Earworm、等身大な“青春”を体現する10代バンド ミセスやワンオクに憧れて目指す大きな舞台

 Earwormというバンドを知っているだろうか。2021年に高校の軽音楽部で結成され、今年の春、メンバー揃って無事卒業。いよいよ本格的な活動を開始した4人組である。10代らしい青春を描きながら、その奥にある孤独や憂いまでをも浮かび上がらせる歌詞と、早くも大きなステージの画が浮かんできそうなアレンジとメロディ。現時点で聴ける楽曲は数少ないが、そこには大きなポテンシャルが眠っているように思う。

 8月にリリースされる通算3曲目「僕の歌」は、そのポテンシャルに対する予感をさらに強めてくれる楽曲だ。これからきっと多くの人の耳に届くことになるだろう彼らの音楽に、今のうちにぜひ触れてほしい。堀内結弥(Vo/Gt)、モリヤマソウタ (Gt)、吉川煌也(Ba)、坂本晴琉(Dr)の4名に結成からこれまでのことを語ってもらった。(小川智宏)

軽音部での出会いからEarworm結成まで

ーーEarwormは軽音楽部で出会って結成したんですよね。

堀内結弥(以下、堀内):そうです。入部すると最初に「見極め」というものがあって、先輩たちが新入生を選んでバンドを組ませるんです。それで先輩たちが教えていって8月くらいに発表するっていうのが毎年行われていて。

ーーへえ!

堀内:僕は別のバンドでしたが、残りの3人は他のボーカルとバンドを組んでいて。でも、やりながら「この人、うまいな」みたいなメンバーを探すんですよ。それで僕が晴琉のドラムが上手いことを発見して、そこから「この人もいるよ」ってメンバーを紹介されてEarwormを結成しました。

ーーそれまでは別のバンドでやっていたけど、もっといいメンバーがいるんじゃないかと。

堀内:いや、自分のバンドもめっちゃよかったんですけどね。

ーー坂本さんは堀内さんから声をかけられてどうでした?

坂本晴琉(以下、坂本):バンドがランキング形式で発表されるんですけど、(堀内のバンドは)1位だったんですよ。率直にすごい人だって思ったし、誘われた時もピンときましたね。

ーーそのときからEarwormというバンド名だったんですか?

堀内:そうです。バンド名を考えようってなってーー。

モリヤマソウタ(以下、モリヤマ):でも最初は「アスファルト」でいいやんってなってたんですけど(笑)。

ーーアスファルト?

堀内:本当に名前が浮かばなくて。学校から帰っているときに「目に見えたもん全部言っていこう」となって「アスファルト、いいやん」って。

モリヤマ:よくねえよって(笑)。

堀内:で、耳に残る音楽を作りたいなと思って検索したら「Earworm」っていう現象があることを知って。じゃあそれをバンド名にしちゃおう、と。

ーーすごくいいバンド名ですよね。意味がちゃんとあるし、意外と誰も使ってない言葉だし。4人でやり始めたときから手応えはあったんですか?

堀内:でも、ベースとギターは初心者だったんですよ。

吉川煌也(以下、吉川) :高校に入ってから始めたんです。

堀内:最初はぼちぼちって感じでしたね。「がんばっていこう」って言いながらやってました。

ーー2人は高校に入るまでバンドはおろか、楽器もやっていなかったということですか?

モリヤマ:触ったこともなかったです。

ーーそれって結構すごくないですか? 楽器歴3年ってことですよね。

堀内:そうなんですよ。この3年間、本当にがんばってくれたなってすごく思う。

ーー最初からオリジナルの曲をやると決めていましたか?

堀内:僕はそう考えていて。もちろん最初のほうはコピーもしていたんですけど、徐々に……周りのバンドがすごかったんですよ。オリジナルをバンバン作るやつがいたので、それに負けないように曲を作り始めました。

堀内結弥

ーー最初のオリジナル曲はどんな曲だったんですか?

堀内:それが今配信されている「陽炎(かぎろい)」という曲で。

ーーああ、あれが最初の曲なんですね。

坂本:自分たちの曲がそれまでなかったんで、まず新鮮というか、嬉しい気持ちがありました。

モリヤマ:でも「弾けんのこれ?」と思った(笑)。

吉川:うん。クオリティが高くて「やばっ」ってなったし、「大丈夫かな?」っていう。そういう不安がいちばん大きかったですけど、それと同じくらいワクワクもしましたね。オリジナルでやるんだっていう期待というか。

ーーなるほど。でも、ふたりが経験者、ふたりがビギナーというなかでバンドを、しかもオリジナル曲でやっていくって難しくなかったですか? どこまで言っていいのかとか、どうしたらうまくできるのかとか。

堀内:めちゃめちゃ考えました。どうやったらうまくなるんだろう、どうやったら僕ら経験者のレベルに二人がついてこれるんだろうって。やっぱり曲を作っていく上で、作曲者として「こういうフレーズがいい」っていう自分の理想と、実際に弾けるフレーズは別なので。そこでグレードは下げたくないけど、やっぱり演奏力に合わせていかないとっていうところですごく考えましたね。

ーー結構厳しくやったんですか?

堀内:そうですね。「がんばって!」って(笑)。でも最初は「陽炎」とかも全然弾けてなかったので。怪しい状態のままずっと突っ走っていたところもあって、やっと今になって徐々に……まだまだですけど、ちょっとずつ完成してきました。

ーーこのバンドでいけそうかもって思ったのはいつ頃でした?

堀内:僕は3年の文化祭ですかね。

坂本晴琉

ーー結構最近じゃないですか。

モリヤマ:(笑)。

堀内:やっぱりそこまでは悩んでいて。僕はもともと売れる気だったんですけど、やっぱり本気でやるとなったときに「このメンバーでやったら実力が周りに追いつくまであと何年かかるんだ」って考えた時期が正直あったんです。メンバーを変えるのがいいのか、それとも僕自身が抜けて別のバンドで実力のあるやつを集めてやったほうがいいのか、みたいなことも考えたんですけど、その文化祭に向けた練習で感じた音圧がーー結構そこでみんながんばって、グッと変わったんですよね。成長したっていうのを音で感じて。「あ、なんかいけそうだな」って思いました。2人の本気度を感じましたね。

吉川:文化祭、2年の時は3年生がメインだったので出られなかったんですよ。で、3年生になって、卒業の時と、文化祭と合わせてあと2回しかライブがないみたいなことを思って。「ここでちょっとがんばろうかな」っていうのは少し変だけど、悔いがないようにやろうって思っていました。

モリヤマ:僕は、そんな真面目な感じではなくて。「どうせ最後だからやりたいことを全部やっちゃえ」と思って、客席のほうに行ったりとか、いろいろやってました。でも客席のほうに行くからには下手な演奏はできないと思って。いつも以上に気合いを入れて練習しましたね。

ーーそれが堀内さん的にはグッと来た。

堀内:そうですね。ちょっと「お!」ってなりました。急にうまくなったので、がんばったんだなって。

ーーこの4人だからこそ生み出せるものもあるんでしょうね。

堀内:そうですね。いろいろ考えていた時もありましたけど、ギターはソウタじゃないとダメだし、ベースは煌也じゃないと絶対この音色は出ないんだろうなと思って。この4人があってこの音が出てるんだなっていうのは、どうしても捨てきれなかったですね。

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