Aimer「Resonantia」

　7thアルバム『Open α Door』からのリードトラック。ピアノロック調にホーンセクションが彩りを添えるアップテンポのナンバーだ。特に激しい曲でも暗い曲でもないのに、消えない情念というのか、常に切迫したものを感じさせるのがAimerの個性であり魅力だろう。感情爆発型のエモーションとは違う、癒しの奥の悲しみ、しなやかさの裏にある強さ、透明感の底にある絡まったままの混沌。そういった複雑な感情を、全部体の中に落とし込んで歌にできるシンガーだと思う。歌の世界に陶酔しすぎないところもポイント。一語一句、歌詞によって少しずつ歌い方を変え、力が入りがちな高音域であえて呼吸を弱めるなど、丁寧な仕事ぶりが伝わる。（石井）

中村佳穂「スカフィンのうた」

　〈PIN！と目！〉。この歌い出しがすこぶる新鮮。大塚製薬「ポカリスエット」リターナブル瓶のWEB動画のために、中村佳穂が初めて書き下ろした今作。歌詞だけを読むと気持ちのいい単語を感覚的に並べたようだが、実際に動画を見るとアニメーションとメッセージと楽曲が完璧なマッチング。これはタイアップの理想型でしょう。可憐さと瑞々しさとワクワクが溶け合った中村の歌唱は毎度のことながら絶品。それを支えるプロデューサー・MASAHIRO KITAGAWAのビートメイク、さらには石若駿の生ドラム、阿寒ウタラオピッタによるコーラスも、それぞれ単なるサポートを超えて主役級の輝きを見せている。一聴すれば軽やか、しかしものすごく深い曲。（石井）

キタニタツヤ「青のすみか」

　鋭利に空間を切り裂くギターからはじまる超アッパーなサウンド、そして、青春と呼ばれる季節を映し出しながら、喪失感や未来への希望へとつながっていく歌詞。TVアニメ『呪術回戦』（TBS系）第2期「懐玉・玉折」OPテーマ「青のすみか」は、アニメの世界観と強く結びつくと同時に、〈青の季節〉の痛みや葛藤をリアルに反映した楽曲だ。特に印象的なのは、〈「また会えるよね」って、声にならない声〉というフレーズ。キタニタツヤ特有のオルタナティブなポップセンスと時代を超えたメッセージ性が一つになった名曲だと思う。同アニメのEDテーマは、崎山蒼志の「燈」。主要キャラクター・夏油傑をモチーフにした、温かさと痛みを同時に表現したミディアムチューンだ。（森）