Kroi、国内外に広げるアプローチ 『SAND LAND: THE SERIES』OPテーマ、『SXSW』出演……直近の動向を追う

 Kroiが、3月20日に新曲「Water Carrier」をリリースした。同日からDisney+で独占配信がスタートした鳥山明原作のアニメ『SAND LAND: THE SERIES』オープニングテーマとして書き下ろされた楽曲だ。『SAND LAND』の舞台は、魔物と人間が共存する、水を失った不思議な砂漠の世界。ピュアな心を持った全身ピンクの悪魔の王子・ベルゼブブ、魔物のシーフ、人間の保安官・ラオがトリオを組み、砂漠のどこかに存在する“幻の泉”を探す旅に出るという冒険ファンタジーである。Kroiがアニメの楽曲を手がけるのは「Hyper」(アニメ『アンダーニンジャ』OPテーマ)、「Sesame」(アニメ『ぶっちぎり?!』OPテーマ)に続いて3度目。鳥山明作品のなかでも評価の高い『SAND LAND』とのタッグに対してメンバーは「何が悪で何が正義か、ちぐはぐでありながらもそれこそが真実であるような世界で繰り広げられるベルゼブブ達の冒険譚に、よりドキドキとワクワクを感じていただけるような楽曲になったと思います!」とコメントしている(※1)。

 パーカッシブなドラムを軸にしたバンドサウンド、エキゾチックな鍵盤のフレーズからはじまる「Water Carrier」。予測不能なのに初めて聴いたときから自然にノレるKroi特有のアレンジ、楽曲進行はさらに進化している。さらに特筆すべきは内田怜央(Vo/Gt)のボーカル表現。軽やかなラップからソウルフルな歌唱に移行し、〈行進 風任せ行くのだ 荒地も〉というフレーズに心地よいグルーヴを与える。サビで強烈なシャウトをかましたと思えば、〈爛漫煌めき放つ裏〉からはじまるオチサビではダウナーな歌声を響かせ、楽曲に深みを与える。1曲のなかでこれだけ多彩なボーカルを聴かせてくれるシンガーは稀だ。

 日本語の響きを活かしたフロウと奥深い意味合いをバランスよく共存させた歌詞にもぜひ注目してほしい。それをもっとも端的に表しているのが、〈干上がっちゃったこの世界/願っても もう過去には戻れない〉という最後のパラグラフ。これは筆者の個人的な解釈だが、「Water Carrier」はアニメ『SAND LAND』の物語とリンクしつつ、リアルな現代社会を照射している。混迷を極め、どこに解決の糸口があるかわからなくても、叡智や工夫を重ねることで、より良い未来を創り出せるはずーーこの曲の根底にはおそらく、そんな切実な思いが込められているのだと思う。

 Kroiは先日、アメリカ・テキサス州オースティンで行われた『SXSW 2024』(さまざまな業界から企業やクリエイターが集う世界最大級のテクノロジーと音楽・映画の祭典)への出演も果たしたばかり。Kroiにとって初めてのアメリカ公演だったのだが、「Juden」「Funky GUNSLINGER」などのライブアンセムを次々と披露し、オーディエンスの体を揺らしまくった。「We are Kroi from Japan. My English is no good!」(内田)というMCでアメリカの観客を意識した演出も。ラストの「Fire Brain」では爆音セッションを繰り広げ、“自然体=規格外”と称すべきパフォーマンスを見せつけた。

Kroi『SXSW 2024』出演時の模様

 ちなみに、「Water Carrier」のMVは、『SXSW』出演のタイミングに合わせてアメリカのカリフォルニア州で撮影されたもの。岩場とサボテン、ぎらつく太陽……カリフォルニアの砂漠の風景のなかでシューティングされた映像は、『SAND LAND』の世界観とリンクしつつ、Kroiの奔放なパフォーマンス性を際立たせている(個人的なポイントは、大きな岩の上でボトルネックのギターソロを弾きまくる長谷部悠生でした)。メンバー全員がジープに乗り込み疾走する場面も挿入されるなど、『SAND LAND』へのオマージュやロードムービー的な雰囲気が感じられる演出も楽しい仕上がりだ。

Kroi - Water Carrier [Official Video]

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