2024.09.27 12:00

琴音、5年間で重ねてきた経験と新たな可能性　原点と今を繋ぐニューアルバム『成長記』を語る

文・取材＝もりひでゆき、写真＝秋倉康介

丸谷マナブ、永山マキ、山本加津彦とともに紡いた楽曲たち

――続いては「多面体」。作詞は琴音さんと丸谷マナブさんの共作、作曲とアレンジを丸谷さんが手がけられています。これもかなり斬新な印象の曲だなと。

琴音：面白い曲になりましたね。これは作詞が大変でした。最初、歌詞が全然書けなかったので、丸谷さんに仮で書いていただいたんです。それを読んだ上で、私がまた全然違った内容の歌詞を書いたっていう、ちょっと変わった書き方をしました。最終的には、人が持っているいろんな顔に向き合っていきたいという思いを紡いだ感じです。

――Bメロはメロディというより、フロウと言ったほうがマッチしそうな歌になっていますよね。琴音さん的にはそういうラップっぽいアプローチってルーツにあったりするんですか？

琴音：自分の根っこにはおそらくないと思います。ただ、ラップ調のパートを盛り込んだポップスって普通になってきているじゃないですか。なので、いろんな音楽を聴いて吸収してきたこの5年間の中で、自然と付加された表現のひとつのような気はしますね。実際、レコーディングをする際にも、「このラップの部分どうしよう」みたいな感じになることはなく、ナチュラルに歌えたと思います。

――次の「Wrong」も作詞は琴音さんと丸谷さんの共作、作曲とアレンジは丸谷さんが手がけられています。ちょっとR&Bっぽい雰囲気がある曲ですよね。

琴音：そうですね。私自身、こういう曲調が好きなので、仮のメロディをいただいたときには、「あ、私もこういう曲やっていいんだ！」みたいな嬉しい気持ちになって。だから歌詞もスラスラと書けました。

――ボーカルの雰囲気も斬新ですよね。

琴音：この曲ではちょっとボーイッシュな雰囲気で歌うことを意識したんですよ。完全に男性の声にはならないんですけど、ちょっと中性的な要素を含ませられたらいいなと思いながらレコーディングをしましたね。

――歌詞はラブソングにも受け取れますが……。

琴音：実はお友達との関係を書いたんですよね。そのお友達がちょっと心を病んでしまったことがあったんですけど、そのときに何か手助けをすることができたんじゃないかっていう気持ちになったんです。「もしあのとき、私が気持ちを引き出せていたら」「もし、こういう行動を起こせていたら」っていう気持ちがどんどん浮かんできて、何もできなかった自分に対して後悔の念がすごく残ってしまって。そのことをちょっと恋愛的な書き方で歌詞に落とし込んでいきました。自分の思いを歌にすることで消化したかったのかもしれないです。

――5曲目「夜明け前」は永山マキさんが作詞作曲を、6曲目「狭いソラ」は山本加津彦さんが作詞作曲からアレンジまで手掛けた曲ですね。

琴音：「夜明け前」はもう、めちゃくちゃいい曲ですね。永山さんとお話しさせていただいたとき、この曲は仲間たちと離れていく青春の瞬間をイメージして書かれたとお聞きしたので、どこか懐かしいような、そして切なく、心温まるような歌い方をしようと、セルフディレクションをめちゃくちゃ頑張ってレコーディングに臨みました。歌詞の1文字1文字にニュアンスを書き込むくらいの勢いで。もう1曲の「狭いソラ」は後半のハイトーンが大変ではあったんですけど、すごく感動的な曲になったと思います。私はこの5年間、折々でバラードを歌ってきましたけど、そこにまたひとつ大切な曲が増えました。提供してくださった山本さんは、この曲をピアノを弾きながら流れですぐに作ったとおっしゃっていて。こんなにも素敵な曲を勢いで作れてしまうということに、だいぶ驚いてしまいましたね（笑）。

ワンマンライブ『琴音 Live 2025 - 成長記 -』への意気込みも

――その後は提供曲が続きます。そしてDISC-1のラストには「成長記」という1曲が。これはデビュー前に作られた曲だそうですね。

琴音：はい。15歳くらいのときにはすでにありました。YouTubeにはライブ映像がアップされているんですけど、CDにも収録してほしいという声をずっといただいていたので、今回ようやくそれが実現できたことが嬉しいです。5年という節目に出すのがちょうどいいタイミングなんじゃないかなと思って。

――曲自体はどんな思いで書かれたものなんですか？

琴音：この曲を書いたのは、もうすでにオリジナル曲を何曲か持っている状態で、弾き語りで活動している時期だったんですよ。そのときに自分が感じていることは一瞬一瞬で全然変わっていくものなんだなっていうことを感じ取っていた自分がいて。その感覚を、写真を貼るアルバムのように、ひとつの成長記録として曲にしたいなと思ったんですよね。きっと10年後、20年後には自分の感性も変わっているところがあるはずだから、そのときの思いを曲にしておけば、それがひとつの指標にもなるんじゃないかなって。なので、できる限り自分の内省、自分の視野みたいな部分を言葉として紡ぐことを意識して書きました。

――曲の最後に出てくるフレーズ。〈あぁ「あなたに出会えてよかった」と／そんな人になれるように〉という思いは年月を経ても変わらず琴音さんの中にあるんじゃないですか？

琴音：そうですね。そこは確かに変わらないですね。私に出会ってくださった人がみんな、そう思っていてくれたらいいなって心から思います。

――年明け1月には神奈川と地元・新潟でワンマンライブ『琴音 Live 2025 - 成長記 -』が決定しています。

琴音：私、このライブをするときには23歳になってるんですよ。おそらく23歳一発目になるであろうワンマンライブなので、根本の気持ちはいつもとそんなに変わらず、でもまた新しい挑戦ができたらいいなとは思っていますね。ライブにも『成長記』というタイトルをつけたので、来てくださるみなさんに「琴音、成長してるな」と思ってもらえるライブができるよう頑張ろうと思います。

――アルバムのDISC-2には昨年開催された『琴音 Live 2023 - 君に -』大阪公演の音源が収録されていますが、それとはまた違った趣のライブになりそうですよね。

琴音：そうですね。今回はバンドの方々に入っていただくので、バンド編成ならではのことができたらいいなと思っています。ここ最近、イベントにたくさん出演させていただいていることで、自分でギターを弾く機会もすごく増えたんです。なので、今まで以上に琴音が前に出ているというか（笑）、私主体で動いているんだぞと感じてもらえるライブにしたい気持ちがありますね。ぜひ楽しみにしていてください。

■リリース情報
『成長記～Now＆Best（2018-2024）～』
2024年9月18日（水）リリース
価格：4,950円（税込）

＜DICS-1＞
01.Heaven
02.image
03.多面体
04.Wrong
05.夜明け前
06.狭いソラ
07.君に
08.ライト
09.Brand New World
10.君は生きてますか
11.Hands
12.白く塗りつぶせ
13.ここにいること
14.翼をください
15.明日への手紙
16.成長記

＜DISC-2＞
『琴音 Live 2023 -君に-』（あいおいニッセイ同和損保ザ・フェニックスホール [2023/7/6]）
01.優しい予感
02.ここにいること
03.しののめ
04.ラブレター
05.君は生きてますか
06.あなたのようになるために
07.ライト
08.Brand New World
09.Love Birds
10.波と海
11.真価論
12.戯言～ひとりごと～
13.きっと愛だ
14.音色
15.願い
16.君に
17.夢物語