2024.11.15 18:00

徳島から全国へ、路上で注目集めるシンガー丸山純奈　本格始動の赤レンガ公演は忘れられない一夜に

文＝上野三樹、写真＝日吉”JP”純平（ライブ写真）

　中盤以降もオリジナルの新曲をずらりと並べたセットリストで魅了していくのだが、切ない恋心をメロウなサウンドで届けた「Bye&Hi」や、しっとり歌い上げるバラード「Petrichor」など、じっくり聴かせる楽曲が多かった前半と比べ、後半はバンドサウンドでのアップナンバーが多かった。バンドの音と共に駆け上がっていくようなメロディが印象的だった「満ちて欠けて」では、エモーショナルで新鮮な一面を見せ、観客も雨なんて気にせず今を楽しもうと言わんばかりに立ち上がり、声援を送り、盛り上がる。ドラマチックな曲調にハンドクラップが起こった「そばの明かり」では飛び跳ねながら歌い、「まだまだ行きまーす！」と笑顔で叫ぶと、続けて披露した「大人」では自らと聴き手を鼓舞するようなメッセージとメロディを力強く届けた。

　そしてこの日、一番の熱量で歌いきったのはラストの新曲「シツレンカ」だった。〈あぁこれが失恋か／巷でよく聞く失恋か〉というサビのリフレインが印象的な、切ないポップナンバーだが、遊園地から宇宙へとシチュエーションが飛躍するようなどこかファンタジックな描写がチャーミング。それでいて、歌手になりたいと志した幼い頃からずっと全身全霊で歌と向き合ってきた、彼女のひたむきな歌声に心打たれる1曲である。風に煽られてステージの中まで降り注ぐ雨にも負けず歌った全11曲。レインコート姿の観客たちを見渡して「このライブ、絶対に忘れないですよね！」と語る、記念すべきデビュー前夜となった。

　徳島から上京し、関東近郊を中心に各地で路上ライブを繰り広げてきた丸山純奈。そうした地道な活動がひとつの実を結び、今回のワンマンライブの成功と配信シングルのリリースに至ったわけだが、いよいよこれからの本格始動が楽しみだ。何より今回のライブで新曲をたくさん披露してくれたように、丸山純奈というシンガーのエモーションの在り処をどんどん見せてくれるような活躍に期待したい。