宮崎駿監督作『君たちはどう生きるか』はどうなる? 『風の谷のナウシカ』『もののけ姫』……ジブリ映画と音楽の関係性
今でこそ日本が世界に誇るカルチャーとなったアニメ作品。その文化基盤を考えた際、やはりスタジオジブリの存在を看過することはできない。日本のアニメーション技術の向上に長年貢献し、多くの人々にとって“アニメの面白さ”を知る原点となった作品も多いジブリ作品。大勢を魅了する作品の妙は美麗なアニメーション映像のみならず、物語の多彩なシーンに華を添える楽曲にもあるのだ。
多くの名作が揃うスタジオジブリ作品における劇中曲は、物語にどのような影響を及ぼし、あるいは我々視聴者の心情に何を訴えかけてくるのか。『金曜ロードショー』(日本テレビ系)にて7月7日から3週連続でスタジオジブリ作品が放送されていることを機に、これまでも多くの視点から論じられてきた作品の魅力を、今回はいくつかの作品と共に、音楽の面からも紐解いてみよう。
様々なジブリ作品を音楽面から深掘りする際、注視したいポイントはふたつ。ひとつは周知の事実でもあるが、スタジオジブリ作品――とりわけ宮崎駿監督作品と音楽家・久石譲の深い縁である。直近でこそ宮崎駿が監督業から退いた作品も多いが、やはりジブリの代名詞となる作品の多くは両者のタッグから生まれ、現在の作風にも大きな影響を残している。
そしてもうひとつは、「イメージアルバム」と呼ばれる音源集の存在だ。これは劇中歌を収めた「サウンドトラックアルバム」とは違い、映画の製作段階において劇中曲の詳細を固める際に使われた“劇中曲の原点となる曲”を収録したものに当たる。実際に劇中に使われサウンドトラックに収録される楽曲は、このイメージアルバム内の曲のモチーフの多彩なアレンジ形だという点はおさえておきたい。
上記を踏まえたうえで、最初のピックアップ作品はスタジオジブリの原点ともなる『風の谷のナウシカ』。本作は7月7日の『金曜ロードショー』でも放送され、地球規模の最終戦争から1000年後の未来を舞台とした、言わばSFディストピア作品だ。荒廃した地を想起させるエスニックサウンド、侵攻戦争や軍団兵器の脅威、緊迫感を表現するオーケストラ。そして未来的な要素を含ませたシンセサイザーを劇中曲の各シーンに織り交ぜ、物語の独特な世界観に華を添えている。
また本作の劇中曲には印象的なフレーズも多いが、その原案はすべて先述のイメージアルバム収録曲となる。「「風の谷のナウシカ」 ~オープニング~」の主旋律的なピアノに代表されるメロディは、イメージアルバム内の「風の伝説」。「虫愛ずる姫」「鳥の人 ~エンディング~」冒頭の解放感を思わせるストリングスは、イメージアルバム「鳥の人 (〜ナウシカのテーマ〜)」。そして「王蟲との交流」「ナウシカ・レクイエム」に見られる少女の歌唱フレーズは、イメージアルバム「遠い日々 (~ナウシカのテーマ~)」からの引用だ。本作を機に音楽家として一躍名を広めた久石譲の手腕を確かめる意味合いでも、各音源の収録曲を照らし合わせてみても面白いかもしれない。