韓国初開催『Asian Pop Festival 2024』に行ってきた(前編) ラインナップから環境まで最高のフェス

土井コマキのアジア音楽探訪 Vol.5

 6月22・23日に、韓国・仁川のParadise Cityというリゾート施設で、今年初開催されたフェス『Asian Pop Festival 2024』に行ってきました。来年はみんなで行きましょうよと声を大にして言いたい! あらゆる面において最高のフェスでした。

 弘大のライブハウスのサーキットイベント『LIVE CLUB DAY』との連動企画として、2017年にスタートした『ASIAN POP STAGE』。そのスタッフが会社を立ち上げてまで始めたのが、この『Asian Pop Festival 2024』です。日本からは、カネコアヤノ、坂本慎太郎、水曜日のカンパネラ、never young beach、betcover!!、ペトロールズ。思わず唸ってしまう絶妙なこの顔ぶれを見た時に想像するのは、韓国や他の国の出演者たちも、おそらくライブハウスが主戦場で演奏の実力がある、こだわり抜かれた個性派揃いなんだろうということです。期待が高まります。そんなライブハウスの匂いがするであろうアーティストを、ゴージャスなリゾート施設で見るというスペシャル感! 面白いですよね(関西の方には伝わるかと思うのですが、『OTODAMA ~音泉魂~』をハイアットホテルで開催するみたいなイメージです)。

 そう、本当にびっくりするような豪華で快適なロケーションでした。ホテル、レストラン、スパ、屋内遊園地、カジノまであるParadise City。草間彌生の巨大な黄色いカボチャや、KAWSのキャラクター・コンパニオン2体のなんと身長6メートルもある木の彫刻など、アートピースがあちこちに普通に飾られているんです。凄すぎる。その施設の中にステージが4つ。広大な芝生に組まれた唯一の屋外ステージが「PARADISE STAGE」、その芝生に面したライブハウスが4,000人収容可能な「CITY STAGE」、お酒を楽しみながら近い距離で生演奏を楽しむバーラウンジが「RUBIK STAGE」、アジア最大級のクラブを使った「CHROMA STAGE」。それぞれ適した音楽性がハッキリしているので、それぞれのライブアクトの良さをちゃんと楽しめました。これって数多あるフェスにとって、物理的な制限もあり意外と難しい部分だと思うので、最高だなと! もちろんトイレやレストランなどそもそもの環境が整っているし、疲れたら涼しいところで休むことができます。観光も兼ねたい我々のような海外勢にとっては、フェスご飯以外に、ビビンバ、冷麺、キムチチゲ、チヂミなど韓国の食をアレコレ楽しめるフードコートがあるのが嬉しいし、カフェでタッチパネル式のオーダー方法に手こずるのもまた韓国に来たんだなという嬉しい困り事だったりします。

メインゲート
PARADISE STAGE
CITY STAGE
RUBIK STAGE

 さて、このラインナップの中で韓国の人たちは誰を楽しみにしてるのかなと思い、お客さんに声をかけてみた。思い思いのフェス飯を買ってきて、地面に輪になって座って写真を撮っていた8人グループ。彼らは大学生で音楽サークルの仲間で、カネコアヤノ、never young beach、betcover!!など日本の曲のカバーもよくするそう。だから見るのが楽しみだと話してくれました。坂本慎太郎に至っては、ゆらゆら帝国をよく聴いているとのことで、リアルタイムでファンだった私は感激してしまいました。韓国のアーティストでは、まず真っ先に教えてくれたのがKIMCHANGWANBAND。フェス2日目の大トリ、バンドサウンドを楽しむ環境がしっかり整っている屋内のライブハウスステージに出演。レジェンドだから絶対に見たほうがいいとオススメしてくれました。

KIMCHANGWANBAND

 KIMCHANGWANBANDは俳優でもあるキム・チャンワンのバンド。大変失礼ながら韓国ドラマをあまり見ない私は存じ上げなかったのですが、とっても有名なベテランの大俳優で、うちの母も知っていました。優しいお爺さんも、極悪人もどちらも演じることができる方。しかもバンド活動も長くされていて、その曲は教科書に載るレベルなんだとか。どおりで会場の全員がずっと大合唱。20代くらいの若い子たちがサークルモッシュをしたり、なぜか床に座って舟漕ぎをしたり、盛り上がりっぱなし。あんな光景を目の当たりにしたのは生まれて初めてでした。ステージのキム・チャンワンもその様子を見てニコニコ。音はガンガンのロックサウンドで、ギターソロもガッチリある。言うなれば“オヤジロック”。パワフルなステージングにも、客席の盛り上がりにも、あー、びっくり。全ての記憶を奪われるほどの体験でした。今年Stray Kidsのチャンビンとコラボ曲をリリースしたといえば、心当たりがある方もいらっしゃるかと思います。

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ペク・イェリン

 もう1組、先に書いた大学生のうち、女の子たちが教えてくれたのが、ペク・イェリン(Yerin Baek)。ペク・イェリンは、昨年初来日公演も果たした女性シンガー。スター発掘バラエティ番組の出身で、デビューは女性デュオ。2019年に自身のレーベルを立ち上げた後、R&Bベースのサウンドメイクをして、韓国のミュージックアワードでベストアルバム賞など多数の受賞経験もあります。野外の一番大きなステージのラストに、白いドレスで登場したその姿は、妖精のよう。陽が落ちて涼しくなった中、ボビー・コールドウェルのカバーなども聴かせてくれて、体にこもった熱を心地よく開放してくれました。客席の女の子たちの様子を見ていると、大きなファンダムがあるのだなとわかりました。

백예린 (Yerin Baek) - I'm in love + Zero + Square / 2023 Square

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