BTS JUNG KOOK、SEVENTEEN JEONGHANらも有する余韻のバリエーション

　BTSのメインボーカル、JUNG KOOK。グクミンの呼び名で愛されるJUNG KOOKとJIMINが2023年12月の入隊前にニューヨーク、済州島、札幌を巡った2人旅番組『Are You Sure?!』（ディズニープラス）を観ると、JUNG KOOKにも同じように署名的な癖が認められる。JUNG KOOKによる食レポで「うわっ」に近い響きを耳にできる札幌編の第6話、市内で一泊したグクミンが朝食を求めてラーメン屋に入る。辛味ラーメンのスープを一口飲んだJUNG KOOKが「うわあぁ……」と発する。渡辺の「うわっ」に対してJUNG KOOKの「うわあぁ……」は感嘆の吐息まじり。「うわっ」の余韻型バリエーションと命名しておく。その証拠に「すぐに外の空気を吸わないと」と言ってラーメン屋を出て外気に触れる瞬間、さっきの「うわあぁ……」を見事な余韻としながら、JUNG KOOKの（歌唱時のフレージングとリンクする）息遣いが透き通る雪景色とのオーガニックな空気感を可視化しているのだ。

　日韓スターがソウル市内を散策する旅番組も参照しておく。2024年に30歳の節目を迎えた山﨑賢人とSEVENTEENのJEONGHANが再会する『山﨑賢人×JEONGHAN 奇跡旅in韓国』（Huluオリジナル）だ。2人が最初に入るカフェの場面。テラス席に座る山﨑がアイスアメリカーノをストローですすり「んめっ」と発する。これは食レポ中の山﨑の癖なのだが、JEONGHANがその音の響きから牛の鳴き声を連想して「んめぇ〜」と発する。JEONGHANは相手の癖を瞬時にリメイクする鋭敏な語感の持ち主である。SEVENTEENの日本語歌詞曲「CALL CALL CALL!」ではコーラス前、彼の担当フレーズ〈疲れ果て〉で「てぇ」と語尾に余韻を残しながら、次のフレーズ〈その胸が〉にシームレスにつなげている。ボーカリストとしてのJEONGHANもまた母音の語感を活かしたフローを聴かせどころにしている。

　渡辺にもまた母音「え」の余韻を感じさせる歌唱がある。中村アンと共演した『青島くんはいじわる』（テレビ朝日系）主題歌であるSnow Man「君は僕のもの」を『THE MUSIC DAY 2024』（日本テレビ系）でテレビ初披露した時のこと。目黒とのデュエット風で〈いじわるだね〉と指差しながら、「ねぇ」と余韻を残す。Cメロ最後の〈照らしていて〉を「てぇ」と伸ばす。ダブル余韻でも弛緩しないボーカルフローを作っている。ラスサビの「Oh yeah」では伸びやかなロングトーンにつなげる。あるいは、2024年大晦日に行った『Snow Man Special Live〜みんなと楽しむ大晦日！2024 - 2025〜』3曲目に披露された「君は僕のもの」では、渡辺の歌い出し後半のフレーズである〈嘘みたいなエピソード〉の母音（「たぁ」）にアクセントが置かれ、これまでの歌唱とは一味違うアレンジが加えられていた。配信ライブとはいえ、序盤からすでにメンバーの額が汗ばみ、息が上がるフレージングのライブ感が高まることで、サビの〈Nobody 君の代わりはいない〉には、その年一番の切実な歌唱をこめる渡辺翔太のハイライトを見た気がする。

　Snow Manの冠番組『それSnow Manにやらせて下さい』（TBS系）にも、美容キャラの渡辺＆美容友達のMattによるビビりコンビが不老不死の食材を探索する2人旅企画があり、同企画初の海外ロケとなる2024年10月25日放送回では向井も加えた3人でタイへ。初っ端から象に泥パックを塗って「うわぁは〜」、無人島の洞窟内で「うわぁぁあ」と絶叫するなど、芸人並みのお笑いポテンシャルがある向井を協力者としながらタイ各地で「うわっ」がどんどん増幅される。この増幅効果がロングトーンの歌い手である渡辺の持続力の奥義かもしれない。

　JUNG KOOKの「うわあぁ……」にしろJEONGHANの「んめぇ〜」にしろ、単なる癖だとあなどってはいけない。それは彼らの署名であり、ボーカリストたちによるフレージングやフローの文体（スタイル）であり、豊かな母音が余韻となって独立した美メロ型のバリエーションなのだ。