岸谷五朗&寺脇康文が語る『Act Against Anything』の意義 深い絆の根源も「価値観が同じなんだと思う」

集合体としての思いを寄付金という形で届けたい(岸谷)

――『VOL.3』の開催にあたって、おふたりのあいだではどんなやり取りがありましたか?

寺脇:ひとつルールとしてあるのは、「五朗ちゃんと僕の知ってる方に出てもらう」ということなんです。「誰に出てもらう?」というキャスティングの話からいつも始まりますね。

岸谷:出演交渉をするにあたっては、「長く続けるのって大事なんだな」と感じています。出る/出ないはさておき、「30年やっている『AAA』というイベントがあって……」と話し始めるとみんなが「ああ、あれですね!」とすぐわかってくれるんです。ゼロから説明しなくても一発で通じるから、話が早い。今回は初めて出てくれる方も多いんですが、ロバートの秋山(竜次)くんにしても堂本剛くん(.ENDRECHERI.)にしても、すべてを語らずともわかってくれましたから。長くやってきてよかったなと。

寺脇:もちろん実際の出演交渉は事務所を通すんですけど、本当に始めたばかりの頃は個人的に電話して直接お願いしてたんです(笑)。でも、いまだに大黒摩季さんだけは例外で。彼女が僕たちの芝居を観にきてくれた時に、楽屋口で五朗ちゃんが「摩季ちゃん! 摩季ちゃん! 武道館よろしく!」「……はい!」ってどさくさ紛れのオファーをしてました(笑)。

岸谷:はははは!

寺脇:それに応じてくれる摩季ちゃんはすごいよ(笑)。

岸谷:これまでの信頼関係があるからね(笑)。それに、今世界で困っている人たちや苦しんでいる人たち、戦争で泣いている子供たちを救いたい気持ちはみんな一緒だと思うんです。

寺脇:それはもちろん演者だけではなく、集まってくれるお客さんや協力してくれるスタッフも含めてね。みんな、本来の仕事を抱えながら『AAA』をやっているんです。

岸谷:エンターテインメントを通じてその全員が気持ちをひとつにして、集合体としての思いを寄付金という形で届けたいと思っています。ひとりでも多くの方に集まってもらいたいです。

寺脇:絶対にほかでは見られない特別なショーになりますので、必ずや「観てよかったな」と思ってもらえるはずです。出演者、スタッフ、観客の全員で「世界を少しでもよくしていこう」という大それた思いを持って臨みたいですね。

――一人ひとりの力は微々たるものかもしれないけど、大それたことを思ってもいいんだと。

寺脇:もう思いましょうよ、ってね。

40年続く絆は「役割が違うからうまくいってるんだろうな」

――でも、おふたりの仲は本当にいいんですね。

寺脇:もしひとつ五朗ちゃんに不満があるとしたら、「前にあそこの店行ったことあるよね!」と話した時に「いや、行ってない!」と言い張るところですね。「僕じゃない誰かと間違えてるんじゃない?」の一点張りなんだけど、いざそのお店に連れていくと「きてたね!」って(笑)。あれだけはちょっと勘弁してほしいですね(笑)。

岸谷:お店に行くまで思い出せないんだよね(笑)。寺ちゃんはね、無意識の鼻歌をやめてほしい。

寺脇:あはははは! 僕、鼻歌を歌うらしいんですよ。

岸谷:お寿司屋さんのカウンターとかでも、ずっと鼻歌歌ってるんですよ。会話もしてるんだけど、合間に「ふっふ〜ん♪」って(笑)。不満といったらせいぜいそれくらいかな。大きな不満は全然ない。

――本当に相性がいいんですね。しかも、なかなかほかでは聞いたことのないレベルというか。

岸谷:ふたりでテレビに呼んでいただいたときなんかは、もちろん楽屋は別々で用意されるんですけど、局に入って5分もしないうちに寺ちゃんが荷物を持って僕の楽屋にくるんですよ。この人、自分の楽屋を使わないんです(笑)。

寺脇:同じ仕事で近くにいるのに別々の部屋にいるのが違和感あるんですよね。

岸谷:別々である必然性がない。

寺脇:そうそう! 舞台で地方の劇場へ行ったりすると、気を遣ってくださって別々の楽屋を用意してもらうんですけど、「なんで別なの?」って。一緒にしてもらいます。

岸谷:部屋がひとつ空くから喜ばれるよね! そのぶん、ほかの役者さんが広々と使えますから。

――お笑いコンビの場合に喩えると、おふたりくらいの世代は「仲よく見せるのはかっこ悪い」という感覚が主流だったんじゃないかと思うんですよね。

岸谷:ああ、たしかにそうですね。でも、我々はむしろ仲良しアピールしたいと思ってる(笑)。

寺脇:こうやって8時間飲んでるのを自慢するくらいだから(笑)。それに、ちゃんと利点もあるんですよ。たとえば地球ゴージャスの公演をやる時に、出てくださる役者さんたちが僕たちの仲のよさを見て信頼感を持ってくれて、安心して輪の中に入ってきてくれるんです。よく言われるのが、「五朗ちゃんがお父さんで僕がお母さんだよね」って。だから「ちょっとお父さんに言うのは怖いけど……」ということは僕のところに相談してくれたり(笑)。

岸谷:(笑)。

寺脇:でも、お父さんの言うことは聞く、みたいなね。もしふたりともお父さんみたいだと、それもまたちょっと違うと思うんですよ。役割が違うからうまくいってるんだろうなあ。

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