ALAN SHIRAHAMA、ダンスミュージック愛で切り拓く新たな道 ソロ活動に懸ける本気度を語る
ボーカルの経験が活きたEmyliとのセッション
――亜嵐さんにとって曲作りは、仕事でありながら趣味でもあるんですか?
白濱:それこそ、始めたばかりの頃はテレビゲームをやってる感覚で曲作りをしていましたけど、最近はグループのために楽曲を作ったり、他のアーティストへ楽曲提供する機会も増えてきて、ただのお遊びじゃなくなってきましたね(笑)。とはいえ、根本的に自分は好きなことを仕事にしたいタイプなので、今の環境も十分楽しめているし、夢が叶ってる喜びを感じながら取り組んでいます。
――お遊びじゃないということは「グループをどう見せたいか」とか「どう売っていくか」といったことも考えながら、曲作りをする必要が出てきたということでしょうか。
白濱:そうそう。それこそ、日本限定のボーナストラックに入れた「Lovesickness」(Lyrics: ALAN SHIRAHAMA/Music: Ryan Kim, Aris Maggiani, ALAN SHIRAHAMA, BrownBoyz, DIGILOG9)は、このEPを売るためだけに入れました。正直な話をすると(笑)。
――正直すぎる(笑)。
白濱:でも現実問題として、この作品が売れないと次回作を作れないし、DJカルチャーに馴染みのないDREAMERS(GENERATIONSファン)にとっては「Lovesickness」のように僕が自ら歌っている楽曲が、僕がやりたい音楽性を深く知ってもらうための一歩になると思うので。作品のメインはプロデューサーとして手掛けた楽曲ですけど、今後も、自分で作詞作曲ボーカルを務めた楽曲を一緒に届けていけたらと思っています。
――DJ、プロデューサー、ボーカリスト、パフォーマー、俳優……どんどん肩書きが増えていきますね。
白濱:次回EPを出す時は、“エレクトリック・シンガーソングライター”って肩書きで発表しようかな(笑)。
――そんな「Lovesickness」は、肩の力が抜けたボーカルが印象的でした。この曲はどういう手順で制作しましたか?
白濱:自分の作る曲は自分が歌いやすいように作れるので、この曲はまず、自分のレンジ(音域)に合った楽曲を作るところから始めたんですよね。で、自分の歌いやすいメロディをつけました。これは僕がドラマ『泣くな研修医』(テレビ朝日系)を撮ってた頃(2021年初頭)に作った曲なんですけど、コロナ禍だったから自宅で歌を録ってて。声を張り上げて歌ったらご近所迷惑になるかなと思って、ささやき声で歌っていたんですよ。クレーム入れられたら困るなって思いながら。
――つまり、家を追い出されない程度の声量で歌ったら、こうなった(笑)?
白濱:そういうことです(笑)。
――歌詞は全編英詞の「gnite」や「Unstoppable」とは違い、四季の景色が織り込まれていたり、日本語の美しさが映える仕上がりですね。
白濱:この歌詞にはストーリーがあるんですよね。1番は社会人になりたての主人公が片思いしていた頃の心境を歌っていて、2番は後々その片思いを振り返っている歌なんです。
――実体験が歌詞に反映された部分はありますか?
白濱:これに関してはなかったと思います。僕、あんまり自分の経験談で歌詞を書かないようにしてるんですよね。経験談で書くと、自分の生きてきた幅でしかないから、面白くないものしかできないと思ってて。だから映画をたくさん観たりとか、大好きな松本隆さんや大滝詠一さんが書かれた楽曲を聴いて、脚本家になったつもりで歌詞を書いています。
――4年前からあるという「gnite」(Lyrics: Emyli/Music: ALAN SHIRAHAMA, SLAY, Emyli)は、オーディション『iCON Z 〜Dreams For Children〜』の審査員としてお馴染みのEmyliさんがボーカルを務めている楽曲ですが、はじめから歌モノとして作り始めたんですか?
白濱:「gnite」は音楽ジャンルでいうとサイケトランスの楽曲で、デモの段階からボーカルを入れていたんですけど、それはあくまでもサンプルで引っ張ってきたボーカルを貼っただけだったんですね。だけどEPのリリースが決まった時に、サンプルのままリリースするのは嫌だなと思って。ちゃんとしたボーカリストに歌を入れてもらおう! と思い、そのためにEmyliさんに作詞していただきました。
――歌詞の大枠は亜嵐さんのほうから伝えたんですか?
白濱:僕はCoccoさんの「カウントダウン」っていう曲が好きで、それが浮気した男を殺す歌なんですけど(笑)。そういう“女性の復讐劇”を歌にしたら、サウンドとも合ってて面白いんじゃないかなと思って、Emyliさんに共有しました。しかも、その世界観が“『iCON Z』で候補生たちを叱る恐い先生”というEmyliさんのイメージとピッタリ合うじゃん! と(笑)。その姿や声の印象が曲の良さを引き立ててくれると思ったので、そのまま歌も入れていただいたら、理想通りの攻めた楽曲に仕上がりましたね。(歌詞を読み返しながら)英語だからぼかされてるけど、日本語にしたら、なかなかすごいことを言ってるよなぁ……。EXILE TRIBEでは絶対やらない歌だと思う。
――制作中に、攻めすぎたかも……って立ち止まる場面は?
白濱:僕はなかったですね。さすがにFワードはダメって、レーベルに止められましたけど(笑)。英語で「跪け」って言ってるフレーズ(〈get down on your knees〉)とかは、Emyliさんから「ちょっとやりすぎですかね?」って確認が入ったんですが、「ソロの曲だからなんでも大丈夫です。いっちゃってください!」ってお伝えしました。それと、あんなに歌の上手い方を相手に非常に恐縮なんですが、今回はボーカルディレクションもさせていただきまして。「生意気でごめんなさい~! もう1テイクだけお願いします!」とか言いながらレコーディングしてました(笑)。Emyliさん自ら「もうちょっと、こういう表現のほうがいいかな?」って提案してくださることも何度かあって、すごく良い空気の中でセッションしながら作り上げることができました。
――亜嵐さん自身もボーカルを経験しているからこそ、他の方のボーカルディレクションを担当すると、いろいろな発見がありそうですね。自分1人で作って歌うのとは違う悩みや欲が出てきそう。
白濱:それは今回のレコーディングですごく実感しましたね。「Lovesickness」でも話したように、僕のクリエイターとしての武器は、自分の声に合った曲を作れることだと思っていて。これまでもPKCZ®では自分に合った曲を作り、そのイメージのまま歌を入れていたんです。でも、今回はEmyliさんの声が活きるサウンドと、楽曲が活きるEmyliさんの歌声を形にしないといけなかったので、ボーカルディレクションにも力が入りましたし、その中で、自分が積み重ねてきたボーカリストとしての知識や経験が活きる場面も多々ありました。
――“ALAN SHIRAHAMA名義でソロデビュー”と聞くと、亜嵐さんが自らマイクを握っている姿を想像する方が多いと思いますし、実際ボーナストラックにはボーカル曲が入っていますが、あくまでも“プロデューサーとしてのデビュー”なんだと、今のお話を聞いて再確認しました。
白濱:そうですね。DJカルチャーに馴染みのない方は「白濱亜嵐、ボーカルデビューするのね」って思うかもしれないんですけど、海外ではDJがプロデューサーとして楽曲を作り、他のボーカリストに歌ってもらうというのが主流で。アヴィーチーとかジョナス・ブルーとか、多くのDJがそういうスタイルで楽曲を発表しているんです。なので僕も、同じように楽曲を発表していきたいなと思っています。