Cö shu Nie×Kaz Skellingtonが問う、情報社会における意思の在処 MV構築から“ファンクの体得”まで
“ファンクであること”の定義とCö shu Nieへの導入
ーーしかも音数を絞ったグルーヴィな曲調になっていることで、この曲の狂気がより滲み出ていると思いました。今回Kazさんが楽曲のグルーヴアドバイザーとしてもクレジットされていますけど、ここにはどんな意図があったんですか。
中村:「Artificial Vampire」っていうキャラクターソングを作るような気持ちだったので、とにかく親しみやすくキャッチーな曲にすることが重要で。踊れるビートになるよう、何回もトラックを書き直したんですけど……私はもともとロックとクラシックが基盤で、旋律を並べてどんな感情に持っていくかが好きで音楽をやってきたので、グルーヴで人を踊らせるような音楽を作ったことがなくて。だから「踊れるってなんやねん」と思っていろいろ悩みながら、(Kazに)相談して教えてもらいました。今、ファンクの師匠みたいになってて。
Kaz:ファンクマスター?
中村:うん、ファンクマスター(笑)。デモ段階ではダンスロックみたいな感じだったんですけどーー。
Kaz:まだファンクしてなかったよね。
中村:そう、自分でもその自覚があったんですよ。なんで上手くいかないんやろって。でも彼はラッパーもやっているから、ビートのグルーヴ感とか、どうノっていくかとか、ミックスのイメージまでいろいろと教えてくれて。すごく勉強になりました。
Kaz:“ファンキーであること”って定義があるんですよ。僕はヒップホップから音楽に入って、メタル、ラップメタル、ファンク……という流れでやってきてるので、「ファンキーなビートを作るって何なんだ」ってことを定義化したかった。意外とそこって蔑ろにされていると思っていて。ジョージ・クリントンとかブーツィー・コリンズのインタビューを見るとそこが言語化されているんですけど、まず“1”のビートの強さなんですよ。自由に踊りつつも、ビートの“1”の部分にアンサンブルが戻ってくることでちゃんと団結するっていう。あとは音符の長さを一つずつ意図的に調整して、短い箇所は切れ味鋭く、長い箇所は長くする。ロックだとサスティーン(楽器の音が発生してから途切れるまでの余韻)が長いから、音符を伸ばす方が多かったりするんですけど、そういうサスティーンの長さ、あとは音色とかハイハットの裏表とかを変えることで、ノート(音符)の始まりと終わりをもっとファンキーに、踊れるようにできるんじゃないかなって思ったんです。
中村:私って結構複雑なハイハットを入れがちだけど、そんなことじゃなくて、ちゃんとルーツミュージックとしての(ファンクの)ルールがあるっていうことだよね。
Kaz:そうそう。例えば8小節後とかにハイハットの裏表を変えるだけで、展開としては何も変わってないのに、聴いてる側としては勝手に体が反応して動くようになる。細かいところだけど、それを重ねていくのが踊らせるってことだと思うんです。そのためにはいいドラムラインとベースラインさえあれば、いい音楽として成立すると思ってるんですよ。きっとそれがCö shu Nieにも合っているだろうなと思ったので。
中村:うん、合ってた。もともと好きでよく聴いている音楽ではあったし、昔のシティポップとかもファンクじゃないですか。欲しいスキルだったんで、わかることができてすごく嬉しい。
ーー松本さんはどうでした?
松本:今までとは違うベクトルの繊細さが必要な曲だったので、これまた挑戦でした。自分のプレイスタイル的にはピック弾きが主なんですけど、こういうのってやっぱり指で弾かんとあかんのかなと思って、どっちもできるように練習しましたね。ピック弾きで録りたいなと思ってたんですけど、最終的には指で弾くことになりました。
Kaz:Cö shu Nieのベースの力って、ライブにおいてもめっちゃデカいじゃないですか。しゅんすさん、すでにバリ上手いんですよ。それこそルイス・コールとかサンダーキャットとか、プレイの技術が評価されて世界的に有名になってる人たちがいると思うんですけど、それぐらいもっと評価されていいと思うんです。
中村:うん、私もそう思ってる。
Kaz:僕の勝手な意見としては、「Artificial Vampire」がしゅんすさんのキャリアにおいて、これからドンって行くための土台になるんじゃないかなと思ってますね。
ーーベースとビートしか鳴っていないパートがこれだけ多いこと自体も挑戦ですよね。
松本:すごい緊張感がありました。
中村:もともとベースラインを動かしたいから、フレーズに合わせて他の楽器も動くように考えていたんですけど、「もうベースだけ動かしたら曲が成り立つんじゃない?」みたいな考えになってきていて。だからギターコードで埋めることもあまりなく、めちゃくちゃ(音を)抜きました。ベース自体がそういう役割になってきているアンサンブルですね。
松本:「no future」「Burn The Fire」「Artificial Vampire」それぞれでグラデーションの違う技術を習得するみたいな感覚だったので、監督(中村のこと)に育てられてるなって思いますし、アルバムができる頃には新しい自分ができてるのかなっていうぼんやりとした楽しみがありますね。曲に引っ張り上げられながら、それを超える技術を習得しようっていうモチベーションでやってるので。
ーーアルバムに向けて、今はどういうものをリファレンスにしているんですか。
松本:何がきてもいいようにクラシックを結構聴いてます。もともとクラシックからグルーヴを作ってきたところもあるので、鍵盤一音のアタック感の強弱に感情が出るところはやっぱり勉強になります。だからピアノだけで魅了した歴史上の人について調べたりとか。
ーー中村さんはどうですか。
中村:私、最近引っ越してアンティークピアノを買ったんですよ。それで1曲作っていて、ここまでの3曲とはまた違った感じの曲を書いています。でも、ちゃんと爆発するような曲も1曲は書けたらいいなと思っているので。アルバムに向けて一貫したテーマで書けてきていますし、人生初の試みでもあるので、初志貫徹、しっかりやりきりたいですね。
Cö shu Nie×Kaz Skellington 撮り下ろし写真一覧
◾️リリース情報
Cö shu Nie「Artificial Vampire」
配信中:https://smar.lnk.to/kRYqBB
■ツアー情報
『Cö shu Nie Album Release Tour 2024 “Wage of Guilt”』
東京:2024年9月7日(土)Zepp Diver City 開場16:00/開演17:00
大阪:2024年9月21日(土)Zepp Osaka Bayside 開場16:00/開演17:00
◾️企画ライブ情報
自主企画ライブ『Cö shu Nie presents「Underground vol.4」』
・開催日時:2024年5月17日(金)開場/18:00/開演/19:00
・場所:渋谷WWW
・チケット発売中:https://coshunie.com/ticket_Underground04/