にフレッシュなエッセンスをもたらしてきたDJ／プロデューサーのTAARが叙情的なサウンドスケープを浮かび上がらせる現代的なアンビエントハウスチューンによって、新たなトライアルを後押ししている。

iri - river (Music Video)

　2016年のデビューから来年10周年を迎えるiri。歌とラップを巧みに使い分け、バンドでのライブ性を極める一方、多彩なトラックを乗りこなしながら、自身の多面的な音楽性の落ち着く先を常に模索してきたが、その試行錯誤は多彩な楽曲を取り揃えた本作『Seek』においても変わることはない。

　そして、特定のジャンルやトレンドに寄りかかることなく、変わらずに変わり続けてきたことによって、その多面性が唯一無二の個性として日本の音楽シーンで強い光を放つに至った孤高の長距離走者の挑戦はこの先も続く。