病を宝石に変える歌の力を見せてくれた「Topaz Love」（2018年）

　2017年6月に剛が発症した突発性難聴は、KinKi Kidsにとって大きな危機だった。同年7月にはCDデビュー20周年記念公演が控えており、周年イベントが次々と予定されているタイミングだったからだ。しかし、それでも2人は心を乱すことなく、そこには「それぞれができることをやるだけだ」という表現者としての覚悟を見た気がした。

　記念公演には光一1人で出演。剛は耳の状態を考慮して、別の場所から中継で参加することになった。その前日に、光一は未完成だったこの曲を剛に聴いてもらうことを思いついたという。公演の最中に剛がメロディを聴き、歌詞を紡ぐ。歌が生まれる瞬間をファンと共有するという新たな景色を見せてくれたのだ。

　綴られたのは、突発性難聴を患った剛ならではの言葉たちであったことから「突発Love」と命名された。そして、その音を活かす形で「Topaz Love」へと昇華。病を磨き上げてトパーズという宝石にしてしまうあたり、彼らの粋と才覚を感じずにはいられない。まさに病めるときも健やかなるときも、ともに歩み続けることに迷いのない2人だからこそ生み出すことができた楽曲なのだ。

　そんな背景に思いを馳せながら、ぜひ聴いてほしい。すべてを受け入れた上で歌い続けることを諦めない剛のひたむきな歌声に、様々な思いを絞り出すように歌う光一の頼もしい歌声が、苦しいほどにこの曲の本質を表現している。長い人生を生きるなかで、誰しもが自分ではどうしようもない事態にぶつかる瞬間に出会う。そんなときにも奮い立たせてくれる歌となるだろう。

KinKi Kidsは素晴らしいと歌いたくなる「Amazing Love」（2022年）

　KinKi Kidsは長年、年末年始にライブを開催してきたことから、冬を連想する名曲が多いイメージを持たれているかもしれない。だが「ジェットコースター・ロマンス」（1998年）や「夏の王様」（2000年）のように爽快な夏ソングも、これからの時期にはおすすめだ。なかでも、「Amazing Love」は堂本剛が『どんなもんヤ！』で「夏をすごく感じる」と話していた楽曲。

　「硝子の少年」「ジェットコースター・ロマンス」を手掛けた山下達郎が作曲し、作詞はKinKi Kidsが手掛けた本曲。「これ2人で（歌詞を）書けないのかな？　書きたい、書けたら書きたいよね」とスタッフに持ちかけたのだと『どんなもんヤ！』で剛が明かしていた。

　「あの光一がくれた〈Magic Time〉っていう言葉、あの言葉もすごいよかったし」「光一が打って、僕が打って、休憩して、みたいな。ずっとやりとりして、3時間ぐらいで結果書いたよね」とも。そんな剛の言葉に、光一も「2人の思う曲へのアプローチっていうか、方向性みたいなものがズレずにいれた部分があったから、お互いが出してくるワードっていうものが勝手に合体していった」という話にも痺れたが、制作過程で2人が「“達郎節”をどのくらい入れるか」とモノマネをしていたというエピソードも、音楽作りを楽しんでいる彼ららしくて笑ってしまった。

　空に突き抜けるような気持ちよさを感じる、〈La La La La La La〉という伸びやかな歌い出し。そして〈出逢ったその瞬間に〉からは、2人のハーモニーにふわふわと漂う気分に。だが、次の〈不安かもしれない〉のところで、思わず「ん？」と聞き耳を立ててしまう。実はこの部分は2人で「不安か」「も」「し」「れ」「ない」と歌い繋いでいることがわかる。「薄荷キャンディー」でも感じた、2人の歌声が溶け合う心地よさが、まさに〈It’s a Magic Time〉だし〈素晴らしいことだろう〉と言いたくなる楽曲。ぜひ、心のなかでいっしょに〈La La Love！〉と歌い上げてほしい。

※1：https://x.com/takashi_mtmt/status/1556541953906712576